異能学園のアークホルダー
先天的な|規格(ランク)外だ。
「諦めなかったのさ」
「そんな……」
その言葉に、もう返す言葉もい。
次元が違う。
普通は諦める。まず諦める。絶対に不可能だ。
しかし、獅子王錬司は諦めなかった。
たとえなにが壁になろうとも、彼だけは、自分を信じて頑張った。
そこで、さらに信也は気づいた。
「まさか!?」
錬司のすごさとはどこにある? アーク? 違う。高速性と連続性? それもあるが、それも普通なら諦めている。
諦めないことだ。誰よりも彼は諦めない。そして、それは『生まれつき』。
「錬司、お前まさか」
信也は驚愕した。知っていたからだ、生まれつきの『特別』というのを。
アークの高速発動と連続発動が可能にした最強のランクF。
どんなものでも諦めない。
自分と他人は違うという圧倒的な自意識。
それらはすべて生まれた時から持っていた。
これでは、まるで、アークアカデミアの仮説。伝説のおとぎ話の――
「まさか、あんたがッ!」
それを、信也は驚きと感動にも似た思いで叫んだ。
「先天的高位者! そうか、あんたがグレイントかッ」
故に信也は震撼した。心の底から驚嘆した。目の前にいるのだ、伝説の存在が。
生まれた時から自分が特別だと思う人間がいるか? 自分はゲームの主人公で他人はモブキャラなんて思う人間がいるのか?
いない。まずいない。恐ろしいほどの自意識だ。もしそんな人物がいるとしたら、その人は生まれながらの規格外。
先天的な規格外だ。
偉大なる者、選ばれし民。アークアカデミアのおとぎ話。誰も知らないのに誰もが知っている伝説の存在。
先天的高位者、グレイント。生まれつきの特別が、アークアカデミアに襲いかかる。
「くそ! マジかよッ」
錬司が只者ではないと思っていた信也だがことグレイントという言葉には動揺を隠せない。仮説でしかなかった伝説が目の前にいるのだ。
「グレイント……なるほど。お前は俺がそうだと思うのか?」
信也の発言を錬司は興味深そうに聞いてくる。だが彼の反応は至って淡泊なものだった。
「俺はたいしたことをしてるつもりはないんだぜ? 元はランクFだ、別段珍しいものじゃない」
「だからあんたは特別なんだ」
これだけのことをしておいて特別でなければなんだという。いや、だからこそなのか。
出来て当たり前、自分なら出来るはずだ。そうした思いだったからこそ実現出来たのかもしれない。
獅子王錬司こそ真の特別だ。
異能など関係ない。ランクなど関係ない。錬司は強い。
信也は改めて思い知らされた。自分が憧れ、目指した者の偉大さを。
(俺で、勝てるのか?)
変身が解ける。信也は元の姿に戻っていた。
勝つという覚悟が揺らぎ始める。不安が徐々に広がっていった。
このままでは狩られる。相手はグレイントだ。いくつものハイランク者が倒された。自分も倒される。
錬司に憧れて今まで頑張ってきた。成功したことだってあった。
けれど、本物を前にして信也は自信を失っていく。
(うっ!)
