NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

激しく補助席希望

第104話 #4 『見よ、勇者は帰る』




深夜のファステ。



 ─ファステの街だけでは無いのだろうが、皆人々は気が動転し1つの所に集まって身を寄せていた。


 変わってしまった夜空を眺めて。


 勇者一行はとりあえず大魔道飯店に行くと、そこに街の色々な人が集まっていて立ち話をしていた。

「あ!!大将!!勇者のあんちゃん達ですぜ!」

 そう声をかけられミンギンジャンは店から飛び出してきた。

「おぉうトンマァ!!なんだってんだこの騒ぎは!まさかとは思うがお前らの仕業じゃねぇだろうな??」

「ミンギンジャン!俺らじゃねぇよ!!…まぁ、もしかしたら俺に絡んだ事かもしれねーけどさぁ…」

「なにぃ?」

「店主!衛兵長は来ているか!?」

 カルガモットが身を乗り出して話す。

「おう、中にいるよ。今街の年寄り連中も揃って話し合いの真っ最中だ。」

「よし!我々も参加するぞ!」


「「「おう!!」」」

 勇者達はミンギンジャンに招かれて店の中に入った。




─ ─ ─ ─


 店内には数人がテーブルに座り、その周りをファステの住人達が立ち聞きで話し合いに参加していた。


「グジュ、ガグガジュクゴブ」

 喫茶店『スケアガーゴイル』のマスターが厨房から出てきてお茶を準備し出す。

「マスター!?来てらしたんですか?」

「ググ。ブブシュ」

「はい、手伝います!」

「あ!私も手伝います!!」

 アンジェラとマリーナがお茶出しを手伝いに行く。

 それを見てミンギンジャンが話を切り出す。

「えーっと大体の主要メンバーは揃ったな?それじゃまず意見交換としようか。レガシィから頼む。」


 そう声をかけられ衛兵長が話始める。

「えー、ゴホン。衛兵長のレガシィだ。今回の騒動についてだが現状では街の中に大きな被害は発生していない。驚いた住人が転んだりして怪我した者が数人居るが、それ以外は現在確認中である。」


 衛兵長レガシィは、良くカルガモットと巡回警備をしていた人物だ。勇者もその顔を見て少しだけ馴染みがあった。

「次、ファーラ!」

「警備長のファーラである。現在、街の周辺に生息するモンスターの動きは特に活発化するなどの報告は受けていない。当面に関しては入口の警備ををもっと強化する予定だ」

 ファーラは以前、ハックが上手く丸め込ませて勇者を身分証会せずに街から通す時に立ち会った男だ。…そのおかげで勇者を見かける度に高官と勘違いして会釈してくるようになってしまったが。

「じゃあ最後にメシル」

「冒険者ギルドファステ支部長のメシルである。ギルド本部からも緊急のDMやどこか別の支部で異常があった等の報告は無いな。ま、当面は冒険者にも厳戒態勢でクエストに当たるように通達は出している」

 勇者はこの人にはほとんど面識は無かった。『職業が勇者』だと言う理由で冒険者ギルドには全く用の無い勇者にとっては仕方の無い事だった。

「ふぅむ。今の所はなにも無し、か。分かった。誰か町長の爺さんに俺らで何とかするからって伝えといてくれ。」




「なぁハック。ファステの町長ってどんな人だ?俺会ったことないんだけど…」

「あぁ、ファステの町長シバルさんは寝たきりの御老人だ。直接家に行く以外にはほとんどの者が面識無いのでは無いか?私もこの街に引っ越してきた時に挨拶してそれきりだな。」

