NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

激しく補助席希望

第62話 #5 『娯楽と堕落の街カッポン』


 ガララ…

 沈んだ表情で脱衣場から出てくる男3人組。口々にため息を着いている。


 ガラッ

 それとは対称的に、明るい表情で出てくる女性陣。

「いやーお風呂に浸かれなかったのは残念だけど、久しぶりに温かいお湯浴びれたから満足だったね〜!!」

「そうですねタリエルさん!…あれ?マルマルさん達、何か怪我してません??」

「え!?あ、あぁ。ちょっとモンスターにさ…」

「そうだ!怪物が出たのだ!」

「そうです!そうなんですよ!!」



「「「……へぇ〜」」」


 女性陣は何やらニヤニヤ笑っている。ナユルメツがずいっと前に出てくる。

「アタシらはてっきりブレイブハート達が女湯覗こうと勢い良く出てきたのに、お風呂にお湯が無いから転んで怪我したのかと思ってたよ」


「「「うぐっ!!」」」ドキッ

「モンスターに襲われたってんなら話は別だね?回復してあげよぅかい??」ニヤリ


「「「け!結構です!!」」」ダッ

 男達3人組は走って逃げ出した。










 風呂上がりに温泉宿のロビーで一段落つく勇者達。ナユルメツはお風呂から上がった後に姿を消していた。


「さて…まだカルガモットは帰ってきて無いけど、今日はどうする?」

「うむ、今日はこのままここの宿を借りよう。流石に今からまた野営地に帰るのも時間的にキツイ物があるな。」

「じゃあ今日泊まるに賛成のひと〜!」

「「「はーい!」」」

 満場一致の決定だ。否定意見は出なかった。

「よし!とりあえず宿泊抑えて来るか。」

「あ、自分が行ってきますリーダー!」

「ヤンド頼むぜ〜」

「しかし…何故温泉が湧かないのだろうか?」

「番台の人言ってたけど、なんか数週間前から急に湧き出すお湯の量が少なくなったんだって」

「命の泉…足先しか浴びれなかった」ショボン

「確かにそれもあるけれど…困ったわね。」

「どーしたのサイカさん?」

「飲水も買えなかったって話したでしょ?ヤンド君がいい事思い付いて、湧いてる温泉ならお金かからなくても飲水の代わりに出来るんじゃないかって話になったのよ。」

「おーなるほど!!考えたな!」

「でも…あんな量しか湧いてないなら、汲んで持ってくのも申し訳無いし…」

「「「た、確かに…」」」

 どうしたものかと皆で考えて居ると、何やら宿屋の奥から賑やかな声が聞こえてきた。


「なんか、あっちの奥盛り上がってるな?なんだろ?」

 予約を終えたヤンドがそっちの方向から帰ってくる。

「皆さん!カウンターの奥見ました??」

「いや、見てない。」

「なんかあったの??」

「こんな街だからあるのかなって思ってたんですけど、やっぱりありました!」

「ヤンドさん、何があったんです??」

「賭博場だよ!」

「「「賭博場!?!?」」」


 タリエルがスっと立ち上がり、指をポキポキと鳴らす。

 その仕草を見て、ハックがまさかと言う表情をする。

「ソナタ…何を考えているかは大体分かるが、騒ぎは起こさない方が得策なのだぞ?分かっているのか??」





「…騒ぎなんて起こすつもりは無いわ。ただほんのちょっと一儲けして、たっかい飲水買ってやろうかなって、そう思ってるだけだよ。」

(((こ、コイツ。ヤル気だ…)))


 タリエルの放つ『ガチ』の雰囲気に、皆が青ざめる。

「タリエルさん、落ち着いて!」

「キャッシュグールならこの街で億万長者にでもなれるかも」

「もうアンジェラちゃん!煽らないの!!」

「勇者殿、これは一波乱ありそうだぞ!」

「いや、いいんじゃないか??タリエルの本気、見てみたかったし。」


 勇者のその台詞に、ニヤリとおぞましい表情を浮かべるタリエル。


「…さっすが私のマルたん。分かってるじゃない??」

「誰がお前のだよっ!」

「自分!賭け事とか初めてなんで緊張してます!!」

「いや、そもそもやった事ある者は居るのか??」

 ハックの問いに、タリエル以外は皆首を横に振った。


「おっけーおっけー!ちょうど良かったじゃん!!」

「何がちょうど良いんだタリエル?」

「課外授業よ。アイテム鑑定に付いてみんなに教えようかと思ってたけど、こっちの方が面白そうだし。」

「な、なんだって!?」


「天才美少女鑑定局員(元)が、特別に教えてあげるわ。<賭博の渡り方と賭け事の作法>って奴をね。」


「「「は、ははは…」」」タラァ


 本気と、書いてマジと読む。

 正にその言葉が相応しい、完全な戦闘体制のタリエルに、チームメンバーは背中に冷や汗をかいていた。





第62話 END

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