異能学園のアークホルダー
いったいなにが起きるんだ?
意図が分からないが言われたとおりにしてみる。そして、二人の人差し指がゆっくりと近づいていった。
(いったいなにが起きるんだ?)
信也は固唾を飲んで見守った。この指先同士がくっついた時なにが起こるのか。それはまるで未知との遭遇。この指がくっつけば、まだ見ぬ奇跡が起こるのだ!
二つの指先がゆっくりと、しかし確実に近づいていく。
そして、ついに指先がくっついた。
デデーン!
「おお! 光った!」
ピカ~!
二人の指先、そこからほのかな光が灯っていた。不思議な光が指先を包む。だが指先はまだ光っただけだ。これからさらになにが起こるのか。信也は期待しながら見つめ続ける。
だが、次がなかなか起こらない。
「…………」
「…………」
「…………」
「それで?」
「なにが?」
「ほかには?」
「…………」
聞くが姫宮は答えない。
「もしかしてだけど……」
「…………」
「……これだけ?」
「うん」
「え、これだけ!?」
「うわあああああああああああ!」
その瞬間、姫宮が反対方向に猛ダッシュで逃げていった!
「ごめん、ごめん姫宮! いや、べつになんていうか」
「いいよ! そうだよ! これだけだよ! 普通これからなにか起こると思うじゃん? でもこれだけだよ!」
姫宮はフェンス際まで走ると座り込んだ。
「私の異能(アーク)は自分と他人の人差し指をくっつけたら指先が小さく光る能力だよ~。役に立たないからランクFにされたんだよ~。うう~」
「そ、そうだったのか」
(アークには詳しくなかったけど、まさかそんな能力まであったのか)
信也も、まさか同じアークでもこれほどの差があるとは思わなかった。
背中を向けて座り込む姫宮に信也は近づいていった。
「なあ姫宮、元気出してくれよ。謝るからさ」
「ふん、どうして信也君が謝るのさ」
「すねるなよ」
表情は見えないがご機嫌ナナメなのが声から分かる。
「俺は良かったと思うぜ? ぽわ~ってなった時うわぁってなったもん」
「でもさ、でもさ、そんな能力がなんの役に立つっていうのさ」
「うーん……」
腕を組んで考えてみる。自分と他人の人差し指をくっつければ光る能力。これの使い道は果たしてあるのか。けれど、信也がその光を見て驚いたのは事実だ。
それで、思い付いたのを言ってみた。
「たとえばだけど、アイドルになったらファンとの握手会とかあるんだろ? その時に握手の代わりにしてみれば盛り上がるんじゃないか?」
さすがに厳しいか? そう不安が過る。
「そうか! その手があったか!」
「うお!」
そこで姫宮が勢いよく立ち上がる。同時にくるりと振り向いた。
「私のアークにそんな使い道があったとは! 姫宮一生の不覚ぅ!」
姫宮は拳をぎゅ~と握りながら悔しがっている。しかしそこにはさきほどまでの陰はまるでなかった。
「いや、なんかよく分からないけど、元気になってくれたようで嬉しいよ」
「ううん! 元気じゃないよ、超元気だよ! よーし、絶対にアイドルになってこの異能(アーク)でファンのみんなを驚かせてやるぞー!」
姫宮は「えい、えい、おー!」と片手を青空に振りかざしていた。
そんな彼女を見て、やっぱり姫宮は落ち込んでいるより明るい方がいいなと信也は思った。
「すごいね、信也君」
「ん、なにがだ?」
姫宮は青空を見上げている。落ち着いた雰囲気で話しかけてくる。
彼女の空気は、とても澄んでいた。
「諦めなければ道は開ける。自分を信じる心、人間の可能性」
そして、彼女は青空に向けていた顔を、信也へと向けた。
「ありがと。私、助かっちゃった」
穏やかな表情だった。彼女の言葉に、信也は小さく顔を横に振る。
「いいや。助けられたのは俺の方さ」
二人は見つめ合い、小さく笑った。
人のいない屋上、春の陽気、穏やかな風。
二人はしばらくここで話し合った。
友達同士の談笑を。
(いったいなにが起きるんだ?)
