NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

激しく補助席希望

第99話 #1『勇者先生の〇〇講座?』




 カッポンの街を昼過ぎに出立したのだが、ファステまでの道のりはまだまだ遠い。


 勇者達は無理をせず、野営地に戻りそこで1泊してからファステに帰る事にした。

 薄暗くなる頃にようやく野営地へと到達し、キャンプを開設し終わる頃には辺りはすっかり暗くなってしまった。


「ついに明日はファステかぁ…長い道のりだったなぁ。」

「最初はここで皆さんの能力を上げる為に訓練していたんですものね。」

 勇者とマリーナの会話にハックが大きく頷く。

「それが何故か我々が温泉街に立ち寄ってから色々な事に巻き込まれてしまい…」

「そのまま私達の因縁まで解決しちゃったからねぇ。本当にこの大陸では何が起きても不思議じゃないわ。」

 サイカも笑顔で話す。もうマホガートの1件については大分吹っ切れたのだろう。心に残るモヤが晴れてさっぱりとしたと言った様子だ。

「私も強くなった気がする!」

「山頂までの道のりも険しかったからな。皆程よくレベルアップ出来た事だしこの度の遠征は成功に終わったのでは無いだろうか?」

 アンジェラとカルガモットも笑顔を見せて語る。

「自分は…そうですね。今回の戦いで感情に任せて能力を使ってしまった部分があるので、反省が残りました。」

 ヤンドは腕を擦りながら闘技場の事を思い出した。

「私も鑑定局員に戻れたからめでたしめでたしだよ〜!!でも、あのリスキー・マウスに負けたってのはちょっと癪に障るけどね。」

 タリエルはニヤニヤしながら胸に付いた局員バッチを撫でる。



「いいなぁみんな。そう言われて見れば、俺って特に得られる物無かったような…」

「「「アンタ街1つ手中に納めただろっ!!」」」


「あっ…そう言えばそうか…あはは!」

「全く、勇者殿には毎度驚かされるよ。」

「ユーシャは真面目な時と腑抜けの時の差が大きい。」

「そしてすーぐ女にだらしなくなるし!!」

「いや!頼れるリーダーですよっ!!」

「そうねぇ。たまーに年下に思えなくなる時あるわねぇ」

「ふん!!見せかけのニセ勇者などには私は騙されん!お前は悪だ!」

「ホントたまにですけど…カッコよく見える時ありますよね」






「「「えっ?」」」

「…え!?」





 マリーナの最後の発言に、皆の目線が集中する。

「そうか…マリーナ嬢も勇者殿の手中に染められたか。」

「やっ!違うんです!そう言う意味では無くて!」

「カシリアオバサンに続きマリリーたんまで!!言っとくけど正ヒロインの座は誰にも渡すつもりなんて無いからね!べー!」

「町娘が旅の冒険者に惚れると言う事も昔からある話だが…あれだけは辞めておけ。損しかしない。」

「ユーシャは女の敵」

「私はマリーナちゃんが本当に好きなら応援するわよっ!きゃー若いって素敵!!」

「サイカさんやめて下さい!マルマルさんに変に勘違いされますからぁっ!」

「リーダー!!パーティ内恋愛なんてけしからんですぞ!!」


「おいおい何だよお前ら、俺を取り合って喧嘩すんなって!」


「「「誰もしてねーよ!!」」」ガンッ


「いってーな!すぐどつくんだからもぅ…」


「「「あっはっはっは!!」」」



 夕食を楽しみ、酒を飲み、仲間達は多くを語り合った。









「あー、そう言えばなんだけど…」

「ん?何だ勇者殿?」

「課外授業あるだろ?あれってまだやってないの誰だっけ?俺だけ?」

「あ!私もまだです…けど、私についてはまだ何もスキルを取得していないので教えられるのは料理の仕込みぐらいなんですが…」

「マリーナもか、でもそれはおいおい皆で少しづつ覚えて行けばいい話だしなぁ。」

「勇者殿も課外授業をしたいのか?」

「いや…考えたんだけど、俺が教えられるの事って無くない?スキルも対して覚えてないしさ…」



「「「え?」」」


「え?!何その反応?」

「自覚…無いのか?ニセ勇者?」

「多分ですけど…リーダーに教えて貰いたい事って、みんな一緒の事考えてますよ?」

「私もずーっと気になってたんだけど…中々聞くに聞けなくてタイミング逃してたんだよ!」

「正直、1番気になりますね…」



「え!?何だよ俺に教えて貰いたい事って?何かあるか??」


