話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

異能学園のアークホルダー

奏せいや

信也君、だいじょうぶ?

 錬司と再会した日の翌日、信也は屋上で一人座り込んでいた。晴れてる青空がどこか寂しい、そんな日だった。

 空をぼうと見上げる。雲がゆっくり流れていくのを静かに見守る。

 風が吹き、空虚な胸を通り過ぎていく。

 すると屋上の扉が開かれた。

「信也君……」

 そこには信也を心配そうに見つめる姫宮が立っていた。両手を胸の前で合わせている。

 姫宮は近づいてくるとそっと声をかけてきた。

「信也君、だいじょうぶ?」

 隣に立ち姫宮は聞いてくるが、信也はすぐには答えられなかった。

 それから少しだけ時間を置いてから信也は言った。

「姫宮……。悪いけど、今は一人にしてくれ」

 その声は風に吹かれるほど小さいものだった。

「そんなこと言われても無理だよ。だって、今の信也君どう見ても辛そうだもん。ほっとけないよ!」

 姫宮から優しい声がかけられる。本当に信也を心配してくれている。その表情と声は真剣だった。

「ねえ、話して。わたし聞くよ、いつまでも聞くよ。トイレの時も聞くよ」

「それは逆に嫌だけど……」

 彼女の気持ちは信也も嬉しく思う。

 けれど、その思いに応えられるだけの余裕は…………今の信也にはなかった。

「一人がいいんだ」

 顔を逸らしてそう言った。

「でもさ! 人に言えばすっきりするもんだよ? 一人で抱えててもいいことないよ。ホントだよ? 以前もね、わたしお母さんが自分のために買ってきたプリン食べちゃってさ」

(プリンかよ)

 ずいぶんと庶民的な悩みが姫宮の口から出てきた。

「それでその時のことすっごく言いたかったんだけど我慢してたんだ。言おうか言わないでおこうか悩んだんだんだけど、わたし思い切って言ったんだよ! 『お母さんが買ってきたプリンすっごくおいしいね!』って」

(そっちかよ)

「めちゃくちゃすっきりしたよ、だってめちゃくちゃおいしかったんだもんあれ。食べたことないよあんなプリン。まあ、その後ケンカになったけど」

(やっぱりかよ)

 その後も姫宮の告白シリーズが続く。信也は黙っていようかとも思ったが、駄目だった。
 本当に、それどころではなかったから。

「ほっといてくれよ……」

「え?」

 言ってしまった。

「ほっといてくれ! 姫宮に分かるわけないだろ!」

「信也君…………」

 信也からの拒絶に姫宮は呆然としていた。でも、信也は止まれない。動き出した激しい感情は車のように制御が利かない。

「ずっと憧れていたんだ、理想だったんだ! 俺もあんな風に自分を貫ける生き方が出来たらいいなって、そう思って頑張ってきたんだ。なのにッ」

 思い出すのは昨日のこと。二年ぶりに再会した友人のこと。

「否定されたんだ!」

『そんなんだから、お前は駄目なんだよ信也』

 理想から、夢から、信也は否定されてしまった。

 今まで自分なりに頑張ってきた。傷ついたりもしたし失敗したこともあった。彼のように上手くはいかなかったが、それでも諦めずに頑張ってきた。

 どこが駄目だった?

 なにがいけなかった?

 生き方が、進むべき道が分からない。

「分かるわけないだろ。俺が、どれだけ錬司に憧れてたかなんて!」

 叫んだ。抑えていた自分の思いを。心の痛みに触れながら。

 ずっと頑張ってきた、錬司に憧れて。諦めなければ道はあると。己を信じ、無限の可能性があるんだと。

 けれど、その錬司から言われたのだ。

 自分の生き方を否定された。自分の夢を砕かれた。これからなにを信じていけばいいのか分からない。

 信也は、自分を完全に見失っていた。

 そんな時だった!

「シリアスな空気を察知して爆、殺! 姫宮パーンチ!」

「ぐはあ!」

 信也に姫宮からグーパンプレゼント!

「なにするんだよ!?」

「おかわりだ!」

 ドーン!

「ぐごお!」

 両頬を見事にクリーンヒット!

 信也は地面に横になりながら両頬を押さえ痛みに足をバタバタ動かした。

「異能学園のアークホルダー」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く