NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

激しく補助席希望

第64話 #6 『娯楽と堕落の街カッポン』


 怒りを顕にして勇者達の元に向うタリエル。遠目で見ても何か忙しなくバタバタしている。


「ちょっとちょっと〜!!なんで誰も私の勇姿を見てないのさ〜!!」プンプン


 その場に居たのは勇者、ハック、ヤンドの3人だけだった。

「ねぇ!!聞いてる!?」

「「「うぉ!!」」」


 何故か3人はたじろいだ。

「なぁんでちゃんと見てない…どーしたの?なんかあった??」

「タリエル!大変だ!!今はそれどころじゃ無い!」

「大変って何?!サイカとマリリーたんは?」


「断定は出来ないが…どうやら『誘拐』されたようだ。」


「ゆ!誘拐!?!?」ガーン






─時間は少し前

 タリエルがまだ賭けに白熱している最中、勇者達はタリエルと交代で席を離れたアビーという男に話しかけられていた。

「兄ちゃん達はあのお嬢ちゃんの仲間だろ?席譲ってやったんだから1杯ぐらい奢れよ!なぁ!」

「そうは言われても…」

「いや、いい。ここで拗れても後が面倒臭いだけだ。ほらオッサン、奢ってやるからこっち来いよ!」

 仕方なくアビーと一緒にカウンターに行く一行。

「バーテンさん、このオッサンに高い酒1つ出してくれ!」

「お!いいねぇそういう心意気!」

「お代は85ゴールドになります。」

「はいよ!釣りは取っといて!」チャリン

 勇者は無限財布から100ゴールドを出し、酒を受け取る。

「ほらよ、これで満足だろ?」

「いいねぇ!益々気に入った!ちょっと話していこうぜ!!」

「え〜なんだよ忙しいのに。」

「まぁ、そう言うなって!」グビグビ

 アビーは高い酒だと言うのにグイグイと飲む。


「ひゃあ〜うめぇ!大勝した時しかコイツ飲まない事にしてるんだが…人の奢りだと尚更美味いな!うわっはっは!」

「そいつを飲み干すまでの間だけだぞ?で、なんだよ話って。」

「いやあねぇ。最近は俺達みたいな悪党がゆっくり出来る街も少なくなっただろ?世の中は世知辛いと思ってよ。」

(((なんで俺達まで悪党扱い??)))

「最近じゃあ隣の街にもおちおち行けないし…俺達が溜まる様なこういう街も必要なんだよなぁ。」


「うん?隣の街??ここで言うとファステになるのか?」

「おうそうよ!お前さん方、迂闊に近寄らん方がいいぜ」グビッ


「横から失礼する、何故ファステとか言う街には近寄れないのだ?」

 ハックは自分達がそこから来たと言わない方が得策だと考えて、咄嗟に嘘を付いた。

「なんでぇ?流れもんなのか??」

「…まぁ、遠くには違いないな。」


「そりゃ知らないのも頷ける。この街の人間なら誰でもファステには近寄らないからな。」


「「「へえ〜〜」」」???


 頷いた素振りを見せるが、勇者達は何故そんなにもファステが危険視扱いされているのかが皆目検討がつかなかった。

(なぁ、ファステってそんなヤバイ街か?)ヒソヒソ

(そんな事無いと思うけどねぇ…)

(マルマルさん自分で住んでるんだから知ってるじゃないですか!)

(いや、俺だってまだ数週間しか滞在してないし…何か裏事情でもあるのか?)

(((いいや?)))

