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異能学園のアークホルダー

奏せいや

自分を信じる心、人間の可能性。俺はそれを証明してみせる!

「自分で、道を切り開く力……」

 力強い少年の言葉に姫宮は感じ入った。その言葉はランクFの彼女を勇気付けてくれるものだったから。

 自分でも前に進めるんだと、初めて人から言われたから。

「なぁに言ってんだ! 出来るわけねえだろそんなこと! そこまで言うなら見せてやるよ、現実ってやつをな!」

 そこで田口は大声を出すと構えた。少年は距離を取る。緊張が一気に空気を変えた。姫宮も感じる、危険だと。

「これが俺のアークだ! 俺はランクCアーク『電竜双頭ダブル・サンダーヘッド』を発動!」

 そう言うと田口の両腕から稲妻が迸った。電流はスクリューのように腕に巻き付き回転している。

 雷鳴を轟かし渦から漏れた電流は容赦なくアスファルトの地面を破壊していった。破片が辺りに散っていく。

「きゃああ! 危ないんですけどぉ! あわわ早く逃げないと私! あ、駄目だ、足が震えて……」

 そのあまりの迫力に姫宮の足はがくがくと震えていた。気持ちはここから逃げたいと思っているのに体が動いてくれない。

 破壊する、余波だけで田口の周りはボロボロだ。塗装された地面はえぐられて、耳を窮する轟音は止まらない。

 だが、それも余技に過ぎない。彼は立っているだけ、両腕に巻き付く龍を思わせる電流が持つ力は想像を絶する。

「これが俺のアーク『電竜双頭ダブル・サンダーヘッド』だ。効果は自身の両腕に電流を発生させる。ランクはCだ」

 己のアーク、それを田口は誇示していた。

「ランクC、すごい! 中の上はありますよ!」

 アークのランクはピラミッド式だ。上のランクにいけばいくほど数は少なくなる。

 その中でランクCはランクの中では中間ではあるが、分布から見れば十分上位に入る。

 田口はランクCという恵まれたアークに酔い痴れる。他者とは違う、誰しもが憧れる特別となった自分。

 己こそは特別だと彼は優越感からくる態度で言ってくる。

「格下はもとより同格にだって俺を倒せるアークはそうそうねえよ、残念だったなあ。これが生まれ持った才能、現実ってやつさ。分かったか、どうあってもてめえら低ランクじゃ無理なのさ!」

「無理だよこんなの、私のアークと全然違う」

 初めて目にしたランクCアークを見て姫宮は怯えた。無理だ、勝てない、勝てるわけがない。

 屈してしまうのだ、現実が壁となって塞がってくる。

 姫宮は諦めた。だからこそ、その目は田口ではなく自分と同じくらいの少年を見た。

「そこの君! 私のことはいいから逃げて!」

 怯えて足の動かない自分ならともかく、せめて君だけでもと姫宮は必死に声をかける。

「いや、俺は逃げない」

 なのに、彼は動かなかった。相変わらずするどい視線で田口を見ている。

「逃げる気がない? なら!」

 そこで閃く。姫宮は少年に向けガッツポーズした。

「だったら一緒に謝ろう! 私こう見えてもダイナミックスペシャルデラックスボム土下座の使い手なんだよ!」

「どんな土下座だよ。いいから、確かにすごい力だと思うけど、俺は絶対に逃げない、諦めない」

 逃げない、謝らない。少年は諦めていなかった。姫宮は見ただけで諦めたのに。

 それだけですごいと思う。これだけのものを目の当たりにして、それでも心が屈しないだけで。

 それでも、出来ることと諦めないことは違う。どんなに諦めなくたって、出来ないことはあるだろう。

「でも、無理だよ。相手はランクCだよ? 逃げようよ謝ろうよ。私たちには無理だって~」

「無理じゃない!」

「え?」

 そんな彼女の弱音を弾くように、彼は、力強い言葉で言うのだ。

「どんな時でも、諦めなければ道は開ける!」

「君は……」

「自分を信じる心、人間の可能性。俺はそれを証明してみせる!」

 その強い意思。どんな不利な状況でも諦めない固い信念。

 諦めなければ道は切り開けるのだと、それが自分には出来ると信じている彼の横顔。

 この時から、姫宮詩音は彼に憧れていたのかもしれない。

「ねえ、君の名前は?」

 知りたい。彼のことを。強敵を前にして、困難な現実を前にして、それでもなお諦めない君。

 目の前にいる少年を、姫宮は知りたいと思った。

「俺の名前は――」

 彼女の問いに田口を見ていた彼が振り向く。

(なんて……)

 その顔、見た瞬間に姫宮は思った。

(まっすぐな目なんだろう……)

 真っ直ぐな瞳で自分を見つめる少年は、彼女には輝いて見えたから。

「信也。神崎信也かんざきしんや

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