Messiah

嘉禄(かろく)

An eye for an eye, a tooth for a tooth



─衛が北方から帰還した。
   再起不能確実の状態で。

一嶋晴海の命令で出たことは知っていた。
だからこそ…許すわけにはいかなかった。
いや、以前から恨んでいることもあったかもしれない。


衛が昴さんの元の与りになってすぐ、私は係長室に向かった。


「…来ると思っていましたよ」


その人はいつも通り座っていた。
私は銃を向けた。


「…聞きました、衛を単独で北方に向かわせたと。
理由を教えてください」
「君を強くするためです」
「…は?」


それから意図を教えられた。
私は憎しみを以て強くなること、そのために事を起こしたと。


「…そんな事のために…たかがそれだけの為に衛を追い込んだのか…一嶋晴海!!!」


躊躇わず引き金を引く。
すると、同時にあの人は杖を構えて撃ってきた。
避ける前に私の腹部に命中する…当然だ、避けなかったし避けられなかった。
比べて私の弾は頬を掠っただけ。
…私はやはりオリジナルには敵わない。
だけど、私には対策があった。
何も対策を立てず勝てる相手だとは思っていない。
私は薬瓶を差し出した。


「…これが何か分かりますか」
「君の回復薬、ですね。
内臓崩壊の際に投与している」
「そうです…これさえあれば、どれだけ傷ついても再生することに気づいたんです。
これは私にとっては再生薬、しかし普通の人間にとっては猛毒でしかない…これがあれば、私でも対等に戦える。
…ここで死んでもらいます、一嶋晴海…衛と私に貴方が与えた苦しみと同等のものを味わって下さい」


私は再び銃を構えて交戦に入った。


─目には目を、歯には歯を─
衛を傷つけた貴方を、私は許さない



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