話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

異能学園のアークホルダー

奏せいや

受験番号八四番、姫宮詩音!

 あまりにも唐突な話題に本人もぽかんとしている。周りもぽかんとした。

「わたし、三木島さんのデビュー時からのファンなんです! 歌もダンスもすっっっごくお上手で、すぐにファンになりました!」

 姫宮の言葉は嘘とは思えない。本当に好きだった。

「三木島さんのデビュー時、インタビューで言っていたこと覚えてますか? 歌とダンスが大好きで、アイドルになれてとても嬉しいって、お客さんよりも楽しそうに言っていましたよね?」

 姫宮は明るい笑顔と声で想いを語っていく。

「そんな三木島さんも今ではトップアイドル。応援していたアイドルが、どんどん有名になっていく。どんどん活躍していく。ファンとしてこれ以上嬉しいことがありますか!? 三木島さんの頑張りに、その歌に、わたしはたくさんの喜びと勇気をもらいました!」

 本人を前にして、その想いをぶつけるのだ。

「三木島さんのドラマ出演が決まった時、めちゃくちゃうれしかったです! 出演する番組はぜんぶ見てました! CDはシングルもアルバムも全部持ってます! だから、こんな状況でしたけど、目の前で三木島さんの生ライブ見れて、胸の中ではめちゃくちゃうれしかったんです」

 出会いは敵だったけれど、それでも憧れのアイドルが目の前にいるのだ。嬉しかったという自分の気持ちに嘘は吐けない。

「でも、反面残念でもあったんです」

 そこで、姫宮のトーンが寂しそうに変わった。

「今の三木島さんの歌とダンスには、昔にあったキレがない。わたしファンだから分かるんです! 三木島さんは最初の方が歌もダンスも上手かったって! だから、今の三木島さんを、わたしはファンとして、三木島さんだと思いたくないんです! あんなに歌とダンスを愛していた人はこんなんじゃないって!」

 思いを叫んだ、憧れを前にして。

「有名になっていって嬉しかった。でも、そうなる度に歌とダンスの腕が落ちていった。わたし、今の三木島さんが歌とダンスが好きなように見えないんです。わたしは、歌とダンスが大好きだった頃の三木島さんがもう一度見たい! 戻って欲しいんです!」

 姫宮の叫び。情熱が宿った言葉を憧れの存在へとぶつけた。

 彼女の思いを聞いてどう思ったか。三木島はしかし、険しい表情で聞いていた。

 今にも、泣きそうな顔で。

「そんなの、無理よ……」

 唇が震えている。両手は力強く握られている。強い想いを耐えるように、三木島は姫宮を睨みつける。

 そして叫んだ。姫宮の思いに対して、己の思いを叫び反論するのだ。

「あなたもいつか分かるわ! どんなに歌が上手くたって、ダンスが上手くたって、そんなの誰も見てくれない! 私がどれだけ歌を愛していたって、求められるのはいつだってアークだった! プロデューサーだって監督だって! 皆が求める偶像を演じる、それがアイドルなのよ!」

「違います!」

 けれど、それすら反論した。

「アイドルはみんなを笑顔にするんです! 自分自身も! だって」

 姫宮は大声で否定すると、両手を広げ、とびっきりの笑顔で言い切った!

「わたしは、この瞬間が一番楽しいから!」

「あなた……」

 その笑顔を、三木島は見つめていた。まるで昔のアルバムでも見るように。そこに、自分が失くしてしまったものを見つけたように。

 驚きと納得が同時に現れた、それは――憧れのような顔だった。

「受験番号八四番、姫宮詩音! 夢は、アイドルです!」

 そして姫宮のライブが始まった。持参した曲を流し、それに合わせてダンスを披露する。

 懸命だった。真剣だった。それでいて誰よりも楽しそうだった。

 楽しんでいるのだ、誰よりも。ここにいる誰よりも。

 雰囲気が変わっていた。誰よりも楽しそうに歌い踊る姫宮に、なんだか不思議と見ている方まで楽しくなってくる。

 気づけば、ここにいる皆は魅了されていた。手拍子で合わせ、姫宮のライブに参加していた。

 認めざるを得なかった、ここにいる全員が。彼女の持つ無限の可能性を。

 笑顔を振りまき、その場にいる人までも笑顔にさせる明るさを。

 姫宮のライブが終わった。正確には自己アピールでしかなかったそれが。それでも、ここは大きな満足感に包まれていた。

「イェイ!」

 姫宮は汗をかいた笑顔で振り向き、みなへとピースサインを送るのだった。

「異能学園のアークホルダー」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く