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異能学園のアークホルダー

奏せいや

ランクアップは不可能です

「次にランクEですが、これは実用性はあるものの比較的代用が容易なものがEとなります。

 私の知っているものですと指先から小さな火を灯せるものですとか、体温を調整できるものですね。

 前者はライターで代用可能ですし、後者は体を温めたいだけなら服を着ればこと済みます。そうしたものがランクEです」

 牧野先生からの説明が続いていく。

「ランクDは肉体、一部の物体への作用になります。肉体への作用でしたら怪我や病気をすぐに治す超回復力。ほかには怪力など。また自分の肉体だけでなく、相手の感情を感知したり記憶を書き換えるなどもこのランクDになります」

 肉体の作用というのは他人の肉体も含まれるということらしい。

「一部の物体への作用というのは言葉が難しいのですが、要はすべてではなく、それだけを出したり消したり出来る。それだけを巨大化したり変形できたりするものですね」

 牧野先生の話から信也が思い浮かべたのは、漫画やアニメの主人公がなにもない場所から自分の武器を取り出して戦ったり、魔法少女が変身して服装が変わる場面などだった。

 彼ら彼女らは自分の武器を取り出せたり変身は出来るが、すべての物質を空間転移できたり変形できるわけではない。あくまで一部なのだ。それがランクD。

「ランクCは物理の操作です。天候を操ったり光を使って映像を作ったりします。対照的にランクBが物理法則の超越となります。

 質量保存の法則やエントロピーなど物理的な限界の突破。また新たな法則の創造などがランクBとなります。

 ランクCとBはよく間違うケースがありますが、そうですね、あなたで分かり易いたとえですと、漫画やアニメでビームが出たとします。

 それが物理的に説明可能ならランクCですし、魔法のような説明出来ないものならランクBとなります。そして最後が」

 その時、牧野先生が信也を見る目が少し細くなった。

「ランクA。定義は次元への干渉、もしくは超越です。次元とは三次元である空間、四次元である時間、五次元である平行世界に分けることが出来ます。そのいずれかを操作したり無視しての行動がとれればランクAとなります。ランクの説明はこんなものでしょうか」

 牧野先生の目が少しだけ伏せられるが、すぐに元に戻った。

「加えて言うのでしたら、現在の異能研究ではランクアップは不可能。加えてアークは一人一つが限界。

 マルチアークは不可能です。それで話を戻しますが、犯人は姿を消すのと攻撃、二つ以上の能力を見せています。これほどの能力を発揮するにはランクCでは不可能です。物理を超えたなにかしらか、次元を操作しなければ実現出来ません」

「そうなるか」

 もしランクCなら一つの物理操作だけで二つの現象を起こさなければならない。そのためランクB以上と判断したようだ。

「加えてアークホルダーのデータはすべてアークアカデミアで記録されていますが、ランクB以上のアークホルダーには全員アリバイがあります」

 信也は頭を抱えそうになる。

「それで神崎さん、あなたをお呼びしたのは他でもありません。あなたのランクはA、十分狙われる可能性があります」

「可能性!?」

「どうかしましたか?」

「あ、いや、なんでないです……」

 つい癖が出てしまった。

「では続けます。あなたは今後狙われるかもしれません。十分警戒してください。またこのことは口外無用です。理由はお分かりですね?」

「分かってる。それに口を滑らせたら首が飛びそうだ」

「賢明です」

 それで牧野先生からの説明は終わった。

 ハイランカーを狙った連続襲撃事件、審判者ジャッジメントの出現。

 その重大さに空気は重くなり沈黙が下りた。

 しばらくして、信也はひっかかっていた疑問を喉から吐き出した。

 それは、自分の中にある信念だったから。

「なあ、犯人はランクB以上だって言うけどさ、他は考えられないのかな?」

「と言うと?」

 信也の質問に牧野先生の目が動く。

「もっと、他のランクの人間の仕業だったら?」

「あり得ません。理由はさきほど説明した通りです」

「でもさ!」

 先生からの冷たい否定。けれど信也は退かなかった。声を大きくして自分の思いを主張する。

「人間には無限の可能性があるんだぜ!? もしかしたらランクの低い人間でもアークの工夫次第では――」

「あり得ません」

 それを、牧野先生は否定の刃で一蹴する。

「ランクアップは不可能です。また、工夫でどうにかなるものでもありません。神崎さん、あなたのそれは妄言です。根拠に欠けています」

「でも」

「もしそれを証明したいのでしたら証拠を。話はそれからです」

 それで話は終了してしまった。

 信也は俯いた。両手は拳を作り悔しさに耐える。

『お前の言ってる可能性なんて、しょせん口先じゃねえか』

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