信也は固唾を飲んで見守った。この指先同士がくっついた時なにが起こるのか。それはまるで未知との遭遇。この指がくっつけば、まだ見ぬ奇跡が起こるのだ!
二つの指先がゆっくりと、しかし確実に近づいていく。
そして、ついに指先がくっついた。
デデーン!
「おお! 光った!」
ピカ~!
二人の指先、そこからほのかな光が灯っていた。不思議な光が指先を包む。だが指先はまだ光っただけだ。これからさらになにが起こるのか。信也は期待しながら見つめ続ける。
だが、次がなかなか起こらない。
「…………」
「…………」
「…………」
「それで?」
「なにが?」
「ほかには?」
「…………」
聞くが姫宮は答えない。
「もしかしてだけど……」
「…………」
「……これだけ?」
「うん」
「え、これだけ!?」
「うわあああああああああああ!」
その瞬間、姫宮が反対方向に猛ダッシュで逃げていった!
「ごめん、ごめん姫宮! いや、べつになんていうか」
「いいよ! そうだよ! これだけだよ! 普通これからなにか起こると思うじゃん? でもこれだけだよ!」
姫宮はフェンス際まで走ると座り込んだ。
「私の異能(アーク)は自分と他人の人差し指をくっつけたら指先が小さく光る能力だよ~。役に立たないからランクFにされたんだよ~。うう~」
「そ、そうだったのか」
(アークには詳しくなかったけど、まさかそんな能力まであったのか)
信也も、まさか同じアークでもこれほどの差があるとは思わなかった。
背中を向けて座り込む姫宮に信也は近づいていった。
「なあ姫宮、元気出してくれよ。謝るからさ」
「ふん、どうして信也君が謝るのさ」
「すねるなよ」
表情は見えないがご機嫌ナナメなのが声から分かる。
「俺は良かったと思うぜ? ぽわ~ってなった時うわぁってなったもん」
「でもさ、でもさ、そんな能力がなんの役に立つっていうのさ」
「うーん……」
腕を組んで考えてみる。自分と他人の人差し指をくっつければ光る能力。これの使い道は果たしてあるのか。けれど、信也がその光を見て驚いたのは事実だ。
それで、思い付いたのを言ってみた。
「たとえばだけど、アイドルになったらファンとの握手会とかあるんだろ? その時に握手の代わりにしてみれば盛り上がるんじゃないか?」
さすがに厳しいか? そう不安が過る。
「そうか! その手があったか!」
「うお!」
そこで姫宮が勢いよく立ち上がる。同時にくるりと振り向いた。
「私のアークにそんな使い道があったとは! 姫宮一生の不覚ぅ!」
姫宮は拳をぎゅ~と握りながら悔しがっている。しかしそこにはさきほどまでの陰はまるでなかった。
「いや、なんかよく分からないけど、元気になってくれたようで嬉しいよ」
「ううん! 元気じゃないよ、超元気だよ! よーし、絶対にアイドルになってこの異能(アーク)でファンのみんなを驚かせてやるぞー!」
姫宮は「えい、えい、おー!」と片手を青空に振りかざしていた。
そんな彼女を見て、やっぱり姫宮は落ち込んでいるより明るい方がいいなと信也は思った。
「すごいね、信也君」
「ん、なにがだ?」
姫宮は青空を見上げている。落ち着いた雰囲気で話しかけてくる。
彼女の空気は、とても澄んでいた。
「諦めなければ道は開ける。自分を信じる心、人間の可能性」
そして、彼女は青空に向けていた顔を、信也へと向けた。
「ありがと。私、助かっちゃった」
穏やかな表情だった。彼女の言葉に、信也は小さく顔を横に振る。
「いいや。助けられたのは俺の方さ」
二人は見つめ合い、小さく笑った。
人のいない屋上、春の陽気、穏やかな風。
二人はしばらくここで話し合った。
友達同士の談笑を。
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