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異能学園のアークホルダー

奏せいや

では、私から一曲。皆さんに応援を送ります

「なんだよそれ、お前らそれでもアイドル志望か!? 人を見下すのがアイドルのすることかよ!?」

 信也は叫ぶ。辺りは黙っていた。

「信也君……」

「こんなの差別じゃねえか! いじめだろ、どう見ても!」

 信也は叫んだ。叫んだのだ、己の心が叫んでる。

『おいどうした信也、かかってこいよ!』

『や、止めてくれよ……』

『はっはははは! 情けねえ』

 生まれつきの境遇ランクで、こうも決められてしまうのか。

 悔しいのになにも出来ない。

 そんな思いを、信也も知っているから。

 姫宮は顔を上げ信也を見ている。涙で濡れた目で。

 そんな姫宮に信也は近づいた。そして片膝を付くと手を差し出したのだ。

 かつて自分がそうされたように。

「助けに来たぜ、泣き虫姫宮。なんてな?」

 最後に笑みを浮かべて。

「うん……」

 それに頷いて、姫宮は信也の手を取った。

 信也は姫宮を立たせる。姫宮は涙を拭いた。

「大丈夫だからな、姫宮」

 信也はそっと声をかけた後、みなに振り向いた。

「人間もアイドルもランクがすべてじゃない! 何故ランクで決めつけようとするんだ? 彼女にはアイドルになりたいという夢がある、その情熱は本物だ! お前らにだって負けないほどにな!」

 信也は姫宮の眼差しを背中で受けながら、三木島に指を突きつけた。

「俺と勝負しろ!」

「勝負?」

 信也からの突然の勝負宣言に三木島は呆気に取られるが信也は続ける。

「あんたもアイドルなんだろ? なら歌を歌い、この場にいる人から多くの票を得た者が勝ち。俺が勝ったら姫宮にも入部試験を受けさせてもらう」

「そんな!? 無理だよ信也君。そんなことしたら全員三木島さんに投票するに決まってるよ!」

 姫宮の言った通り、周りからは「お前に投票するわけないだろ」とヤジが飛んでくる。

 三木島は最初こそ面食らっていたが、すぐに自信に満ちた表情に戻っていた。

「私が勝ったらどうなるのかしら?」

 問いに、信也は答えた!

「知らん!」

 デデーン!

「ふっ、まあいいわ。その時はあなたに勝ったと宣伝させてもらうわよ? ランクAに勝ったと大々的にね。それと条件を加えさせてもらうわ。観客の投票に関してアークは使えない。投票は観客の意思で行う、どう?」

「初めからそのつもりだ」

「へえ、意外。それが狙いだと思っていたのに」

 この絶対的不利な状況で勝つとなれば観客の意識を操作して自分に投票させる。それしか方法がない。三木島でなくともそう思うだろう。

「ではどうやって私に勝つつもりなの。この、絶対的に不利な状況で」

 そうでないと知ってから三木島から余裕が零れ出ていた。ランクAが相手とはいえここはホーム。負ける理由がない。

 それでも、この男は諦めない。

「歌で勝負する。そして勝つ!」

 どんな不利な状況でも諦めない。自分を信じる心、人間の可能性を信じているのだ。

「分かったわ。その勝負受けましょう。アイドル部の入部試験を一時中断、ここにいる全員には突然ですが、この勝負の審査員になってもらいます」

 三木島の言葉に周りは歓声で応える。テレビの向こう側のアイドルが目の前で歌を歌うのだ、ファンにとってはこれ以上にないサプライズだ。

 歌唱勝負はそのまま自己アピールをしていた場所で行うことになった。曲の準備も終わり、最初はアイドル部部長、三木島沙織が歌う。

 試験官は外れ全員が後ろの列に加わる。三木島は正面をファンに向け大きく手を振った。

「突然のことに戸惑っている人も多いと思うけど、今日はアイドル部入部試験に来てくれてありがとう。アークに歓迎された皆さん、私と一緒にここから夢を追いかけましょう!」

 憧れの人からの声援に受験者から「きゃああああ!」と歓声が津波のように押し返される。熱気だけならすでに本物のコンサートさながらだ。

「では、私から一曲。皆さんに応援を送ります」

 三木島はスペースの中央で位置を取りマイクを持った。足を肩幅に取り顔が下を向く。いよいよだ。観客は声を潜め、興奮を残したまま雰囲気が切り替わる。

 信也も姫宮も、離れた場所で彼女を見ていた。アークアカデミアのトップアイドルの実力、その空気は信也にも伝わってくる。

 そして、三木島の顔が上がる。きらりと自信に満ちた目で。

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