こんにちは、堕天神です。世界くらいなら救えます。
2話 『世界のストライキ』
ーーーこの世界に、神なんて居ない。
オレが16年の人生で見出した答えは、しかしずっと前から知っていて、だとすればそれは見出した、と言うより再確認させられた、と言った方が腑に落ちた。
「なぁ、ラテマ。俺ァ、なんッッ回も言ってるよなぁ。なのにお前はどういうつもりなんだ? あぁ?」
「・・・・・・あのガキは金も払わないで店の野菜を持っていった。食べるためなんかじゃ無い。店の経営が苦しいのを知ってて、わざとだ」
「だぁから! いいんだよ何だって!! あの子はこの街を治めてる領主さまの子息だ! 絶対に手は出すなって言っただろォが!!!」
「手は出してない」
そう、これは誓って本当だ。オレはあのクソガキに指一本触れてない。
「それじゃ、どうしてあんな有り様になるんだよ!!」
オレの義理の親父でもあり、街の小さな八百屋の主人でもあるおっさんは、店先の方を指差した。
「生まれ変わったら・・・・・・道端のうんこになりたい・・・・・・・・・」
ブクブク太った小柄なガキが、そこにいた。ぜい肉の詰まった腹を地面にピッタリとつけて、五体投地のような格好で転がっている。
「自分の価値を問い直してる途中だろ。やっと気付いたんだよ。あんなヤツうんこだうんこ」
「馬鹿やろォ!!! うんこ舐めんじゃねぇよ! 乾燥させたうんこは上質な肥料になんだよ! うんこ舐めてっとうんこに泣くぞアァン!?」
「ろ、論点が・・・違う・・・・・・」
五体投地の中のクソガキがかすれた声でツッコミを入れたが、無視する。
「ラテマ。お前また『天稟』を使っただろ。あれほど使うなって言ったのによ」
「・・・ッ! じゃあ、親父はムカつかねぇのかよ!? 色んな家からうんこ貰ってきて、自分で育てた野菜をこんな奴に無駄にされて! 悔しく無いのかよ!!」
「ーーーそりゃァ・・・」
親父は答えなかった。いや、正確には何かを言おうとしていた。しかし店先に転がるガキをチラリとみて、親父は言うはずだった言葉を飲み下した。
ーーふざけんな。親父はもっと、カッコよかった。貴賎なく、悪いことを悪いと断じることのできる立派な人間だと思っていた。
「・・・もういい。オレは出て行く。店も家も、勘当にしてくれ」
「・・・はぁッ!? おい、待てライマ!!」
「もともとオレの家でも、オレの親父でもねぇんだ。引き止めんじゃねぇ」
「この店を出てって、行くところはあんのか・・・?」
ーー・・・・・・・・・。
「友だちの家に行く。仕事も、自分で探す。あんたみてぇな弱い大人にならないように、頑張るよ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
オレの足は迷いなく進んでいた。八百屋の前から出発して、石畳みの大通りを横切り、武具屋の角を左に曲がった所に大きな広場がある。
近所の子供たちは大抵そこにたむろって騎士ごっこをしたり、設えられた長椅子に座ってお喋りしていた。
オレがここに来るのはだいぶ久しぶりだ。どころか二度と来る気は無かった。
しかし親父には友だちの家に泊まる、と言って出て行った手前、『広場にいる友だちの所へ向かうと言う体』で、まずこの広場に足を運ばなければならなかったのだ。
「あ! ラテマだ!! みんな逃げろ、オバケ女が来たぞ!!」
「あいつ、変な魔法使うんだぜ! 睨まれたヤツはみんなホネヌキにされちまうんだ!!」
オレが広場の前にいるだけで、この騒ぎかよ。心臓の奥の方で、ジワリと何か嫌なものがにじみ出る感覚がした。
「勇敢なる騎士の諸君っ!! 我々の役目はあのオバケ女を倒し、世界に平和をもたらすことであーるっっ!!」
広場で騎士ごっこをして遊んでいた子供たちはオレと言うあからさまな敵役に色めき立っている。
「総員戦闘よーいっ!! 一斉にかかれぇーーー!!」
女相手に男何人がかりで向かってきてやがる。クソが。嫌になる。
コイツらの憧れる騎士と、本物の騎士サマたちと、実は大した違いなんて無いことが分かっているから余計腹立つんだ。
「・・・ーーーーーー」
胃の腑を、怨嗟が煮えたぎっている。こんなクソみたいな世界、どこの馬鹿が創りやがった。どうせロクなやつじゃない。
「うおぉおおぉおぉぉぉおおっっ!!!」
木の棒を振りかざした子供たちが、押し寄せてくる。衝突まであと数秒、もういい。どうなったって。
「どいつもこいつも・・・・・・!!!」
そして『天稟』を、超常を解放する。
ーーー虚脱の異能『失楽ーーーー。
ビキイッ!! ド、ドドドドドドド・・・・・・!!!
