NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

激しく補助席希望

第79話 #3『レデュオン』と『ゴータリング』+α


 勇者達は、千切れて落ちてしまった吊り橋の前で言い合いをしていた。


 この橋をどう渡るかについてである。

「だから!降りるのは無理だって!」

「いーじゃんか!マルたん落ちても死なないんだしぃ。向こう側まで登ってってよ」

「流石に無理あるだろって!」


 タリエルの出した案は勇者○○にロープを括りつけて、渓谷を下まで降りて川を渡り向こう側へと登ってもらうと言う作戦だ。


「あのな!どう考えたって無理だろ!?そもそもあの川がどれだけ深いかも分からないんだぞ?それを越えたとしても、15mはあるこの崖を登るのは無理だ!」

「何よ根性無し!」

「根性で何とか出来るならとっくにやってるっつーの!」

「まぁまぁ二人とも落ち着いて!」




「ハック先生、やっぱり魔法で何とか出来ませんか??」

「無いことも無いのだが…危険過ぎる。失敗したら一度に全滅だ。」


 マリーナが思いついた作戦は、ハックの魔法で向こう岸まで飛んでいくという作戦だ。

「先程も説明したが、『フロート』という浮遊魔法はある。しかし、これは厳密に言うと飛ぶのでは無く浮かび上がるのだ。勿論それは地面からの高さを基準に浮かんでいる。だから崖を飛び越えるという事は出来ない。…仮に、ロープの様な何かを向こう岸まで渡し、そのロープの上を浮かんで進んだとしてもそのロープが途中で外れてしまったら一環の終わりなのだ。」


「サイカはどう?ニンジャのスキルで跳躍出来ない?」

「ごめんなさいねアンジェラちゃん。もう少し距離が短かったら何とかなるけど…『跳躍』は高さのスキルなのよ。距離はあまり飛べないわ。」

「戦士ヤンドの怪力で向こう側に誰か1人投げ飛ばすというのは?」

「領主様、流石に無理です…」

「お!?ちっこいタリエルなら投げ飛ばせるんじゃねーか??ほらロープやるよ!」

「ぜーったい嫌!!なんで私が何が潜んでるかも分からない向こう岸で1人で待ってなきゃ行けないのよ!!」

「皆さん落ち着いて!」



「ロープを向こうに渡す方法なら…ある。」


「「「…え!?」」」


 唐突なアンジェラの発言に、誰しも驚く。

「い、一体どうやるんだ??」

「コレ」

 アンジェラは道具袋から弓を取り出した。

「おお!なるほど!矢にロープを括りつけて向こう岸まで飛ばすのか!」

「そゆこと」ビュン

 アンジェラの放ったロープ付きの矢は向こう岸の崖際に生えている太い木に突き刺さった。



「「「おおおぉぉ!!」」」


「…で、あのロープをどうやって木に括り付けるんだ?」


「…さぁ?」


「「「ええぇ!?!?」」」


「飛ばし方なら分かる!後はわからん!」ドヤァ

「ドヤ顔してんじゃねーよ!どうすんだよ1本しかないロープあっちまで行ったぞ!?」

「誰かが飛んでって向こうで結ぶ。」

「だから、それが出来たら最初から苦労しないっつーの!!」


「「「はぁぁ〜」」」

 みんな大きくため息をついた。


「どうする?とりあえず馬車戻って使えそうな物探すか??」

「うーむ、それがいいかも知れぬな。」

「馬車も近いし何とかなるでしょ?」

「「「そうしよ〜」」」

 全員が諦めムードで帰ろうとした時…


「グワァァァー!!」


 騒ぎを聞きつけ向こう岸にモンスターが現れた。


「うわ!あっち側モンスター出たぞ!」

「不味いな、あれじゃあ向こうに渡っても直ぐに戦闘になって…」



「ごぁぁぁあああぁぁ!!」


「「「え?」」」



 そのモンスターに反応して、ヤンドが<素手の凶戦士ベア・セルク>化してしまった。



「うわ!危ねぇ!!」
「逃げろ!」
「ちょっとヤンド何やってんのよ!!」

 凶暴化したヤンドは見境なく飛びかかった。




 …先ずは向こう岸のモンスターに



「「「は??」」」


 助走も付けず、その場からひと飛びで向こう岸に渡ると、そのモンスターを素手で細切れにした。



「「「え、ええぇぇ〜」」」



 勇者達が呆然としているとあっという間にモンスターは倒された。





「……ん?あ!皆さんモンスターは倒れました!大丈夫でーす!」


「「「………うん」」」



 こうして勇者達はロープを向こう岸まで渡し、川を渡る事に成功したのだ。


 ある程度の太さの木を切り倒し、とりあえず1本渡すとそれを基準に次々と付け足していく。やっとこさ人ひとり通れるぐらいの簡易的な橋を作り、その上をさらに保険を掛けてハックの浮遊魔法で渡った。


