異能学園のアークホルダー
ありのままの、神崎信也の拳だった
それを何度だって繰り返す。激痛と苦痛に諦めそうになる。もし諦めればこの勝負は終わりだ。
錬司に憧れた信也が諦めれば、それは平行世界にいるすべての錬司に憧れた信也が諦めたことと同じ。これは、たまたま破片の合間に逃げられた自分をコピーしているに過ぎない。
無敵ではない。
諦めればコピー出来ず負けるのだ。
しかし、諦めなければ可能性はあり続ける。
諦めなければ、道は開ける!
腕が折れた。
足が折れた。
それでも前に出る。
自分はまだ諦めない。
腕が折れた。
足が折れた。
それでもコピー出来る。
信也は走った。
「あんたはすごいさ、昔も今も! あんたはランクFかもしれない。でもな!」
信也は走った。この最悪とも言える逆境を。
それでも前に出る勇気。自分なら出来ると信じる心。
「馬鹿な、何故諦めない!?」
錬司が叫んだ。信也の進撃に驚愕している。
「何故だ!?」
錬司には理解できない。たとえもう一人の自分をコピーできるといっても痛みは本物だ。一体何度足を折られた? 腕が折れた? 普通は諦める。
なのに何故? 錬司にはなぜ信也が諦めないのか分からない。
信也は進んだ。
無数の自分、山のような屍。それでも諦めない限り。
道は開ける。
辿り着ける。
憧れた目標へ。
そして、ついに。
信也は、錬司に言った。
「俺は、あんたに憧れていたんだ! 絶対に諦めないあんたにぃ!」
信也は、いくつもの痛みを踏み越えて、錬司の目の前にまで辿り着いた。
信也は握り締めた拳を振り上げた。特別でもなんでもない。空手を極めた拳でもなければボクサーの拳でもない。ましてや鉄でできているわけでもなんでもない。
それはこの世界で生きて、獅子王錬司という特別に憧れた少年の拳。
ランクなんて関係ない。
ありのままの、神崎信也の拳だった。
「あんたは、俺にとって特別だったんだぁああ!」
叫んだ、己の想いを。打ち込んだ、自分の拳を。
その時、錬司の表情から驚愕がスーと消えていった。
(そうか、俺は)
まるで納得したように。
錬司は、信也の拳を見つめていた。
光よりも速い彼の意識が安堵に似た優しい気持ちになっていく。
今までがむしゃらに頑張って、自分を証明しようと必死になって。
誰一人として認めてくれなかった。
だけど。
ここにいた。
目の前の彼だけは、とっくの前から認めてくれていたのに。
(俺は、すでに特別(オリジナル)だったのか……)
彼の答えに、包まれていく。
そして。
信也の拳。それは、錬司の頬を直撃した。
「があああああ!」
信也に殴られ錬司は吹き飛んだ。助走をつけて殴った一撃は錬司の体を何度も転がし背後の壁へと激突させた。
「はあ、はあ」
運動が得意というわけでもない信也は大きく肩で息をしていた。いきなり走った行為に体が追いついてきていない。
偉大なもう一人の自分たちと比べればなんとも情けない。
けれど、これが自分。神崎信也だ。
そして、そんな自分だからこそ錬司を倒せた。
信也は錬司に近づいていく。錬司は壁にもたれるように座り込み両足を床にだらりと伸ばしていた。額からは小さく血を流し、顔は下を向いている。
「ちっ、馬鹿野郎……。大声出すから、避け損ねただろうが…………」
「錬司……」
錬司に憧れた信也が諦めれば、それは平行世界にいるすべての錬司に憧れた信也が諦めたことと同じ。これは、たまたま破片の合間に逃げられた自分をコピーしているに過ぎない。
無敵ではない。
諦めればコピー出来ず負けるのだ。
しかし、諦めなければ可能性はあり続ける。
諦めなければ、道は開ける!
腕が折れた。
足が折れた。
それでも前に出る。
自分はまだ諦めない。
腕が折れた。
足が折れた。
それでもコピー出来る。
信也は走った。
「あんたはすごいさ、昔も今も! あんたはランクFかもしれない。でもな!」
信也は走った。この最悪とも言える逆境を。
それでも前に出る勇気。自分なら出来ると信じる心。
「馬鹿な、何故諦めない!?」
錬司が叫んだ。信也の進撃に驚愕している。
「何故だ!?」
錬司には理解できない。たとえもう一人の自分をコピーできるといっても痛みは本物だ。一体何度足を折られた? 腕が折れた? 普通は諦める。
なのに何故? 錬司にはなぜ信也が諦めないのか分からない。
信也は進んだ。
無数の自分、山のような屍。それでも諦めない限り。
道は開ける。
辿り着ける。
憧れた目標へ。
そして、ついに。
信也は、錬司に言った。
「俺は、あんたに憧れていたんだ! 絶対に諦めないあんたにぃ!」
信也は、いくつもの痛みを踏み越えて、錬司の目の前にまで辿り着いた。
信也は握り締めた拳を振り上げた。特別でもなんでもない。空手を極めた拳でもなければボクサーの拳でもない。ましてや鉄でできているわけでもなんでもない。
それはこの世界で生きて、獅子王錬司という特別に憧れた少年の拳。
ランクなんて関係ない。
ありのままの、神崎信也の拳だった。
「あんたは、俺にとって特別だったんだぁああ!」
叫んだ、己の想いを。打ち込んだ、自分の拳を。
その時、錬司の表情から驚愕がスーと消えていった。
(そうか、俺は)
まるで納得したように。
錬司は、信也の拳を見つめていた。
光よりも速い彼の意識が安堵に似た優しい気持ちになっていく。
今までがむしゃらに頑張って、自分を証明しようと必死になって。
誰一人として認めてくれなかった。
だけど。
ここにいた。
目の前の彼だけは、とっくの前から認めてくれていたのに。
(俺は、すでに特別(オリジナル)だったのか……)
彼の答えに、包まれていく。
そして。
信也の拳。それは、錬司の頬を直撃した。
「があああああ!」
信也に殴られ錬司は吹き飛んだ。助走をつけて殴った一撃は錬司の体を何度も転がし背後の壁へと激突させた。
「はあ、はあ」
運動が得意というわけでもない信也は大きく肩で息をしていた。いきなり走った行為に体が追いついてきていない。
偉大なもう一人の自分たちと比べればなんとも情けない。
けれど、これが自分。神崎信也だ。
そして、そんな自分だからこそ錬司を倒せた。
信也は錬司に近づいていく。錬司は壁にもたれるように座り込み両足を床にだらりと伸ばしていた。額からは小さく血を流し、顔は下を向いている。
「ちっ、馬鹿野郎……。大声出すから、避け損ねただろうが…………」
「錬司……」
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