 勇者以外の皆は顔を見合わせた後、声を揃えて言い出した。


「「「『大陸』の外現実世界の事、教えて!」」」



「あ〜、そう言う事か…」

 ついうっかりしていた。時たま本当にここがゲーム『サウザンドオルタナティブ2』の中だと言うことをすっかり忘れてしまう。

「そりゃあ…みんな気になるか。」

「「「うんうん!!」」」


「…何が知りたい?」

「私も聞かせて貰おうか??」

「「「うおぅ!?」」」ビクッ


 いつの間にか皆の中にナユルメツが現れた。


「流石の魔人ナユルメツでも『外』が気になるか。」

「そりゃそうさ。感知も出来ない世界が存在するなんて、想像も出来ないからねぇ。」

「かと言って…勇者殿、我々は何から聞けば良いのだろうか??」

「それを俺に聞かれても…むしろ俺だって一体何から話せばいいのか…」

「はいはーい!みんなで1つづつマルたんに聞くってのはどう??」

「お、それいいな。その方が答え安い。」

「じゃあちょっと皆で考えタイムね!」


 メンバーはそれぞれ上を向きながら質問内容を考え始める。その姿をみて勇者は何だかおかしくて笑ってしまう。


「ん?皆が気になるかい?ブレイブハート。」

「なんか…一生懸命頭悩ませてる姿が、可愛く見えるって言ったらおかしくなるけど、面白いよ。」

「皆、一生懸命生命を全うしてる証拠だよ。いい事さね」

「…うん。」




 ─ ─ ─


「はい!じゃあみんな意見まとまったかな〜!!」

「「「はーい!」」」

「それじゃ誰から質問する?」

「あ!じゃあ自分から良いでしょうか?」

「おう、ヤンド!なんでも聞いてくれ!」


 皆はヤンドが何を聞くか、それに勇者が何と答えるか聞き入った。


「まず、自分が聞きたいのは…これは戦士として重要な事なのですが、『どのようなモンスターが大陸の外には現れるのでしょうか?』」

「ぶっ!!」

「「「???」」」


 ヤンドが聞いた事は至極当然の質問であった。未開の地に行くとなると、まず先にそこには危険があるのか無いのかを知る必要があるからだ。だが勇者はヤンドの質問に対して吹き出した。


「す、すまん。笑ってしまった。…あー、外にはっていうか、現実世界にはモンスターは居ないよ。」






「「「…えぇええぇぇええぇ!?!?!?」」」ガバァッ


 皆のリアクションは想像以上だった。


「も、モンスターが居ない!?」

「そうだ、いたって平和だよ。」


「それって…」


「「「どうやって生活しているの!?」」」


「せ、生活か…」


 皆のリアクションはその通りの物だ。ゲーム内で暮らしているNPCやプレイヤーは、モンスターを狩り、素材や報酬を得て日々の生活の糧としている。言わば、無くてはならない生命線ライフラインと殆ど変わりなかった。その存在が欠如しているなどと、想像もつかなかったのだ。


「これは…乗っけから大事を聞いてしまったな。」

「れ、レベルアップはどうするんですか!?リーダー??」

「あーすまん。レベルも無い。ステータスなんてそもそも存在しないんだよ。」


「「「はぁぁああぁぁあ!?」」」


「ま、マルマルさん。嘘ついてる訳じゃ…無いですよね??」

「今ここで嘘つくメリットが無いだろう!ホントの事だよ!…さっきの質問に答えるが、モンスターは存在せず、人は皆働いて資金を稼ぎ、それで生活しているよ。」


「働くって…協栄ギルドの仕事みたいな事??」

「まぁ…平たく言えばそうなるかな?たぶん。」



 勇者以外の皆は1箇所にかたまり、ヒソヒソと何かを話始めた。

「つ、次の質問は私がさせてもらうが、いいかな?勇者殿」

「お、おうハック。なんでも聞いてくれ。」


「さすがに先程のモンスターの話には驚かされたが、それでは聞かせてもらおう。大陸の外では魔法はどのような物が流通しているのだ?」



「………すまんハック。魔法も無い。」




バタン


「うわぁ!ハックさんが倒れた!!」


「マリーナちゃん!水持ってきて!」

「は、ハイ!!」ダッ






 ハックが倒れて野営地はてんやわんやの大騒ぎになってしまった。




「これ、このまま続けて大丈夫か??」

「さぁね?ウフフ」



第99話 END

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