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あの日の約束を

ミツキ

29話 動き出す歯車

 どれくらい時間が立ったのでしょう。あまりにも周りに変化が無いせいで、体感でどれくらい経ったのかが正直わからない状態でした。しかし、そんな異常な空間の中で唯一助かった事がありました。それは、どれだけ動いても疲れを感じなかったことです。疲労感を気にせず進み続けるうちに、ようやく私は目的の人物に追いつくことができました。

「ふう、やっと追いついた。待ちくたびらせちゃったかな」

 私が彼女の背にそう声を投げかけると、それに応じるようにこちらに振り返りました。

「ううん、早かった。私が予想した以上に早く来てくれた」

 そう答える彼女の顔は心なしか部屋を出る前よりも柔らかな表情をしているように思えました。
 それを見た私はホッと胸を撫で下ろしました。知らない場所、状況の中で、きっと私は知らないうちに不安感を募らせていたのかもしれません。そんな中、自分の行いに自信を持って正しいと感じる出来事を経たことが、私にわずかな余裕を与えてくれたのかもしれません。私のとった行動はきっと間違いではなかったのだろうと。

「私を追いかけてきてくれた。つまり貴方の答えはそういうことで良いんだよね?」

「あんな顔させて放っておくなんて私には無理だよ。それがなくても、私自身も知りたいと……ううん、知らなきゃいけないことだと思ったから」

 私は素直な気持ちをそのまま口に出しました。変に言葉を選ぶ必要なんてありません。私の考えを、思いを、出来るだけそのまま伝えたかったから。

「付いてきて、貴女に会って欲しい人がいるの」

「ーーうん、分かった」

 私の思いが届いたのか、それは定かではありませんが、私の言葉を聴き終えた後、再び彼女は歩き出しました。今度は私を置いて行くことなく、ゆっくりと歩みを進めていきます。私ははぐれぬようにその後ろについて行きました。
 
………

……



 それからしばらくの間私たちは無言で歩き続けていました。道中、私はある疑問を思い浮かべていました。ここは何なのか? 彼女と、そしてこれから私が合う人物は何者なのか……と。
 考え事を始めてしばらくした頃、不意に前を歩いていた少女が足を止めました。目的の場所に着いたのでしょうか。私は体を横に出して少女の後ろから覗くように正面を確認すると、そこには知らない少年が背を向けて立っていました。少女はすこし小走りで少年に近づくと彼の服の端を掴んで揺さぶりました。

「ーーん、七海? 今までどこに行って……」

 この少年が私に合わせたかった人物なのだろうと直感しました。すると何かを話そうとしていた彼は、私の気配に気づいたのか、七海と呼んだ少女から私の方へと視線を飛ばしました。

「ーーえ? 嘘、何でここに!?」

 すると、私を見た瞬間、彼は明らかに動揺した様子を見せました。それはまさにあり得ない物を見たような目でした。そして唐突に訪れる痛いほどの沈黙。それが何だか落ち着かなくて、私は思わず声をかけました。
 

「えっと……初めまして、ですよね?」

「……う、うん。そう、だね」

 私の問いに少年は辿々しく口を動かしました。流石に初対面だからか、返事は途切れ途切れなのもでした。しかしその声からは何故だか、焦りや不安に混じって苦しみのようなものが含まれている気がして、単なる人見知りとは違うもののように感じました。

「もしかして、上手く話せなかったりする?」

 堅苦しいと緊張して良く無いかもしれないと思い切って敬語抜きに話すと、驚きの表情を浮かべられました。多分2つの意味で驚いたことでしょう。それを見て私は自然と次の言葉を投げかけていました。

「ゆっくりでいいよ。君のタイミングでいいから焦らないで。いつまで待つことになっても、私は気にしないから」

 自分の思い込みを前提に話しているので、もしかすればどこか間違っているのかもしれません。勘違で話していたとしたら恥ずかしいなと思いながら、しかし私は、やはりその考えは間違いでは無いという確信のようなものを心に抱いていました。

「君は、もしかして……そっか、そういうこと……なのか?」

 目を白黒させていた少年は、ふとなにか気付いたのか、隣にいた少女に視線を移しました。すると彼女は彼の考えていることを肯定るすように頷きました。

「そっか……ありがとう。うん、僕はもう大丈夫だから、七海も……ゆっくり休んできて」

 少年が彼女……七海ちゃん? に微笑みながらそう言いました。さり気なく少女の名前を知ることが出来たのは良かったのですが、名前を知った上でもやっぱり心当たりはありませんでした。

「うん……えっと、じゃあね」

 私が考え事をしているとそんな私と少年を交互に見ながら七海ちゃんは別れの挨拶をしてその姿を消しました。
 最早色々ありすぎて疲れてしまったのか、人がいきなり目の前から消えてしまったことに対して差ほどの驚きも感じることはありませんでした。

「えっと……知りたいんだよね? この場所がなんなのか、僕が何者なのか、君自身になにが起こっているのかを」

 一呼吸おいて彼はそう私に問いかけました。それを聞いた私はすこしだけ緩んでいた意識を再度引き締め、答えました。

「うん。さっきの子、七海ちゃんで良いのかな。あの子にもいったけど……私は今起きている事を知らないといけない……そう思う」

「そっか」

 彼はゆっくり頷きました。私は彼の話す内容を聞きこぼさないよう心の準備を整えると、彼と正面から向かい合いました。

「分かった、これから教えてあげるよ。僕が伝えられること全てをね」

 しかし、なにやら都合が悪いのか、彼はでもねと言いながら続きを話しました。

「今から最後まで話していたら流石に時間が足りない。だから今回は端的に2つだけにして残りはまた今度にしよう。それじゃあ……いくよ?」

 そうして彼は話し始めました。私の今後を左右する、そんな話の続きを……。

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コメント

  • ミツキ

    やっとここまで来ました( ̄▽ ̄;)
    個人的には29話まで来たことでようやくプロローグが終わったって気分です。
    これからは月一で投稿出来るか分からない状態になりますが、不定期でも頑張って続けていくのでぜひ気長にお待ちください( ´∀`)

    0
  • 漆湯講義

    更新お疲れ様ですっ!(๑•̀ㅁ•́ฅ✧
    ミステリアスな展開になってきましたね

    1
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