理不尽な転生にもめげずに今日もせっせと奴隷を作って世界を救います

kIllk

天罰

 時間が止まっている様だった。そこには一切のものがなかった。正しく“無”この言葉が似合う場所であった。
 (俺は、なぜこんな場所に…)
 頭がボーッとしている。頑張って思い出してみる。そして見つける。最愛の人、唯一信頼できた人からの裏切り。言い様がない脱力感に見舞われる。
 「死んだのか…俺…」
 全てを理解し、現実を受け入れようとしていた。その時、俺の背後に気配があることに気づいた。
 「お!や〜っと気づいてくれたか!」
 そこには剽軽な口振り通りの身なりをした男が立っていた。
 「お名前をお聞きしても?」
 こんな所に居るからには只者じゃない、刀馬は出来る限り下手に出ようと努めた。
 「よしてよぉ〜!そんなに謙らなくてもぉ〜。僕ら似た者同士じゃないかぁ〜!」
 そう言いながら男は指を鳴らした。すると、何処からともなく机と椅子が出現した。
 「そっか、前に居た世界は魔法無しの世界だったもんねぇ〜紅茶でいい?」
 「コーヒーでお願いします」
 男はまた指を鳴らし、カップとコーヒーを用意した。
 「どーぞー。あ、名前聞きたいんだっけ?そうだなぁ〜あえて言うなら神かなぁ?」
 ふざけてるのかこの人…と刀馬は思いつつも不思議ではないと思えてしまった。
 自分は確かに死んだ。そして誰かとこう話している。つまり、死んだ自分と話せるなんて能力を持つ生き物は刀馬が思いつく限り神に等しい力を持つ生き物だけだ。
 「まぁ、神って言っても昔はいっぱい居たんだけどねぇ〜」
 カップの中身をスプーンで回しながら神と名乗る男はこう言った。
 「ぜぇ〜〜んぶ、僕が殺しちゃいましたとさ!」
 刀馬は全身に寒気が走った。自分は結衣の言う通り、無慈悲なことを繰り返していた。その裏に優しさはなく、蹂躙する快楽に埋もれていた。きっと、この神は罰を与えに来たのだ。神さえ屠るこの神に…
 「だからねぇ〜色々大変なのよ、僕1人で君みたいな悪い子に処罰しなきゃいけないし〜」
 先程から震えが止まらない刀馬を見て神はニヤける。
 「いいねぇ〜その表情…たまらないよぉ〜そんな君には特別にチャンスを与えちゃいま〜す」
 ピースサインをしながら神は言った
 「汝に罪あり。故に、汝に罰を与える。世界を救ってこい」
 すると、刀馬の座っていた椅子の下の時空が歪み始めた。
 「救い方はお任せするね!あ、向こうで死んでも1-1からやり直しだからね!逃げちゃダメだよん!じゃあまたね〜」
 手を振りながら意味のわからないことを言う神が遠のいていく…体が落ちていく…どこか知らない世界へと…


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