Messiah

嘉禄(かろく)

Reminiscent young bird



「…知ってるか、尋」


俺はPCに顔を向けたまま尋に問いかけた。
尋は少し驚いたようで、作業をやめてこっちを向く気配がした。


「…何をですか、雪?」
「…人が死んで、何が起きる?」


自分でもなんでこんな事を突然言い出したのかわからない。
尋は俺以上に目を白黒させてるだろう、けど俺は言わずにはいられなかった。


「…人が死んで…その人と関係のあった人が悲しむ」
「…あとは?」
「あとは…その人に会いたいと願う?生き返って欲しいとか、生まれ変わって会えないかなとか…」
「…それから?」
「それから?えーっと…自分も死んでその人のところに行きたいと思う?」


俺はその答えの全てを聞いて聞こえないように溜息をついた。
尋の答えでは、これが限界みたいだ。
俺が黙ると、尋は続きが気になるのか俺の椅子の向きを変えて向かい合った。


「ちょっと、突然どうしたんですか?雪、何かあった?」
「…思い出しただけだ」
「思い出した?雪は僕に何が言いたかったんですか?
伝えたいことがあったからそんなこと言ったんじゃないですか?」


…ああ、尋には敵わない。
全てを見透かされているみたいだ。
そう思いながら、俺は問いかけに答えた。


「…俺が思う正解を教えてやる。
人が死ぬと…そいつがいなくなるだけじゃない、その周りが悲しむだけじゃない…そいつを最も大切に思っていた人間の心が死ぬんだ。
…だから尋、お前は俺の前から消えるな。
俺が絶対にお前を守るから」
「…分かりました、雪。
でも、雪も消えないでね」


そう言うと尋は俺を抱きしめた。
…今日くらいは甘えても許されるかな…



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