異能学園のアークホルダー
試験、これからだろ?
信也は歌った。声に己の想いを乗せて。歌には人の気持ちを届ける力がある。だから人は歌に笑い歌に泣く。元気をもらい感動できる。
派手な照明もいらない。特別な演出もいらない。
人を感動させるのに、歌さえあればなにもいらない。
想いを込めた歌さえあれば。
信也の歌が終わった。三木島の時とは打って変わって静寂だ。誰も声を上げることなく、無言の内に信也のライブは終わっていた。
試験官の一人が声を上げる。
「それでは投票を行います。この歌唱勝負、三木島さんだと思う方は挙手を」
数人が手を上げる。しかしその数はちらほらだ。
「では、神崎さんだと思う方は挙手を」
残りの全員が、躊躇いながらも、信也に手を上げてくれた。
そんな中、姫宮が誰よりも激しく手を上げている。その場でぴょんぴょんと跳ねて激しくアピールしていた。
勝った。トップアイドル三木島沙織と神崎信也の歌唱勝負は、信也の勝利で幕を下ろした。
「俺の歌自体にはアークはなかった。それでもこれだけの人が心惹かれたんだ。アイドルになるのに、人に憧れるのにランクは関係ない! これからはランク関係なしに試験を受けさせてもらうぜ」
「くっ!」
三木島は悔しがっている。まさか自分が負けるなど思っていなかったのだろう。
「どうして? なぜ私の光子妖精の戯れが負けた? どうして?」
「そんなんだから駄目なのさ」
悔しがる三木島に信也は目を細めて言う。
「今の俺はトップシンガーだ、だからあんたの動きを見て分かる。あんたは常に自分を異能(アーク)で偽っている。その肉体は練習で身に付けたものじゃない。ただの、張りぼてだ」
「くぅ……!」
信也は能力を解くと姫宮に近づいていった。姿はいつもの制服姿に戻っている。
「信也君すごい! すごい! すごい! わたし感動しちゃったよ!」
「ありがと。でも喜んでる場合じゃないだろ」
「へ?」
子犬のように喜ぶ姫宮はいつもの彼女だ。愛らしい仕草が彼女には合っている。
そんな彼女へ、信也は悪戯っぽく言ってやった。
「試験、これからだろ?」
「……うん!」
姫宮は大きく頷いた。
姫宮は信也の横を過ぎてスペースへと駆けて行く。そこにはさきほどまでの不安も悲しみもない。
誰よりも明るい笑顔を取り戻した姫宮がいた。
姫宮はスペースに立つ。試験が再開されテーブルには試験官が座っている。
しかし雰囲気は最悪だ。ランクFという偏見は未だにある。加えて三木島を負かした相手の友人だ。試験を受けたところで落とされるのがオチだ。周りから向けられる視線も冷たい。
どうする、姫宮。
この逆境。
これは試験と同時に試練だ。ここで果たして証明出来るのか。
姫宮詩音の、アイドルの資質が試される。
そんな重圧の中、姫宮が話し出したのは、
「いまさらなんですが、私、実は三木島沙織さんの大ファンなんです!」
「え?」
三木島のことだった。
派手な照明もいらない。特別な演出もいらない。
人を感動させるのに、歌さえあればなにもいらない。
想いを込めた歌さえあれば。
信也の歌が終わった。三木島の時とは打って変わって静寂だ。誰も声を上げることなく、無言の内に信也のライブは終わっていた。
試験官の一人が声を上げる。
「それでは投票を行います。この歌唱勝負、三木島さんだと思う方は挙手を」
数人が手を上げる。しかしその数はちらほらだ。
「では、神崎さんだと思う方は挙手を」
残りの全員が、躊躇いながらも、信也に手を上げてくれた。
そんな中、姫宮が誰よりも激しく手を上げている。その場でぴょんぴょんと跳ねて激しくアピールしていた。
勝った。トップアイドル三木島沙織と神崎信也の歌唱勝負は、信也の勝利で幕を下ろした。
「俺の歌自体にはアークはなかった。それでもこれだけの人が心惹かれたんだ。アイドルになるのに、人に憧れるのにランクは関係ない! これからはランク関係なしに試験を受けさせてもらうぜ」
「くっ!」
三木島は悔しがっている。まさか自分が負けるなど思っていなかったのだろう。
「どうして? なぜ私の光子妖精の戯れが負けた? どうして?」
「そんなんだから駄目なのさ」
悔しがる三木島に信也は目を細めて言う。
「今の俺はトップシンガーだ、だからあんたの動きを見て分かる。あんたは常に自分を異能(アーク)で偽っている。その肉体は練習で身に付けたものじゃない。ただの、張りぼてだ」
「くぅ……!」
信也は能力を解くと姫宮に近づいていった。姿はいつもの制服姿に戻っている。
「信也君すごい! すごい! すごい! わたし感動しちゃったよ!」
「ありがと。でも喜んでる場合じゃないだろ」
「へ?」
子犬のように喜ぶ姫宮はいつもの彼女だ。愛らしい仕草が彼女には合っている。
そんな彼女へ、信也は悪戯っぽく言ってやった。
「試験、これからだろ?」
「……うん!」
姫宮は大きく頷いた。
姫宮は信也の横を過ぎてスペースへと駆けて行く。そこにはさきほどまでの不安も悲しみもない。
誰よりも明るい笑顔を取り戻した姫宮がいた。
姫宮はスペースに立つ。試験が再開されテーブルには試験官が座っている。
しかし雰囲気は最悪だ。ランクFという偏見は未だにある。加えて三木島を負かした相手の友人だ。試験を受けたところで落とされるのがオチだ。周りから向けられる視線も冷たい。
どうする、姫宮。
この逆境。
これは試験と同時に試練だ。ここで果たして証明出来るのか。
姫宮詩音の、アイドルの資質が試される。
そんな重圧の中、姫宮が話し出したのは、
「いまさらなんですが、私、実は三木島沙織さんの大ファンなんです!」
「え?」
三木島のことだった。
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