異能学園のアークホルダー
お前、やっぱりイレギュラーだな
「だから、もしみんなもおかしいと思っているなら俺と一緒に――」
「お前、やっぱりイレギュラーだな」
「なに?」
そこへさきほどの集団から声がかけられた。一人が信也に近づいてくる。その態度には余裕があった。
「俺よりも上のランクの人間にこんなこと言うのは躊躇われるんだけどさぁ」
男は続ける。
「この学園ではランクがすべてなんだよ。当然だろ? だってランクは固定制、努力しても成長しない。なのに可能性なんてあるはずないじゃないか」
「そんなことないって!」
「じゃあどうすればいいんだ? ランクアップは第一から第三アークアカデミアも研究してるがどこも不可能だって言ってるぜ?」
彼の言葉に「そうだそうだ」と他の男子が続く。
「それに可能性って、お前はランクアップの方法を知ってるのかよ?」
「いや……」
「ほら知らない」
男子はこれ見よがしに両手を上げて、信也を嘲るように見つめてきた。
「お前の言ってる可能性なんて、しょせん口先じゃねえか」
「それは……」
「消えろよイレギュラー、目障りなんだよ」
そう言って男子はグループに戻っていった。仲間たちと一緒に変わり者の信也をネタに笑っている。
言い返せなかった。どうすればいいと聞かれた時。それが負い目となって視線が下がる。表情も少しだけ暗くなった。
「確かに、どうすればいいのかなんて分からない。でも、諦めたらそこで終わりなんだ! なあ、 他のランクの人はどうなんだ? どう思ってるんだよ。信じようぜ、自分の可能性を!」
再度呼び掛ける。けれどクラスの雰囲気は暗く、信也の声が届いているように見えない。
そこへ、一人が元気よく手を上げた。
「私! 信也君の言うこと、素敵だと思うな!」
「姫宮」
胡桃色の髪を小さく揺らしながら姫宮は元気いっぱいだった。
「どんな人でも、私でも、夢は諦めなければ叶うんだって。そう思うこと、いけないことだなんて思えないから。ね!?」
姫宮の明るい眼差しは信也の心も明るくしてくれた。
「ありがとう、姫宮」
「ううん、私はなんにもしてないよ」
彼女の笑顔に信也も小さな笑みで応えてから、視線をみなへと向けた。
「他のみんなはどうだ? ランクなんて関係ない。自分を信じることは誰だって出来るはずだ!」
姫宮からの後押しを受けて信也の声が飛ぶ。思いを込めて呼び掛ける。
「黙れよ……」
「え」
けれど、そんな信也をこころよく思わない人もいた。
「お前みたいなランクAの人間に、僕たちの気持ちなんて分かるはずないだろう!」
それはさきほどまでいじめられていた少年だった。まさか助けたはずの少年から言われるとは思っていなかった信也は言葉を失った。
「…………」
改めてクラスを見渡してみる。さきほどのグループのように変わり者のイレギュラーとしてにやにや笑っている者。今みたいに高ランクの信也を妬む者。
さまざまな暗い感情が信也を見つめている。
信也は視線を落とし、背を向けた。
「信也君!」
姫宮の声が聞こえるが、信也はそのまま教室から出て行った。
*
「はあ~、難しいなぁ……」
屋上から見上げる空は青い。ゆっくりと流れる雲は白い。
教室を後にした信也は屋上のフェンスにもたれながら空を見上げていた。信也以外誰もいない屋上に風が吹く。
信也はため息を吐いた。人間の可能性。それを信じて行動したものの結果はこのザマだ。憧れには程遠い。
――あの男は、周りからどれだけ否定されようと、一度も落ち込まなかったというのに。
「俺なんかとは違う、か」
弱々しい声が風に消える。情けない自分が嫌になった。
「信也くーん!」
「姫宮?」
屋上の扉が開く音。同時に青天にまで届くほどの大声が響いた。
「姫宮、どうしてこんなとろこに」
