終末デイズ〜終末まで残り24時間〜

HaL

後藤 慎二の章:6

薄暗い部屋であの少女と二人っきりになってからすでに30分が経った。この時間ずっと無言で過ごしてしまっている。
もちろんそれは俺が童貞だからリードをすることができないのもあるが・・・それ以上に彼女の過去を知ってしまったことが俺の心の中の何かを抑制させていたのだ。
「・・・・・・・・・」
「あ、あの〜・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「「・・・・・・・・・」」
気、気まずい。
え?なんで?
なんでこの子こんなにも無口なの?
カウンターの男にはあんなにも優しくしていたのに二人っきりになった瞬間急にこれだよ?
何?俺って嫌われてるの?
・・・・・・いや、嫌って同然か。
俺は。いや、俺たちはこの子に男の恐怖トラウマを植え付けてしまったのだから。唯一優しくしてくれるあの男でさえも彼女を売るのだから。
だからこそ気まずい。
彼女はこの部屋の意味を知っている。
妖しく照らすショッキングピンクの照明も、体に熱を与える甘いお香の匂いも、無駄に大きいこのベッドも。
その全ての意味を知っているのだから。
そんなことを考えていると少女は急に白いワンピースを脱いだのだ。勿論それは彼女が唯一着ていた服でそれを脱いだということは。当然何も着ていないというわけで。
「っっっ!!!??」
勿論俺は困惑した。
だって急に脱ぎ始めるんだから。
そしてそんな俺をよそに少女はベッドに仰向けに寝て「来い」と言わんばかりの目で僕を見据えて、両腕を僕に伸ばした。その貫禄は完全に娼婦のそれだ。
「ぁぁぁっっっ!!??」
困惑は混乱へと変わり、俺はすぐに少女が着ていたワンピースを鷲掴みにして少女にぶん投げた。
「ば、ばかやろう!女の子がそんなことをしちゃいけないだろうが!?」
ついつい説教をしてしまう俺をワンピースを被った少女は首を傾げながら見つめた。
「ぁ、ぁかやおぉう・・・ぉ、ぉ、ぉんにぁの・・・?」
その言葉は拙い。まるで幼子の・・・。
「ま、待てよ。まさか・・・」
そこで俺は一つの結論にたどり着く。
彼女が俺とあの男に言葉を交わさなかった理由。
彼女は決して俺達を。
男共を嫌っていたわけではなかったのだ。
「お前、喋れないのか?」
彼女はただただ首をかしげることしか出来なかった。

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