気づけば錬司が大きく見えていた。足は勝手に一歩下がった。思い返せば錬司に勝てたことなど一度もない。
その時、頭の裏で誰かが言った。聞こえてきたのだ。それは、暗い底から信也を誘う絶望の声だった。
『諦めよう』
誰かが言うのだ。
『勝てるわけがない。相手は錬司だ』
誰かが言うのだ。
『勝てなくても恥ずかしいことじゃない。勝てなくて当然なんだ』
誰かが言うのだ。
『勝てなくても俺が悪いわけじゃない』
誰かが言うのだ。
『諦めよう』
それは、信也の声だった。自分の心の声だ。現実の壁に諦観の念が囁く。
相手は錬司。相手はグレイント。勝てるはずがない。自分以外のランクAだって敗れた。勝てないことが普通なんだ。
いつしか負ける言い訳まで頭の中を飛び回る。言い訳を正論のように並べて、諦めることが正しいことのように理屈を立てる。そうして、諦めるのが正しいという方法論はできあがる。
「俺は…………」
「そんな……」
その言葉に、もう返す言葉もい。
次元が違う。
普通は諦める。まず諦める。絶対に不可能だ。
しかし、獅子王錬司は諦めなかった。
たとえなにが壁になろうとも、彼だけは、自分を信じて頑張った。
そこで、さらに信也は気づいた。
「まさか!?」
錬司のすごさとはどこにある? アーク? 違う。高速性と連続性? それもあるが、それも普通なら諦めている。
諦めないことだ。誰よりも彼は諦めない。そして、それは『生まれつき』。
「錬司、お前まさか」
信也は驚愕した。知っていたからだ、生まれつきの『特別』というのを。
アークの高速発動と連続発動が可能にした最強のランクF。
どんなものでも諦めない。
自分と他人は違うという圧倒的な自意識。
それらはすべて生まれた時から持っていた。
これでは、まるで、アークアカデミアの仮説。伝説のおとぎ話の――
「まさか、あんたがッ!」
それを、信也は驚きと感動にも似た思いで叫んだ。
「先天的高位者! そうか、あんたがグレイントかッ」
故に信也は震撼した。心の底から驚嘆した。目の前にいるのだ、伝説の存在が。
生まれた時から自分が特別だと思う人間がいるか? 自分はゲームの主人公で他人はモブキャラなんて思う人間がいるのか?
いない。まずいない。恐ろしいほどの自意識だ。もしそんな人物がいるとしたら、その人は生まれながらの規格外。
先天的な規格外だ。
偉大なる者、選ばれし民。アークアカデミアのおとぎ話。誰も知らないのに誰もが知っている伝説の存在。
先天的高位者、グレイント。生まれつきの特別が、アークアカデミアに襲いかかる。
「くそ! マジかよッ」
錬司が只者ではないと思っていた信也だがことグレイントという言葉には動揺を隠せない。仮説でしかなかった伝説が目の前にいるのだ。
「グレイント……なるほど。お前は俺がそうだと思うのか?」
信也の発言を錬司は興味深そうに聞いてくる。だが彼の反応は至って淡泊なものだった。
「俺はたいしたことをしてるつもりはないんだぜ? 元はランクFだ、別段珍しいものじゃない」
「だからあんたは特別なんだ」
これだけのことをしておいて特別でなければなんだという。いや、だからこそなのか。
出来て当たり前、自分なら出来るはずだ。そうした思いだったからこそ実現出来たのかもしれない。
獅子王錬司こそ真の特別だ。
異能など関係ない。ランクなど関係ない。錬司は強い。
信也は改めて思い知らされた。自分が憧れ、目指した者の偉大さを。
(俺で、勝てるのか?)
変身が解ける。信也は元の姿に戻っていた。
勝つという覚悟が揺らぎ始める。不安が徐々に広がっていった。
このままでは狩られる。相手はグレイントだ。いくつものハイランク者が倒された。自分も倒される。
錬司に憧れて今まで頑張ってきた。成功したことだってあった。
けれど、本物を前にして信也は自信を失っていく。
(うっ!)
気づけば錬司が大きく見えていた。足は勝手に一歩下がった。思い返せば錬司に勝てたことなど一度もない。
その時、頭の裏で誰かが言った。聞こえてきたのだ。それは、暗い底から信也を誘う絶望の声だった。
『諦めよう』
誰かが言うのだ。
『勝てるわけがない。相手は錬司だ』
誰かが言うのだ。
『勝てなくても恥ずかしいことじゃない。勝てなくて当然なんだ』
誰かが言うのだ。
『勝てなくても俺が悪いわけじゃない』
誰かが言うのだ。
『諦めよう』
それは、信也の声だった。自分の心の声だ。現実の壁に諦観の念が囁く。
相手は錬司。相手はグレイント。勝てるはずがない。自分以外のランクAだって敗れた。勝てないことが普通なんだ。
いつしか負ける言い訳まで頭の中を飛び回る。言い訳を正論のように並べて、諦めることが正しいことのように理屈を立てる。そうして、諦めるのが正しいという方法論はできあがる。
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