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異能学園のアークホルダー

奏せいや

いよいよだね、信也君緊張してない?

「構わないさ。互いにアークホルダー、いいじゃないか」

「ですが、ジャッジメントは依然未知数な存在です。彼と戦わせるのは危険が大きいのでは?」

「神崎君」

「あ、ああ。なんだ?」

 賢条は牧野先生からの質問には答えず信也を見つめる。

「確認するが、君は彼と戦えるのかね? 一度は敗れた彼に」

「ああ」

「勝てる見込みは?」

「覚悟は負けてない」

「なら十分だ」

 賢条幹久からゴーサインが飛ぶ。

 再戦が約束された。

 信也は拳を握る。気合が静かに高まっていく。

 そんな信也を後押しするかのように賢条から言葉が送られた。

「彼の力は強大だ。ランクAをすでに複数倒している。君でも勝てるとは限らない」

「分かってる」

「君でも彼に勝てるかどうか。神崎信也君。君の可能性を証明するといい」

「そのつもりだよ」

 力強い眼差しで賢条を見つめた。賢条も信也を見つめており無言で意思を伝え合う。

 しばらくして、信也は振り返り扉を開けた。

「失礼しました」

「わたし空気なんですけど!」

 軽く頭を下げて信也と姫宮は理事長室を後にした。

 残された賢条と牧野に一拍の沈黙が下りる。

「周囲を実働部隊で包囲、現場一帯は封鎖しろ。両者の記録を取れ」

「は」

 すぐさに賢条から指示が出る。牧野は気丈な声で答える。

 しかし疑問は残る。牧野は顔にこそ出さないでいたが内心では分かりかねていた。

 このようなこと本来ならば通るはずがない。神崎信也はランクAとはいえ素人だ、戦えばどうなるか分からない。

 それはこの男も分かっているはず。人の夢を応援するような情熱家でもあるまいに。まさか、本当に信也の想いに胸を打たれたのだろうか?

「それにしても、あなたが彼の要望に応えるとは。ロマンチストに鞍替えですか、理事長?」

「まさか」

 そんなこと、それこそこの男にあるわけがなかった。

 第三アークアカデミアの理事長を務めるのはそんな甘い男ではない。

「獅子王錬司は貴重なサンプル体だ、生半可な相手ではデータにならん」

「なるほど」

 この戦いは彼らにとって実験だ。

 獅子王錬司という未知数を測るための。

「すべては鍵のため、達成のため。彼の提案は好都合だ」

 賢条は告げる。眼鏡の奥では刃のような眼光が光る。

 賢条は立ち上がった。いつしかこの部屋には武装した男たちが並んでいた。すべて実弾だ。訓練を修めた兵士が厳格な表情で賢条を見つめている。

 この空気、学校のものではない。戦場の雰囲気だ。戦いを前にした戦の重圧に包まれている。

「本任務の説明を行う。目的は獅子王錬司のデータの取得。彼はこれまでのアークホルダーとは違う。ランクFだと思うな」

「はっ」

 賢条からの指示に部下全員が答える。

 第三アークアカデミア理事長、賢条幹久から命令が下る。後にアカデミアを左右する『鍵』を掛けた戦い。

 戦っているのは信也と錬司だけではない。彼らの行動如何によって未来は大きく変わるに違いない。

 そのためにも失敗は許されず、生死を掛けた正念場。暗躍する異能学園が今後を占う作戦へと身を乗り出していく。

「我々の行動がアカデミアの目的に直結すると、心して任務に当たれ。では、これより状況開始」

 時間は過ぎてその時は着実に近づいていた。

 信也と錬司の決着の時が。



「いよいよだね、信也君緊張してない?」

「緊張してないと言えば嘘になるかな、うん」

 廃ビルの正面。一度は負けたその場所へと信也たちは来ていた。情報ではすでに錬司はここにいるらしい。

 信也は一度目を瞑って自身を落ち着けた後、ゆっくりと瞼を開いた。そして姫宮を見る。

「姫宮、ここから先は危険だから待っててくれ」

「いやだ!」

「はは、言うと思った」

 お菓子売り場で駄々をこねる子供のような姫宮を信也はやれやれと笑った。

「頑固さなら錬司級だよ、姫宮は」

「それって褒めてる?」

「どうだろうな」

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