「ほぇ〜なるほど。」


「……おいトンマァ!!」

「な、なんだよ?」ビクッ

 ミンギンジャンに急に話しかけられてビックリする勇者。


「さっきこの事態に何か知ってる風な話してなかったか?知ってるなら皆に教えてくれ。」

「え!え!?」


 その場にいた全員の視線が勇者に集まる。



 シーン…


「いや…えぇっとだなぁ…うーん…」

「ほらさっさとしろ!」



 勇者はしばらく腕を組んで頭を捻らせたが、上手く説明する方法が思い浮かばなかった。

「しゃーねぇなぁ。話すけど、『ちゃんと信じてくれよ?』」


「「「うん??」」」









「俺の名前は勇者○○。…『元プレイヤー』だ」

「「「「「!?!?」」」」」



 その場にいた一同は騒然とした。そしてそれは勇者のパーティーメンバーも一緒だった。

「勇者殿!!良いのかそれを話しても!!」

「ハック、説明するならこれを話すしかない。」


「しかし…」

「で、アンタら俺の話を信じられるか??」

「「「………。」」」

 皆は『はぁ?』と言う表情をしている。


「…トンマ。本名を言ってみろ。」

「へ?」

「それで通じる。」

「……あぁ、そう言う事。」



 勇者はすぅっと息を吸い込み、大きな声で名乗った。

「俺の名前はぁ!\\ビィィィィ//だぁ!!」


「「「うぉ!?」」」



 \テテーン/  本ゲームでは、個人情報保護法に則りプレイヤーの個人情報を収集していません、本名、生年月日、IDに関わる発言ないし行動、DMは送信されません。




 突然のブザー音とゲーム内アナウンス。

 集まった皆は目を見開き、勇者を見つめる。



「…良く知ってたな?ミンギンジャン。」

「バァカ野郎。お前初めてウチの店に来た時にそんな感じでのたうち回ってただろ?それで薄々は気付いてただけだ。」


 レガシィがカルガモットに聞く。

「『元』領主殿、まさかこの偽りの勇者を名乗る男が言ってるのは本当の事なのか?」

「その通りだ。最初は私も信じられなかったが、信じるに至る事由があった。それだけだ」

「「「な、なるほど…」」」


 メシルが怪訝そうな顔をして勇者に問う。


「で、元プレイヤーならどうだってんだ?」

「この現象は俺が思うに…多分『大型アップデート』って奴だと思う。」


「「「アップデート…??」」」

「このまま大人しくしとけば何とも無いはずだ。だから大きく警戒する必要は無いと思うぞ。」

「それはいつ始まっていつ終わるんだ?」

「それは…ちょっと分からん。」

「なんだそれは、話にならんでは無いか!」

「それよりももっと警戒する事がある。このアップデートが終わったら『プレイヤー』が街に来るようになり始める。」


「「「なんだと!?」」」ガダンッ

 皆驚いて立ち上がった。中でもメシルは血相を変えている。

「あの暴虐武人な奴等がまた来るのか!?」

 冒険者ギルドの支部長なら相当の苦労をしてきたのだろう。握った拳には血管が浮き出る程だ。

「貴様…元とか言っていたがさてはプレイヤーの手先だな!!」

「おうおう落ち着けってメシル!このガキが今ここでプレイヤーが来る事を言ってコイツに何の得も無いだろう!!」

 ミンギンジャンが勇者をかばってくれた。その事に少しだけ勇者は嬉しかった。

「しばらくコイツは借金返す為にウチで働いてた!そん時に見てたがコイツにそんな仕草は一切確認出来なかった。だから俺が保証する。文句のある奴居るかぁ!?」


「いや…」

 メシルがそう言ったっきり、誰も意見を出さなかった。


(ミンギンジャン殿、このメンツでも凄い発言力だな。)ヒソヒソ

(パパはファステの町内会長みたいな立場なんですって!町長さんも寝たきりだし住民の代弁者ってみんなから取られてるし他の人達も頭が上がらない見たいですよ。)

(てんちょーさん怒るとおっかないもんねぇ)

(ミンギンジャン氏はかなり長い間この街に住んでいると父上から聞いた事がある)

(マリーナは実力者のムスメ!)

(やめて下さいアンジェラさん!!)

(ちょっとあなた達!静かにしてよ!)

(そうですよ!話し合いの途中なんですから静かにしましょう!)

(((はぁーい)))


「じゃあ…とりあえず意見まとめるけど、今の所はファステに異常はないんだよな?このまま警戒するのも良いと思うけど、俺はそれよりも来るべきの時の為にプレイヤー対策は準備しとくべきってだけ忠告しとくよ。後は俺の身分とか信用出来ないならこの街に来てから何をしたかとか説明するけど…」


「まぁいい。聞きたい奴は聞いとけ。でもトンマを叩いても何も話は進まねぇからな。それだけは俺から言っておく。」

「「「わ、分かった。」」」

「しかしすげーなぁミンギンジャン。よくこのメンツに幅聞かせられるよ。さては相当な弱味でも握ってんだろ?」


「………ってめー。こっちが肩持ってやってんのにそんな失礼な話する奴があるかぁぁ!!」バゴンッ


「いってぇ!!さっき叩いてもなんも出ねぇって言ったのミンギンジャンじゃねーか!!なんでお前が叩くんだよ!!」ドカッ

「やりやがったなこの野郎!!」ガキッ


「「「ふ、二人共落ち着いて!!」」」


 取っ組み合いを始める2人をレガシィ、ファーラ、メシルの3人が取り押さえる。

「皆、とりあえず今日は解散としよう!」

「後はこちらで何とかするから今日は家に居て戸締りをしっかりしておくように!」


「「「は、はい!」」」

 ハックとカルガモットが皆に説き伏せて流れ解散となったのであった。



第104話 END

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