「とりあえず全員無事に渡れたけど…」

「「「渡れるなら最初からやってよヤンド!!」」」

「えぇ!?いやだって、自分無自覚なんですよ!?」

「今度からヤンド殿にロープを括りつけて、そのまま放置しよう。」

「「「さんせーい!」」」

「そんなぁ…」


 お手柄は立てた筈なのに、皆から責められるヤンドだった。



 橋を渡った先は、休む間もないぐらいにモンスターが湧き出てきた。


 動物系、モンスター化した山賊、岩石系、悪魔系…


 多種多様なモンスターが現れては、それを次々と撃破して行く。


 戦闘の指揮を取るのはカルガモットだ。


「次!サイカとアンジェラ前!ニセ勇者、マリーナ、チリードルさんは中!ヤンドとハックは後!」


「はーい!」「了解」

「なんかあいつ人使い荒くないかぁ?」

「つべこべ言うな!この中で戦術を本格的に学んだ者は私しか居ないのだからな!キビキビ動け!自分の任務を理解しろ!!」



 この様な形で、プチ『カルガモット先生の戦術講義』の様になっていた。

 約2時間程進むと、少し開けた場所に出る。



「うむ!敵勢力の気配無し!ここで休憩としよう!」


「結構疲れたなぁ」

「レベルも上がったしいい経験値稼ぎにはなったろう。」

「でも慣れない戦闘はやっぱり疲れますねぇ。」

「ボーッとしてるとみーんなヤンドが倒しちゃうから、結構大変だよ!」

「うぅ、ごめんなさい皆さん」

「連携を合わせるって、大変」

「いや、逆に私は関心しているぞ?戦闘経験は少ないのにここまで息を合わせられれば充分実戦対応出来る領域だ。」

「へー、カルガモットからお墨付き貰えたなら凄いんじゃねぇか?」

「ただし、このパーティーには攻撃魔法を使える者が少ないな。」

「確かに…現状だとハック先生とサイカさんだけですもんね。」

「広範囲攻撃の手段が限定されてしまうのは問題だ。そこでこのパーティーをもっと良くするために提案がある。」

「ほうほう、それはどんな提案だ?」



給仕係マリーナの魔法使い化だ。」


「へえ!?」

 マリーナは自分が呼ばれると思っても見なかったので変な声を上げてしまう。

「おぉ!騎士殿もそう考えていたか!」

「うむ、今から別の戦闘スタイルを覚えるとなると時間がかかる。…なら、まっさらの人間が1から覚えた方が早い。」

「え?え!?私、ですか??」

「これからは錬金術師と行動を共にして、より濃密に魔法に接して行くべきだ。」


「へー!いいじゃんマリリーたん!戦闘も出来て料理も出来る…さしずめ、『戦闘給仕バトル・ウェイトレス』ってとこね!!」


「えええぇぇ〜〜!?!?良いんですか?私で!?」

「何を言っている。この前の授業でもマリーナ嬢が最も魔法の才能を発揮していたでは無いか。エルフとしての才能もあるだろうが、適材適所だと思う。これからもよろしく頼むぞ、マリーナ嬢」

「そんな!ハック先生!勿体ないお言葉です!!」


 マリーナは照れながらも歓喜していた。


「ねーねー!マリリーたんだけじゃ無くて私にもなんか無いの??」

「ふむ…チリードルさんは体型的に接近戦闘は向いてないから…遠距離攻撃が出来る様になる、というのはどうだろう?」


「遠距離!?弓使うの?」

「弓だけが遠距離攻撃ではないが…自分にあった攻撃方を探して、それをモノにするのが良いだろうな。」

「ふーんちょっと考えとく〜!」

「弓って事は狩人ハンター的な職業か?」

現金の亡者キャッシュグールから現金の狩人キャッシュハンターにジョブチェンジするのか?」

 アンジェラの発言に勇者とハックが吹き出す。

「アンジー?二度とそんな呼び名で呼ばないでね?怒るよ??」

「そうだぞやめとけアンジェラ。ケツの毛1本も残らね〜ぐらいに金をむしり取られるぞ?」クスクス

「なんか最近のマルたんムカつく!!」ドンッ

「いってーな!スネ蹴ることねーだろうが!!」ゴンッ

「ふぁ!?殴ったわねー!!」

「こらこら良さぬか見苦しい。」

「タリエルちゃんもいきなり蹴るなんて良くないよ。」

「あー!ヤンドがマルたんの味方した!!あの時仮の新婚生活での甘い言葉は嘘だったのね!?!?」

「新婚って、クビになったタリエルが勝手に押しかけて住み着いただけだろうが!」



ギャーギャーワーワー




「全く…戦闘地域だと言うのに気の抜けた奴らだ。」

「でも、それがこのパーティーのいい所じゃない?カモ君。」


「……そうとも言う、か。ふはは」



 もう少しだけ休憩してから、パーティーは進むことにした。



第79話 END

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