 ハックもマリーナもサイカもヤンドも、全くそんな話は聞いた事は無いと言う反応をする。

「何故ファステに近付いてはいけないんですか?」

 今度はヤンドが聞いた。

「……出るんだよ。」

「え?幽霊か何かですか?」

「違ぇよ!幽霊なんかよりおっかない奴だ!」

「一体何が出るんですか??」

「…『ブッチャー』さ。」

「「「ブッチャー??」」」

 勇者はもちろん、他のメンバーの頭にもハテナがいっぱい浮かんでいた。


「ブッチャーってなんだ?」

「自分は聞いた事無いですねぇ。」

「はて、聞いた事あるような無いような…忘れてしまったな。」

「変な名前ですね。」

「知らないな」



「んで、そのブッチャーってのがどうしたんだ?」

「なんだお前ら!知らないのか??」

「だーれも聞いた事無いってさ。」

「…でも、ぷくく」

「ん?どうした?マリーナ?」

「私のパパ、昔は凄く太ってて『ブーちゃん』って悪口ついてた見たいなんですよ。なんかそれを思い出してしまいました。」

「へぇー!あのガリガリの体型が!信じられないなぁ。」

「ほぉ…店主殿が昔太っていたと…??」

「たまーにですけど、ちょいちょい訪れる昔の冒険者仲間がパパの事そう呼んで、『その名で呼ぶな!』っていっつも怒ってました。…そう言えばあの方達、もうだいぶ長い事会ってないですね。」

「へーなるほど。」

「………。」

 サイカが何故か黙り込んだ。


「んで?そのブッチャーってのは何者なんだ?」

「死の芸術家さ!」

「なんだそりゃ!物騒な奴だな!」

「人喰い料理人とも呼ばれている」

「人喰い…なんだって?」

「俺は見た事ねぇけど、そいつは痩せたオークらしいんだが…」

「痩せた…オーク…」


「聞いた話によると人を料理して食っちまうバケモンが居るらしいんだ。しかもそいつがシャーガードの奴らと手を組んでるってよ。」

「シャーガード?」

「山賊狩り専門の山賊だよ。」

「ひぇ〜そんな奴らも居るのか!」

「どうもブッチャーはシャーガードを手下に付けて、山賊を狩って来て料理して、そいつらに肉をたらふく食わせてるみたいだ。」

「なるほどね。WinWinの関係って奴か。」

「ウチに来る常連さんにも『捨我道』って名前の山賊さん達が居るんですけど、パパが指定した食材を持ってくる代わりにタダでご飯食べさせてもらってるんですよ。」

「ほへぇ〜似たような話もあるもんだなあ。」

「ほら、あのモヒカンに肩パットの常連さん!」

「あぁ!!ゴロツキ共か!!そういやアイツら世紀末山賊とか訳分からん事やっとるとか言ってたなぁ!アイツら『捨我道』なんて名前だったのか。」

「マリーナちゃん、ちょっと来て」

「あ、はーい!」


「で?そのブッチャー達が怖くてファステの街に近付けないって寸法か?」

「それがよ!そうでも無いんだよ!!」

「え?なんだ??」

「実はだがなぁ…そのブッチャーにはどうやら、娘がいるらしいんだわ!」

「ええぇ!?そんな人喰いの死の芸術家に!?」

「そうよ!噂だと自分で食う為に育ててるとか何とか…とにかく、その大事に育ててる『娘』ってのを人質に取れば、何とかファステの街からブッチャーの隠したお宝たんまり背締められるんじゃないかって話で持ち切りなんだよ!」

「「「そーなんだぁ〜」」」



 アビーから聞いた、今までの話を勇者達は頭の中でまとめてみた。



・曰く、死の芸術家
(ゲハハ!俺の料理は芸術だ!死んだ生き物はみーんな食材だ!)

・曰く、人喰い料理人
(テメェら新人冒険者は全部俺の獲物だ!金がねぇなら装備品で払いな!)

・曰く、ブッチャーと呼ばれている
(パパは昔、太ってて『ブーちゃん』って呼ばれてました。)

・曰く、痩せたオーク種である
(お前が痩せてるのって、自分が作ったメシが不味いからだと思ってたよ)

・曰く、シャーガードと言う山賊狩りをする山賊と手を組んでいる。
(お店の常連さん、捨我道って言って食材持ってきてくれるんですよ)

・曰く、どうやら娘がいる。
(俺は前から、娘には人生を縛るつもりは無いと話はしてあった。)





「「「……………。」」」




 勇者達は何回も何回も考え直す。何度もそれは違う、勘違いだと自分に言い聞かす。





 でも、アビーの言う話を整理する度に、結局は最後にこの意見に繋がる。









 ファステの『ブッチャー』とは…









 *☆まさかのミンギンジャン☆*

  *☆with大魔道飯店☆*




「「「……え?」」」



第64話 END

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