異能学園のアークホルダー
そんなことないさ
全身が光に包まれ破裂する。そこにいたのは青のジャケットを羽織った信也だった。
いくつもの戦場を渡り歩いた兵士の如き眼光。信也は両手に握られた二つの銃器を田口の足元に向け発砲した。
「うわああ!」
これでは近づけない。
「くそがぁ!」
田口は腕を振るうと電流が地面をえぐり、破片が信也目掛け飛んできた。コンクリートの凶弾がいくつも襲いかかる。
「ソードマスター!」
だが三度信也の姿が変わる。騎士を思わせる赤の甲冑。機動性を優先させたそれは胴体と前腕、すね当てしか鎧を纏っておらず、手甲には一本の剣が握られていた。
歴戦の戦士を思わせる風采で敵の攻撃を睨みつける。
迫りくるいくつもの破片。それを、飛燕の早業で切り裂いた。
「なに!?」
「エレメント・ロード!」
そして、最初のエレメント・ロードに戻る。
「エアー」
信也の言葉に合わせて田口の下から強風が吹きつける。それは竜巻とも取れる風力で田口の巨体を持ち上げた。
風に舞う木葉と同じ。もうどこが地面か空かも分からないだろう。
田口は体の自由を奪われ、信也は止めを刺すべく指先を空へと向ける。
「サンダー」
田口の頭上、空中でバチバチとスパークが発生している。それを見たのか、田口が叫ぶ。
「ま、待ってくれー!」
己のアークの意趣返しと言わんばかりに上空には暗雲が立ちこみ始めている。それで田口は叫ぶが、
「いっぺん痺れてみろ、そして人間の可能性を噛み締めるんだな」
信也は上空に向けた指をパチンと鳴らし、天から勝利の光を落とした。
「ぎゃああああ!」
敗者は光に焼かれ黒焦げパンチパーマに変身していった。
「ほ、ほげえ~」
「田口ぃイイイイイ!」
「大丈夫か田口!?」
地面に横になる田口に仲間の二人が駆け寄っていく。二人は彼を抱えここから立ち去った。
「ふぅ、終わったみたいだな」
そう言って信也は変身を解き元の学生服に戻っていた。学生カバンも元通り持っている。
「す、すごいぃいいい!」
「うわ!」
とりあえず一件落着。しかし一部始終を見ていた姫宮のテンションは収まることなくサンタを見つけた子供のようにはしゃいでいた。
「あの、まずは助けてくれてありがとうございます! 信也君すごいね! 私ランクAなんてはじめて見ましたよ! あんなに強そうな人をグサ、グサ、バシュって倒しちゃって」
「いや、礼はいいよ。助けたのは俺にも譲れないとこがあったからさ。……ていうか、俺そんな倒し方したっけ」
姫宮の屈託のない笑顔に信也は不思議そうに頭を掻いている。けれど姫宮は気にしない。助けてくれたランクAにすっかり夢中だ。
「すごいな~すごいな~。やっぱりランクAの人は私なんかとは違うんだな~」
姫宮は瞳を星マークにしながらさきほどの出来事を思い出す。
電流を操るランクCのアークもすごかったが、なによりもすさまじいのはランクAアーク。
平行世界に干渉する能力だ。そこから自由に無限の自分を選べるならば出来ないことはないだろう。
それこそ無限の可能性があるのだから。
「そんなことないさ」
「へえ?」
だが信也は否定した。まさかそんなことを言われると思っていなかった姫宮はきょとんとしてしまう。
「え、どうして?」
ランクA、平行世界系の能力は強力だ。汎用性もある。姫宮は小首を傾げるが、信也は苦笑した。
「さっき俺があいつを倒せたのは正確には俺の力じゃない。俺とは違って、必死に頑張って、懸命に努力して、ようやくあの力を得た別の俺だ。俺はなにもしていない。ただ人の力を借りて勝っただけの俺はすごくもなんともないよ。正直言うと、このアークはあんまり好きじゃないんだ」
「えええ!? そんなにすごいのに?」
「そんなだからさ」
驚く姫宮とは対照的に信也は少しだけ残念そうな顔をしていた。それがますます姫宮には分からない。
「うーん、たしかに努力なしで手に入れた力かもしれないけど、すごいことに変わりはないと思うんだけどなー」
「なんだろ、気持ちの問題かな。すごいはすごいんだろうけどさ、俺が目指してた『特別』とはちょっと違ったから」
「信也君の特別?」
