Messiah
Is the blood scattered in a sacred night a petal?
「雛森、尋ちゃんが!」
「…分かってる」
百瀬が血相を変えて俺の部屋に飛び込んで来た時、俺は既に出る準備を整えていた。
俺は先程チャーチに帰還した、尋はオフを取り外出したと百瀬から聞いた。
その少しあとだ、俺の端末が緊急発信で震えたのは。
画面を確認すると、尋のGPS反応が移動していた。
それで俺は解きかけていた武装を再びすることになった訳だ。
「…雛森、くれぐれも…」
「分かってる、自分くらい抑えてみせる」
百瀬の言葉に俺は被せるように発言してチャーチを出た。
反応を追いながら裏路地を駆ける、反応はそう離れていなかった。
「…相手の移動速度が遅すぎる…囮か?それとも…」
呟きながら駆け、俺は廃工場に着いた。
薄暗く不気味で、夜空の下に佇むそれは異様な気配を放っていた。
「…ここだ」
反応はこの中から発信している。
俺は勘づかれないように音を立てず扉を開けて中を進む。
おかしなことに、人の気配はしない。
微かな物音すら聞こえない。
警戒しながら進むと、突然重厚な扉が現れた。
「…分かりやすすぎる、けど入らない選択は無いな」
意を決して扉に手をかけ力を込めて開くと、朧月の微かな光に照らされた尋が後ろ手を縛られて横たわっていた。
名を呼ぶのを堪えて近寄り起き上がらせて脈と呼吸を確認する。
…問題なく心臓は動いている、呼吸も正常…眠っているだけか?
だとすると、俺の予想であるゴースト狩りではない?
俺が思考を巡らせながら尋の拘束を解くと、後頭部に硬いものが押し付けられる。
明らかに銃口だった、俺はそこで動きを止める。
相手の低い声が俺の耳に届いた。
「…Hold up.」
その指示に従う義理は無かった、だけどこの状況では従うのが賢明だった。
もし手を上げずに間髪入れず銃口を相手に向けるとする。
その場合他に潜伏兵がいれば尋か俺が撃たれてアウト。
逃走したとしても、こいつは愚か他の敵にも撃たれて蜂の巣になってエンド。
様々な結果を考えた結果、俺は尋を下ろして両手を上げた。
「いい判断だ、まだ君のメサイアには何もしていない。
私に大人しく従えば君のメサイアは傷つけないと誓おう…そのまま私の指示通りに進め」
俺はその言葉に答えず溜息をつき、指示通りに踏み出した─
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