異能学園のアークホルダー
いい機会ですからランクの説明をしておきましょうか
「百聞は一見にしかずさ。見せた方が早い」
「分かりました」
すると牧野先生がA5サイズにプリントアウトされた画像を手渡してくれた。信也は受け取り、緊張した面持ちで画像に目を下ろしてみる。
「なんだよこれ!?」
手渡されたいくつもの画像、それは現場検証のものか人の姿は映っていなかったが、しかし、見る者に伝わる戦慄があった。
一枚の画像は路地裏、その壁がクレーンでぶつける鉄球にでも当てられたかのようにへこんでいた。
他の画像ではコンクリートの地面が爆発でもあったかのように四散している。ほかにもさまざまな破壊の跡が映っていた。
そして、画像の端々には、被害者と思われる血痕があった。
「襲撃に遭った人物の証言では犯人は背丈一七五センチほどの少年。フードの付いたコートを目深に被っていたため顔は分からないそうです。ただ、この犯人のことをジャッジメント、そう呼ぶ噂が飛び交っているようですね」
「ジャッジメント?」
信也は画像から顔を上げた。
「情報統制はしてるんだろ? どうして噂なんか。それにジャッジメントって?」
「アークアカデミア近辺に残された襲撃の現場、欠席している数人のハイランカー、これまでは隠せません。これらを結び付け噂が出来たのでしょう。審判者についてですが、おそらくロウランカーの妬みが出所だと推測されます」
「妬み……」
その言葉を聞いた時、信也はアークアカデミアに根付く暗い闇のようなものを感じ取った。
「この事件での犠牲者はハイランカーばかりです。普段は羨望の的でしょうが、裏では妬んでいる者も少なくないでしょう。ハイランクの優越に浸ったアークホルダーへの、これは審判だと、そうした願望の投影が名前の由来だと思われます」
ハイランクを妬む者たち。
それに信也は心当たりがあった。教室で人間の可能性を信じようと声をかけた信也だったがそれを否定したのはハイランクだけじゃない。
ランクAの信也を妬み、拒絶したのはランクが低い者も同じだ。
信也は暗い表情になった。
牧野先生が一回咳払いする。
「それで犯人、ジャッジメントの特徴について共通する証言があります」
「それは?」
信也は目を上げる。
「犯人ですが、突然現れた、そして襲撃に周りの誰も気付かなかった、というものです」
「突然? 気づかなかった?」
「はい。音も気配もなく、突然現れいきなり攻撃を受けたとか。襲撃時の現場にはアカデミアの女生徒がすぐ近くのベンチに座っていたそうですが、破壊の物音すら聞かなかったと証言しています。これは別の事件ですが、攻撃を受けても犯人を見なかったという被害者もいます」
「なるほど……。たいしたスニーキング能力、いや、隠ぺい力だな」
信也の中で疑問に固められた鍵ががちゃりと開いた。
いかに強力なランクB、ランクAの能力を持っていても能力を発動する前に不意打ちを受ければ倒される。奇襲が有効だとされる尤もな理由だ。
もしかしたら異能対決をして負けた者もいるかもしれないが、もしそうだとしても、ハイランカーのプライドは奇襲で負けたと言うだろう。
「犯人がどのようなアークを持っているかは依然不明ですが、姿を消せる点に加えてこの破壊力。ランクB以上は確実でしょう」
「根拠は?」
信也はそもそもランクの定義を知らない。なにを以てランクBと判断したのか聞いてみた。
「そうですね、いい機会ですからランクの説明をしておきましょうか」
それで牧野先生が察してくれたらしく、ランクの説明をしてくれた。
「ランクの定義ですが、ランクにはAからFまでのランクが設けられています。まずFからですが、これは能力的に実用性がないものをFとしています」
信也は不謹慎ながらなるほどと胸中で頷いた。ランクFは役立たずだと心無い人間が言うわけだ。
「分かりました」
すると牧野先生がA5サイズにプリントアウトされた画像を手渡してくれた。信也は受け取り、緊張した面持ちで画像に目を下ろしてみる。
「なんだよこれ!?」
手渡されたいくつもの画像、それは現場検証のものか人の姿は映っていなかったが、しかし、見る者に伝わる戦慄があった。
一枚の画像は路地裏、その壁がクレーンでぶつける鉄球にでも当てられたかのようにへこんでいた。
他の画像ではコンクリートの地面が爆発でもあったかのように四散している。ほかにもさまざまな破壊の跡が映っていた。
そして、画像の端々には、被害者と思われる血痕があった。
「襲撃に遭った人物の証言では犯人は背丈一七五センチほどの少年。フードの付いたコートを目深に被っていたため顔は分からないそうです。ただ、この犯人のことをジャッジメント、そう呼ぶ噂が飛び交っているようですね」
「ジャッジメント?」
信也は画像から顔を上げた。
「情報統制はしてるんだろ? どうして噂なんか。それにジャッジメントって?」
「アークアカデミア近辺に残された襲撃の現場、欠席している数人のハイランカー、これまでは隠せません。これらを結び付け噂が出来たのでしょう。審判者についてですが、おそらくロウランカーの妬みが出所だと推測されます」
「妬み……」
その言葉を聞いた時、信也はアークアカデミアに根付く暗い闇のようなものを感じ取った。
「この事件での犠牲者はハイランカーばかりです。普段は羨望の的でしょうが、裏では妬んでいる者も少なくないでしょう。ハイランクの優越に浸ったアークホルダーへの、これは審判だと、そうした願望の投影が名前の由来だと思われます」
ハイランクを妬む者たち。
それに信也は心当たりがあった。教室で人間の可能性を信じようと声をかけた信也だったがそれを否定したのはハイランクだけじゃない。
ランクAの信也を妬み、拒絶したのはランクが低い者も同じだ。
信也は暗い表情になった。
牧野先生が一回咳払いする。
「それで犯人、ジャッジメントの特徴について共通する証言があります」
「それは?」
信也は目を上げる。
「犯人ですが、突然現れた、そして襲撃に周りの誰も気付かなかった、というものです」
「突然? 気づかなかった?」
「はい。音も気配もなく、突然現れいきなり攻撃を受けたとか。襲撃時の現場にはアカデミアの女生徒がすぐ近くのベンチに座っていたそうですが、破壊の物音すら聞かなかったと証言しています。これは別の事件ですが、攻撃を受けても犯人を見なかったという被害者もいます」
「なるほど……。たいしたスニーキング能力、いや、隠ぺい力だな」
信也の中で疑問に固められた鍵ががちゃりと開いた。
いかに強力なランクB、ランクAの能力を持っていても能力を発動する前に不意打ちを受ければ倒される。奇襲が有効だとされる尤もな理由だ。
もしかしたら異能対決をして負けた者もいるかもしれないが、もしそうだとしても、ハイランカーのプライドは奇襲で負けたと言うだろう。
「犯人がどのようなアークを持っているかは依然不明ですが、姿を消せる点に加えてこの破壊力。ランクB以上は確実でしょう」
「根拠は?」
信也はそもそもランクの定義を知らない。なにを以てランクBと判断したのか聞いてみた。
「そうですね、いい機会ですからランクの説明をしておきましょうか」
それで牧野先生が察してくれたらしく、ランクの説明をしてくれた。
「ランクの定義ですが、ランクにはAからFまでのランクが設けられています。まずFからですが、これは能力的に実用性がないものをFとしています」
信也は不謹慎ながらなるほどと胸中で頷いた。ランクFは役立たずだと心無い人間が言うわけだ。
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