NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

激しく補助席希望

第73話 #15『娯楽と堕落の街カッポン』



「……とまぁ、これが事の経緯だ。途中でアンジェラにかけたのは『怒りのブドウ酒』というアイテムで、グロットン一家にバレない様に使うためにあの様な真似をした。」

「怒りのブドウ酒!結構なレアアイテムですよね!?」

「よくそんなの持ってたねぇ〜!」

「今度から演技する時はわかりやすい合図送れよ!本当に殴り掛かる所だったぞ!!」


「それについては済まなかった。まぁ、大混乱を招いてくれたおかげでこっちは楽に抜け出せたのだが…」

 アンジェラの様子を見に行くカルガモット。

「良く戦った。いい試合だったぞ。戦士アンジェラ。」

「う〜ん…カモォ…今度会ったらブン殴…スヤァ…」


 カルガモット苦笑いしながら勇者達の元に戻る。

「して、何人か居ないみたいだがこちらはどうなったのだ??」

「「「そうだ!マリーナとサイカ!」」」

「2人は何処に?」

「それがわかんねーから焦ってたんだよ!誘拐されたみたいだ!」

「誘拐!?」


 今度は、勇者達がここまでの経緯を説明する。



 ─ ─ ─



「なるほど。奴らの狙いはファステの街に取り入る手段だったと言う訳か。」

「その…グロットン?だっけ??そいつらが誘拐したんだよ!」

「いや、それはないと思うぞ?」

「なんでだよ!?」

「落ち着け勇者殿!騎士殿は今まで族の首領と一緒に居たのだ。そんな素振りが会ったのならこちらよりも情報を得ている筈だ。」


「あ…そうか。」

「誰かを捕まえた様な話はしていなかった。その…チリードルさんが賭けをしている事で賭博場も大騒動になった様だし、それどころでは無かっただろう。」


「「「じゃあ…一体誰が??」」」


「そもそも誘拐『された』という事事態が間違っているのでは無いのか?」


「「「え?」」」


 確かに、居なくなったのは事実だがそれが誰かの仕業と決めつけたのは勇者達の判断だ。


「じゃあ…何処に行ったんだ??俺達に黙って何を?」

「誘拐…事態は、間違い無さそうだ。問題はその後だ。」

「ふむ?つまり…?」


「誘拐されたではなく、誘拐『した』ではないか?」

「…したって、誰がだよ?!」





「それはもちろん、女忍者サイカだ。」


「「「はぁ!?!?」」」











 街の外。そこにはボロボロに崩れた馬小屋があり、街を訪れた冒険者や旅人の馬が沢山繋いであった。


 その小屋の隣に、大きな丸が2つ描かれた幌の、白い馬が繋がれた馬車があった。勇者達が乗ってきた馬車だ。


 そこに、紫のフードを目深に被った者が近付く。腕には誰か人を抱いている。



 抱かれて居るのはマリーナだ。気絶しているのか意識は無く、だらんと腕を垂らしている。フードの者は傷を付けないように、丁寧にマリーナを馬車に載せる。




「そこまでだ。」


 暗がりの中から声がして、フードは動きを一瞬止める。しかし、そのままマリーナを横に寝かせる。



「動くな!理由を説明して貰うぞ。」



 暗がりの中から勇者達が現れる。ヤンドは背中に未だ目覚めぬアンジェラをおぶっていた。



 フードの者はこちらにゆっくりと振り向く。まだ顔は見えないものの、勇者達には確信があった。


「どうしてこんな事をしたんだ!教えてくれるよな?サイカさん。」

「…………。」

 ゆっくりと紫のフードを外す。現れたのは…



 サイカ・シクノノビィ本人だった。

「例え仲間でも貴方達に任せられない事がある。それは…この子を守る事。それだけは私が絶対にやるわ。」


「なんでだよサイカさん!」

「サイカ殿!訳を聞こう!」



「この子だって…知らないでしょう。でも、私に取っては私の命より大事な事よ。」


「ミンギンジャンの…娘だからか?」

「違う!!!」ギリッ


 サイカが声を大きくして、鋭く睨みつける。



「育ての…『娘』だからよ!私にとっては彼女は娘そのものなの!!だから、この子に危険があれば私が排除するわ!」



「双方落ち着け。…1度移動してから馬車の中で話をしないか?ここでは人目につく。」




 カルガモットが場を制する。その提案にサイカは頷き、馬車に乗り込む。










 カッポンの街から30分程離れた場所。


 そこで勇者達は馬車を停め、話をする事にした。馬車に乗ってる間もサイカはマリーナに膝枕をして、眠るマリーナの頭を撫でていた。



「さて、そろそろ話してくれるか?」


 馬車から降り、適度な広さの所で火を起こしみんながそれを囲むように座り込む。


 サイカは荷物の中から、いつも持ち歩いている写真を取り出し皆に見せる。


「私の主人、シゲアキ・シクノノビィです。何年も前に亡くなりました。」


 サイカが未亡人だという事は皆知っていたが、その詳細を知るものは居なかった。これから大切な話になると皆気持ちを引き締める。


「シゲアキさんと私は、枝分かれした流派で里も違う別々の忍者の家系の育ちです。10代前半の頃、駆け出しの冒険者として出会って、恋に落ちました。」


 懐かしい目で写真を見るサイカ。


「彼は料理をこよなく愛している人でした。しかし家系からの忍者の修行には逆らえず、料理人の夢は諦め上級忍者になる為の修行の一環で、里を離れて冒険者として腕を磨く事を義務付けられました。」


「なるほど。それで、シゲアキ殿とはどうやって出会ったのだ?」


「その当時、この世の全ての食材を追求し究極の料理の道を極める為に冒険すると言う一団がいて、シゲアキさんはその話を聞きつけてそこに入団しました。私は、近くの街でそこの忍者募集の話を聞いていてちょうどタイミングが重なったのです。忍者の募集は1人だけでしたが、団長は快く2人を引き入れてくれました。」


「なぁ…まさかその団長って…」



「冒険料理団、『魔道士の大皿』の団長にして料理長、<切り裂き肉包丁ザ・ブッチャー>ことミンギンジャン・リーチンその人です。」






第73話 END

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