「ああ」
いくつもの戦場を渡り歩いた兵士の如き眼光。信也は両手に握られた二つの銃器を田口の足元に向け発砲した。
「うわああ!」
これでは近づけない。
「くそがぁ!」
田口は腕を振るうと電流が地面をえぐり、破片が信也目掛け飛んできた。コンクリートの凶弾がいくつも襲いかかる。
「ソードマスター!」
だが三度信也の姿が変わる。騎士を思わせる赤の甲冑。機動性を優先させたそれは胴体と前腕、すね当てしか鎧を纏っておらず、手甲には一本の剣が握られていた。
歴戦の戦士を思わせる風采で敵の攻撃を睨みつける。
迫りくるいくつもの破片。それを、飛燕の早業で切り裂いた。
「なに!?」
「エレメント・ロード!」
そして、最初のエレメント・ロードに戻る。
「エアー」
信也の言葉に合わせて田口の下から強風が吹きつける。それは竜巻とも取れる風力で田口の巨体を持ち上げた。
風に舞う木葉と同じ。もうどこが地面か空かも分からないだろう。
田口は体の自由を奪われ、信也は止めを刺すべく指先を空へと向ける。
「サンダー」
田口の頭上、空中でバチバチとスパークが発生している。それを見たのか、田口が叫ぶ。
「ま、待ってくれー!」
己のアークの意趣返しと言わんばかりに上空には暗雲が立ちこみ始めている。それで田口は叫ぶが、
「いっぺん痺れてみろ、そして人間の可能性を噛み締めるんだな」
信也は上空に向けた指をパチンと鳴らし、天から勝利の光を落とした。
「ぎゃああああ!」
敗者は光に焼かれ黒焦げパンチパーマに変身していった。
「ほ、ほげえ~」
「田口ぃイイイイイ!」
「大丈夫か田口!?」
地面に横になる田口に仲間の二人が駆け寄っていく。二人は彼を抱えここから立ち去った。
「ふぅ、終わったみたいだな」
そう言って信也は変身を解き元の学生服に戻っていた。学生カバンも元通り持っている。
「す、すごいぃいいい!」
「うわ!」
とりあえず一件落着。しかし一部始終を見ていた姫宮のテンションは収まることなくサンタを見つけた子供のようにはしゃいでいた。
「あの、まずは助けてくれてありがとうございます! 信也君すごいね! 私ランクAなんてはじめて見ましたよ! あんなに強そうな人をグサ、グサ、バシュって倒しちゃって」
「いや、礼はいいよ。助けたのは俺にも譲れないとこがあったからさ。……ていうか、俺そんな倒し方したっけ」
姫宮の屈託のない笑顔に信也は不思議そうに頭を掻いている。けれど姫宮は気にしない。助けてくれたランクAにすっかり夢中だ。
「すごいな~すごいな~。やっぱりランクAの人は私なんかとは違うんだな~」
姫宮は瞳を星マークにしながらさきほどの出来事を思い出す。
電流を操るランクCのアークもすごかったが、なによりもすさまじいのはランクAアーク。
平行世界に干渉する能力だ。そこから自由に無限の自分を選べるならば出来ないことはないだろう。
それこそ無限の可能性があるのだから。
「そんなことないさ」
「へえ?」
だが信也は否定した。まさかそんなことを言われると思っていなかった姫宮はきょとんとしてしまう。
「え、どうして?」
ランクA、平行世界系の能力は強力だ。汎用性もある。姫宮は小首を傾げるが、信也は苦笑した。
「さっき俺があいつを倒せたのは正確には俺の力じゃない。俺とは違って、必死に頑張って、懸命に努力して、ようやくあの力を得た別の俺だ。俺はなにもしていない。ただ人の力を借りて勝っただけの俺はすごくもなんともないよ。正直言うと、このアークはあんまり好きじゃないんだ」
「えええ!? そんなにすごいのに?」
「そんなだからさ」
驚く姫宮とは対照的に信也は少しだけ残念そうな顔をしていた。それがますます姫宮には分からない。
「うーん、たしかに努力なしで手に入れた力かもしれないけど、すごいことに変わりはないと思うんだけどなー」
「なんだろ、気持ちの問題かな。すごいはすごいんだろうけどさ、俺が目指してた『特別』とはちょっと違ったから」
「信也君の特別?」
「ああ」
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