「は、ぁ・・・? どう、なってる?」
オレは、否、世界中の人々は、この時、一斉に空を見上げた。
後に人類史上最悪の出来事とされる、『世界のストライキ』は、突如として、一瞬にして、世界の概念を破壊していった。
「空が、赤い」
ーー世界からいくつかの色が消えた。
「勘弁してくれ、頼む! まだ治せるんだよ!! 手遅れになったら・・・! 『治癒』『治癒』ッ!!」
ーー世界からいくつかの魔法が消えた。
「あれ・・・? 俺、今までナニでよそって、ナニでメシを食ってたっけ?」
ーー世界からいくつかの食器具とその概念自体が消えた。
「は、ぇ? 俺が持ってた剣は? 鎧は?」
ーー世界から武器具が消えた。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!?!?!?」
世界から、さまざまな、直前まで存在していた筈のものが、概念までもが、消失した。
「・・・・・・ッッ!!」
世界中の人々が混迷の渦中にいる中、オレは無意識に走り出していた。
否、オレも混迷していたのだ。オレは胸のざわめきに従って、その場を後にした。
走って、街を抜けて、走って、草原を駆け抜けて、走って、森に入った。
「ハ・・・ッ! ハ・・・ッ! ハ・・・ッ! ハ・・・ッ!」
心臓が痛い! 耳と目から血が吹き出しそうだ。赤い空と黄色い草木は見るだに気持ち悪い。
「こ、ここは・・・?」
無我夢中に走っていたから、この場所に見当をつけるのに少々時間がかかった。
「『熊王の森』・・・!?」
自覚して、血の気がサーっとひいていった。この森は、B級冒険者相当の超危険区域だ。
16歳の女子どもであるオレなんか、2秒でケモノに食い殺されてもおかしくない。
「や、やば・・・ッ!? うっかりでとんでもねぇ所に来ちまった! は、早く森を抜けねぇと・・・なんだが・・・・・・」
ーーここ、どこだ!!?
この場所が『熊王の森』である事に疑いはない。問題はその森のどこにオレが居るのか・・・だ。
「森の深部かよ・・・! ほんっとにオレ、マジで馬鹿野郎かよ・・・!!」
やばい、やばいやばいやばい!! おんなじ様な樹木が立ち並んで、どこもかしこも似たような形をしている。
いつ茂みからケモノが現れても、なんらおかしくない。どころか、今、森は、世界は異変の只中だ。ケモノどもは興奮必至だろう。
「う、あぁぁ・・・。どうしようどうしよう」
ーーーガササッッ!!!
「ひいぃいっっ!!?!?」
近くの茂みで音がした。間違いない、ケモノだ。オレはここで終わりだ。ケモノに食べられて、終わり。
「い、ぃやだ。食べられるのは嫌だーーー!!」
「あ、あの、食べませんから・・・食べ物をください・・・・・・」
「ーーーーーーへ!?」
危険度ハイパーな森の中、オレは期せずして、ソイツに出会った。
弱り果てている、オレより小さな少年に。
どうも! キズミ ズミです!!
話が鬱っぽかったのでうんこをねじ込みました。サンキューうんこ、ウェンエバーうんこ。(あ、やめて、読むのやめないで)
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