Messiah

嘉禄(かろく)

Game of tag in town

ある日の昼間、俺は都内の雑居ビルの中で人を待っていた。
待ち合わせ時間ちょうどに、待ち人の足音が聞こえたが俺は合言葉が来るのを待っていた。
その人は俺の後ろに立つと、


「貴方の瞳は瑠璃のようだ」


と言った。
普通ならこんなクサい言葉、一笑に付すんだけど残念ながらこれが一嶋さんの考えた合言葉だ。
その言葉に俺もその人の合言葉で返した。


「今日も藤が見事だね」


これまたクサい言葉だ、考え直してくれないだろうか…くれないだろうな。
相手も同じことを思っていたのか、溜息をついて俺の前に立つ。


「キザすぎる合言葉ですよね、言うのも言われるのも嫌になります。」
「仕方ないよ、それぞれの名前を含めた言葉にしなくちゃいけないんだから。
それにしても君との任務は初めてだね、鯰尾。」


そう、今回の任務は鯰尾と一緒だ。
俺は大体部下を率いて殲滅やら、瑠衣と一緒に殴り込んだりしてるから他の人とはあまり組まない。
だから鯰尾と組むのも初めてで新鮮だった。
それは鯰尾も感じていたようで、強く同意してきた。


「そうですね、俺はメサイア以外と組むこと無いですし。
…それで、今回の任務は情報屋と接触して外国の動向を探ることでしたね?」
「そうだね、この場所で情報屋と接触する予定。」


端末にマップを表示して、俺と鯰尾は位置を確認し直した。
接触する場所は至って普通の街中だ。
厄介なのは、情報を仕入れてからチャーチに戻るまで。


「どれくらい追っ手が来るでしょうね?」
「分からない、でも俺たちなら撒けると思ったんでしょう。殺人許可は出てないけど、気絶までなら有り。
この条件だけで充分だよね。」
「そうですね、では行きますか!」


俺たちは早速ビルを出て人の多い交差点で情報屋と接触した。
渡された情報の媒体は二つのUSB。
どちらかが欠けても成立しない情報、とのことだ。
一つを俺が、もう一つを鯰尾が持って人混みに紛れる。
二手に分かれて移動すると、数メートル離れて早速尾けられている。
鯰尾も同じようで、繋がっているインカムから早足の音が聞こえる。
まさに街中での鬼ごっこ、けれど俺たちは負けるほど遅くはない。

色んな路地を歩き回り、階段を上って降りて、そんなことを繰り返して小一時間。
撒けたようで合流予定地に俺たちは同時に到着した。
そこに一台の車が颯爽と現れドアが開く。


「上手く撒いたみたいだな、乗れ。」
「お疲れ様、2人とも。」


運転席には有賀さん、助手席には長谷部がいる。
元々この二人が迎えに来る予定だった。
俺たちは顔を見合わせて不敵に笑うと車に乗った。


『当たり前、俺たちを誰だと思ってるの?』



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