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異能学園のアークホルダー

奏せいや

入学生の諸君、まずは入学おめでとう

「はあ! はあ! 姫宮、思ったより足速いよな」

 信也は体育館の前で両手を膝に置き大きく息をする。体が熱い、というか痛い。正門からここまで猛ダッシュを続けてきたのだから無理もない。

 しかし同じ距離を走っているはずの姫宮はピンピンしていた。

「そうだよ、こう見えても鍛えてるからね~」 

「鍛えてる?」

「さあ行こう行こう!」

 陽気に歩き出す姫宮に信也もやれやれと体育館へと入る。

 アークアカデミアは最先端な学園ということもありそのすべてが最新だ。

 それは体育館もそうであり、広いフローリングに二階には階段状に並べられた椅子、コンサートも行える巨大なホールだった。

 新入生は一階に並び、上級生は二階の椅子に腰かけている。そろそろ入学式開始の時間だ。

「なんとか間に合ったな」

「ふぅー、わたしぎりぎりセーフかも」

「神崎信也さん」

 そこへ声が掛けられた。凛とした声色は女性のもので、振り向けばそこには女性の教師がいた。

「えっと確か……」

「あなたたちのクラス教師を担任する牧野萌まきのもえです。名前は呼ばなくて結構です、嫌いですので」

 そう言う女性は白のスーツとタイトスカートに身を包んだ二十代半ば頃の女性だった。

 ビシッとした立ち姿はバリバリのキャリアウーマンを思わせる。黒い髪は短めで丸い眼鏡の奥では眼光がにぶく光っていた。

「時刻ぎりぎりですね、今までなにをしていたのですか。説明してください」

「え、えっと~……」

 あまりの視線に目を泳がすが牧野先生の眼光はするどさを増すばかりだ。

「あなたたちっていうことは私の担任でもあるってことですか?」

「そういうことです」

「やったー! わたし信也君と同じクラスだ、同じ同じ~」

「あ、ああ。そうだな」

 隣で無邪気に喜ぶ姫宮がなんとも可愛らしいが今は止めて欲しい。叱られている最中だ。

「神崎信也さん」

「は、はいッ」

 再びするどい声で呼ばれ背筋を伸ばす。

「質問に答えてください。あなたは今年の新入生代表挨拶を行なう重要な人物です。それがさきほどここまでいたにも関わらず、突然走り出し今までなにをしていたのですか」

「あー……」

 まずい、牧野先生の無言の圧力が増している。こうなったら仕方がない、信也は覚悟を決めた。正直に言おう、同じ人間、言えば通じるはずだ!

(可能性を信じるんだ俺!)

「人間の可能性、それを否定する者を正していました!」

 言った!

「言っている意味が不明です」

 通じなかった!

「いいですか、これ以上勝手な行動をされては困ります。以後気を付けてください」

「すいません……」

 信也は頭を下げ項垂れた。

「すごいよすごいよ、信也君代表挨拶なんてさすがだな~さすがだな~」

 隣では姫宮が呑気に騒いでいた。

 それから入学式は始まった。新たな生活の始まり、期待と夢の詰まった晴れ舞台。新入生たちの顔色は浮ついていた。

 夢のアークアカデミア、その学校生活がいよいよ始まるのだ。

 理事長は四十代ほどの男性だった。眼鏡をかけ柔和な笑顔で新入生に歓迎の言葉を贈る。

 さらには吹奏楽部の演奏では異能アークを用いて音に色がついて見えるという神秘的な音色を聞かせてもらった。

 ほかでは絶対に出来ない体験だ、生徒たちは初めてみるアークというものに興奮していた。

 ここは夢と希望溢れるアークアカデミア。ここから新たな人生の一歩が始まる。

 しかし、そんな晴れやかな雰囲気が変わったのは生徒会長、上級生あいさつの時だった。

 檀上に上がるのは生徒会の証である白い制服。海軍服を思わせる着こなしで入学生の前に現れたのは黒の長髪の女性だった。

 マイクを正面に彼らを睥睨する目は笑っていなかった。

「入学生の諸君、まずは入学おめでとう。君たちはここにいる時点で険しい門を抜けた優秀な者たちだ。そんな君たちをアークアカデミア並びに私たちは歓迎しよう」

 言葉とは裏腹に、彼女が本心ではそう思っていないことはここにいる全員が分かっていた。厳しい空気が物語っている。

「君たちも知っての通り、アークアカデミアでは生徒全員にアークが授けられる。アークはここでしか得ることは出来ない。それはアーク)開発技術がアークアカデミアにしかないのと、なによりアーク開発の適した年齢がちょうど私たち思春期の子供だからだ。それは大人になる前の、可能性に満ちた時期だから、というのももしかしたらあるかもしれない」

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