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異能学園のアークホルダー

奏せいや

俺が、ランクF?

 錬司は感じている。違和感だ。自分が知っているはずの人生観と実際の生活が違うのだ。こんなはずじゃない。漠然とした違和感がしかし強烈にへばりつく。

 例えるならば錬司が生まれ落ちた世界は魔物も魔王もいないRPGのようだ。勇者はいるのに敵がいない。

 世界に一人の勇者がコンビニでバイトして暮らしてる。そんなのはおかしい、勇者ならば魔王と戦うべきだ。ドラゴンでもいい。しかし主人公はモブキャラと同じ人生(シナリオ)を進んでいる。

 それが、錬司には納得できない。

 自分にはもっと相応しい人生シナリオがあるはずだ。

 自分は特別なんだと、なぜか初めからそう思うのだ。

 そこへ男子たちの援軍が駆け付けた。後輩から先輩まで、全学年の不良たち十数人が得物を手にニヤついた笑みで近寄ってくる。

 けれど、錬司は屈しない。

「ハッ、雑魚がウジャウジャと」

 むしろ好都合だと口元を吊り上げた。

「俺は特別オリジナルなんだよ、てめえら有象無象モブキャラの出番はここまでだ」

 その日から錬司は一躍有名人となった。不良全員を一人で倒した転校生。加えて学業運動とどちらも学校一位で部活動からは引っ張りだこだ。

 どうしてそんなにすごいのか聞く者は後を絶たない。

 その度錬司は言う。

「俺は特別なんだ、お前らとは違うんだよ」

 説得力があった。誰しもが納得した。

 けれど、栄光の裏では彼を妬む者もいた。

 その後錬司は目指していたアークアカデミアも当然のように入学を決めた。すべてが約束されたような道。自分にできないことなどない、あれば誰よりも努力した。結果達成してきた。

 自分は特別な人間なんだと。できて当たり前なんだと。

 錬司はそう信じて疑わなかった。

 そして、運命のアーク発現の日。

 第一アークアカデミアでの研究所で錬司はアークを授かった。開発は成功し、結果を聞くため研究所の一室を訪れる。

 病院の診察室そっくりに白で統一された部屋には白衣を着た研究員が机に座っていた。その前の丸椅子に錬司は腰掛けている。

「で、先生。早いとこ結果を教えてくれないか?」

 この時ばかりは錬司も興奮していた。いったいどんなアークだろうか。ランクC以上は欲しい。いや、既存のランクを飛び越して、誰も発現したことのないランクだって諦めきれない。

「君の異能(アーク)だが」

 そんな錬司に、机の前に座っている研究員は椅子をくるりと回して正面を向けた。

「残念ながら、『ランクF』だ」

「な!?」

 錬司は立ち上がった。椅子が大きな音を立てて倒れる。

「ランクFだと! 俺が!?」

 それだけに留まらず錬司は研究員の胸倉を掴んでいた。

「ふざけんな、なんかの間違いだろ!?」

「試しに使ってみればいい」

 錬司は激情を露わにするが研究員は冷静だ。

 言われるままに錬司はアークを発動してみた。

「…………? ……!?」

「分かっただろう」

 しかし、なにも起きなかった。

 なにも起きなかったのだ。たしかにアークを発動しているはずなのに。

 錬司は混乱した。

 そんな錬司を冷たい目で見ながら、研究員は口を動かした。

「君の能力だが」

「そんな……」

 錬司は己の両手を見つめた。信じられないと驚愕するが、指先は震えるだけだった。

「君の能力は、『念じたものを一ミリだけ動かす』能力だ。実用性なし。よって、ランクFだ」

「…………」

 言葉が出なかった。錬司はその場に棒立ちしていた。

「邪魔だからさっさと出て行ってくれ。結果は分かっただろう。次の人! ……ああ! お待ちしてたよ、君はランクCだ、おめでとう。アークアカデミアは君の入学を大いに歓迎するよ。さあ座って座って。おい、いつまでそこにいるんだ、さっさと出て行け!」

「…………」

「おい!」

「嘘だろ……」

 研究員から出て行けと叫ばれる。大きな声だが錬司には遠い世界のことのように聞こえていた。

「俺が、ランクF?」

 その事実に、錬司は亡霊のように立ち尽くしていた。

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