Messiah

嘉禄(かろく)

The moon which rose rises



ついに、待ちに待った日が来た。

数ヶ月前に我儘を言って、ドクターの知り合いを紹介してもらって俺は体を元の大きさに戻すべくチャーチを離れた。

その紹介してもらった人、神楽坂遥人とその護衛兼恋人と出会い説明を受けた後身長を変える効果があるという薬物の投与が始まった。


『無理矢理骨を引き伸ばして成長させる訳だから、相当痛むけど覚悟してね』


そう事前に聞いたけど、実際体感すると凄まじい痛みだった。
幸樹は、俺がチャーチを離れてる間忙しいのか一度も来なかったけど寧ろそれで良かったと思う。
だって、俺は痛みに悶絶してるか眠ってるかのどちらかだったから。
苦しんでるとこなんて見せたくない、眠ってたら幸樹が来てもがっかりさせてしまう。

身長が戻ったあとはキツいリハビリが待っていた。
上手く歩けなくて何度も転んで傷や痣を沢山作った。
歩けるようになったあとは、戦闘に復帰出来るように他の戦闘員に混じって訓練もした。
力加減が上手く調節出来なくて、弱すぎたり強すぎたりもした。
長くそこで時を過ごしたせいで戦闘員とも仲良くなってしまったくらいだ。

そして、今日。
神楽坂遥人からの許可が出て、俺はチャーチに戻った。
一嶋晴海と百瀬多々良には伝えてある、でも幸樹にはサプライズにするから内緒でと根回ししておいた。

幸樹は部屋にいる、と百瀬多々良から聞いたので部屋に向かいノックする。
朝陽は気を使ってくれたようでさっきすれ違いざま会釈された。

中で軽い足音が聞こえ、ドアが開く。


「はい…結月…?え、なんで…?
チャーチを離れてるはずじゃ…?」
「許可が出たから戻ってきた、ただいま幸樹」


前みたいに見下ろして笑いながらそう言うと、幸樹は一瞬嬉しそうに笑ったがすぐにふくれっ面になった。


「なんで今日戻るって教えてくれなかったの?!」
「内緒にしといてって根回ししといたんだよ、驚かせたくて」
「そんなサプライズいらない!
…待ってたんだよ、ずっと…会いにも行けなくて…」


続いて幸樹は泣きそうな顔になった。
相変わらずの百面相だ、と思いながら頭を撫でてやる。


「寂しい想いさせてごめん、これからはここにいるから」
「うん…おかえり、結月」


サプライズは何故か受け入れられなかったみたいだけど、とりあえず驚いてはくれたようで良かった。


俺は暁…月は沈み、太陽が顔を出し暁となる。
大きくなったってそれは変わらない…俺がお前を守るという俺の決意も。



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