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異能学園のアークホルダー

奏せいや

そうだそうだ! ランクFが来るな!

 全国から優秀な生徒が集まるアークアカデミアは部活動も盛んだ。公式大会にこそ出れないないものの残した功績は枚挙にいとまがない。

 各業界では卒業前から目をつけスカウトしている者もいる。

 その一つがアイドル部。在学中のプロデビューなど当たり前。男子生徒も女子生徒もここにいるだけでそこらの芸能事務所にいるよりよっぽど仕事が入る。

 その栄光たる部活に入部しようと毎年大勢の受験者が集まるアイドル部の試験場は第二体育館で行われ、八十人ほどが集まっていた。

「ここか」

 信也は体育館の入口に立ち中を覗いてみる。そこでは真剣な雰囲気が漂い、五人の試験管が同じテーブルに座り、その前で一人ずつ自己アピールを行なっていた。

 後ろの列には大勢の人が自分の番を待っている。

「ねえ、信也君」

 中の様子を伺っている信也の背後から少しだけ距離を置いて姫宮が聞いてくる。この場所に近づくのを躊躇っているように彼女の顔色は暗い。

「私のために頑張ってくれるのは嬉しいよ。でも、どうするの?」

 心配そうな姫宮の声。けれど信也は振り返ることなく体育館へと足を踏み入れる。

「ランクで決められるっていうなら」

 その目には、未だ冷めやらぬ意思が燃えている。

「俺が決めてやる。ランクAの俺が」

 信也は歩き試験官に近づいていった。

「たのもぉー!」

「なに?」

「あの人、イレギュラーよ!」

「イレギュラーがここに? あいつもアイドル志望か?」

 大勢の受験者が信也に注目する。ちょうど自己アピールをしていた女子も気を取られて信也を見つめている。

 信也は自己アピールするスペースまで歩くと立ち止まった。

「さっき姫宮詩音という女の子が入部試験を受けに来たはずだ。何故断った!?」

「あの、その……」

 信也の後ろを着いてきた姫宮が言いにくそうにたじろぐ。

 信也の問いに試験官たちが難色を示していた。突然の来訪者に対処をこまねいているようだ。
 そこへ、会場奥から一人の女生徒が歩いてきた。

「へえ、あなたがイレギュラー。神崎信也君ね?」

 その声色は自信に満ち溢れながらも品のある、澄んだ声だった。

「私はアイドル部部長三年、三木島沙織みきしまさおりよ。よろしくね、イレギュラーさん」

 長い金髪がさらりと垂れる。横の髪を髪飾りでとめ後ろ髪は腰まで伸びていた。レッスンを重ねた肉体は発育もよく、曲線を描く肉体美は理想的な女性像だ。

「あれは、三木島さんよ!」「一年でプロデビューしてから今ではCMクイーンとなり月九ドラマにも出演した沙織さん。きゃー、本物よ!」「俺来てよかった!」

「私の紹介は必要かしら? というよりも、ここに来ているということは当然知っているのでしょうけれど」

「いいや。あいにくアイドルには興味がないんだ」

「あら。ならどうしてここに?」

「姫宮にも試験を受けさせるためだ」

「姫宮?」

 三木島に試験官の一人が近づき耳打ちする。それで納得したのか「ああ」と小さく声を漏らした。

「そういうこと。状況は分かったわ」

「なら!」

「残念だけど」

 しかし、三木島も試験官と同じ、考えは同じだった。

「彼女のランクはFだそうね。それではアイドルにはなれないわ。アイドルというのはみんなの憧れなの。こうなりたい、ああなりたい。そんな憧れの象徴でなければならない。そこにランクFの子がいたらどう思うかしら。誰もランクFには憧れない。よって、彼女はアイドルにはなれないわ」

 三木島は目を伏せそう断言した。アークアカデミアのアイドル部部長にそう言われ、ショックを受けたように姫宮は悔しそうに俯いた。

「そうだそうだ! ランクFが来るな!」「ここはアイドルにふさわしい人が集まる場所よ、ランクFの子が来る場所じゃないわ!」「図に乗るな、ランクF!」

 帰れ! 帰れ! ランクF帰れ!

 大勢の人間から叫ばれる。

 姫宮はなにも言えなかった。どんなに悔しくてもなにも出来ない。

 耐えることしか出来ない。

 それが自分に相応しい身分なのだと、どこか諦めるように。

「う、うう!」

 姫宮は溢れる涙に崩れてしまった。両膝をついて両手を顔に当てる。皆からの非難を一人で耐えていた。

「だまれぇええええ!」

 それを、信也の怒号が一蹴した。

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