「お前、やっぱりイレギュラーだな」
「なに?」
そこへさきほどの集団から声がかけられた。一人が信也に近づいてくる。その態度には余裕があった。
「俺よりも上のランクの人間にこんなこと言うのは躊躇われるんだけどさぁ」
男は続ける。
「この学園ではランクがすべてなんだよ。当然だろ? だってランクは固定制、努力しても成長しない。なのに可能性なんてあるはずないじゃないか」
「そんなことないって!」
「じゃあどうすればいいんだ? ランクアップは第一から第三アークアカデミアも研究してるがどこも不可能だって言ってるぜ?」
彼の言葉に「そうだそうだ」と他の男子が続く。
「それに可能性って、お前はランクアップの方法を知ってるのかよ?」
「いや……」
「ほら知らない」
男子はこれ見よがしに両手を上げて、信也を嘲るように見つめてきた。
「お前の言ってる可能性なんて、しょせん口先じゃねえか」
「それは……」
「消えろよイレギュラー、目障りなんだよ」
そう言って男子はグループに戻っていった。仲間たちと一緒に変わり者の信也をネタに笑っている。
言い返せなかった。どうすればいいと聞かれた時。それが負い目となって視線が下がる。表情も少しだけ暗くなった。
「確かに、どうすればいいのかなんて分からない。でも、諦めたらそこで終わりなんだ! なあ、 他のランクの人はどうなんだ? どう思ってるんだよ。信じようぜ、自分の可能性を!」
再度呼び掛ける。けれどクラスの雰囲気は暗く、信也の声が届いているように見えない。
そこへ、一人が元気よく手を上げた。
「私! 信也君の言うこと、素敵だと思うな!」
「姫宮」
胡桃色の髪を小さく揺らしながら姫宮は元気いっぱいだった。
「どんな人でも、私でも、夢は諦めなければ叶うんだって。そう思うこと、いけないことだなんて思えないから。ね!?」
姫宮の明るい眼差しは信也の心も明るくしてくれた。
「ありがとう、姫宮」
「ううん、私はなんにもしてないよ」
彼女の笑顔に信也も小さな笑みで応えてから、視線をみなへと向けた。
「他のみんなはどうだ? ランクなんて関係ない。自分を信じることは誰だって出来るはずだ!」
姫宮からの後押しを受けて信也の声が飛ぶ。思いを込めて呼び掛ける。
「黙れよ……」
「え」
けれど、そんな信也をこころよく思わない人もいた。
「お前みたいなランクAの人間に、僕たちの気持ちなんて分かるはずないだろう!」
それはさきほどまでいじめられていた少年だった。まさか助けたはずの少年から言われるとは思っていなかった信也は言葉を失った。
「…………」
改めてクラスを見渡してみる。さきほどのグループのように変わり者のイレギュラーとしてにやにや笑っている者。今みたいに高ランクの信也を妬む者。
さまざまな暗い感情が信也を見つめている。
信也は視線を落とし、背を向けた。
「信也君!」
姫宮の声が聞こえるが、信也はそのまま教室から出て行った。
*
「はあ~、難しいなぁ……」
屋上から見上げる空は青い。ゆっくりと流れる雲は白い。
教室を後にした信也は屋上のフェンスにもたれながら空を見上げていた。信也以外誰もいない屋上に風が吹く。
信也はため息を吐いた。人間の可能性。それを信じて行動したものの結果はこのザマだ。憧れには程遠い。
――あの男は、周りからどれだけ否定されようと、一度も落ち込まなかったというのに。
「俺なんかとは違う、か」
弱々しい声が風に消える。情けない自分が嫌になった。
「信也くーん!」
「姫宮?」
屋上の扉が開く音。同時に青天にまで届くほどの大声が響いた。
「姫宮、どうしてこんなとろこに」
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