NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?
第53話B 『ハック先生の魔法講座』
今は一通りの魔法知識を教えて貰った後、各人毎距離を取って魔法の練習をしていた。
「くっそ〜〜おかしいなぁ。全然出来る気しねーぞぉ??」
皆はある程度直ぐに出来るようになっていたが、勇者だけは全く上達の兆しを見せなかった。
「薄々勘づいていはいたが…やはり勇者殿には魔法は使えない、か…」
「え!?なんでだよハック!」
「元々で魔法に対する概念が弱すぎるからな勇者殿は。何せ魔法の存在しない世界から来たのだろう?それを克服する為には並大抵の努力と時間が必要だと思う。」
「え〜〜マジかよ折角戦えない分魔法でカバーしょうと思ったのに〜!!」
「それに…勇者殿はステータスが上がらないのであろう?流石にINTが1のままであるなら…何十年かかっても初級魔法1つ覚えられるのがやっとと言った所だろう。」
へなへなと腰から砕け落ちる勇者。
「うぷぷー!INTが1って頭悪すぎじゃん!」
「流石に戦士と言えど私だって2桁はあるぞ…」
「はいソコ!出来ない人を馬鹿にしない!!」
「「はーい…」」
ハックにハッキリと出来ない人呼ばわりされて、さらに勇者は傷付いた。
その反面…
「うわぁ!!凄い!先生これって出来てますか!?」
稲妻を召喚する魔法が早くも使えて、マリーナの指からは白い電撃が走っている。
「流石エルフの種族だけはあるな。あんなにも早く魔法が使えるとは…」
ハックは出来ない生徒を置いて優秀な生徒の元に向かった。
「先生〜頼むから出来の悪い子を見捨てないでぇ〜〜!」
べそをかく勇者の、文字通り泣き言はハックの耳には届かなかった。
「それでは、1度全員こちらに来てもらいたい。」
ハックが皆を集めて座らせた。
「上級魔法というものを後学のために見せよう。あのマネキンを見ていてくれ。」
ハックが指さす先には十字に組んだ木の枠に、ボロボロの鋼の鎧を着せた物があった。
「今から強めの魔法を唱える。皆は少し離れて居るように。」
「「「はい!」」」
すうっと呼吸を整え、ハックは右手を構える。
「ハァッ!!」バジジュジュオオォォンン
手のひらから放たれたのは、大量の電撃だ。まるで液体の波が押し寄せたのかと思う程の広範囲に電撃が走った。あまりの眩しさに全員の目が一瞬眩む。
「「す、すすげえぇぇええぇ!!」」
「…と、このようになる。しかし、見てもらいたい。マネキンにダメージはあるか?」
一同が鎧を注目する。目に見えるダメージは少し焦げが付いたぐらいだった。
「魔法攻撃は確かに見た目が派手で、広範囲に攻撃出来る。しかし、肝心のダメージがあまり入らないなら全くもって無意味だ。」
「「ほえ〜〜」」
「では、ここで少し手伝って貰おう。騎士殿、協力してくれないか?」
「うむ、どうすればいい?」
「あの鎧を切りつけてくれ。」
「…ふむ、分かった。」
カルガモットはマネキンに近寄ると、一閃切りつける。流石にボロでも鋼の鎧なので切断までは行かないものの、空の鎧を凹ませる事には成功した。
「ふむ…こんなものでいいか?」
「ありがとう、騎士殿、下がっていてくれ。」
「…さて、皆に質問だ。広範囲魔法でもさしてダメージを与えられず、剣戟においても貫通はしなかった相手にはどのように対処するか?」
皆はあーだこーだと話を始める。
「マリーナ嬢、答えられるか?」
「…うー、ん。わかりません…」
「素直で宜しい、それでは教えよう。魔法攻撃の真髄について。」
ハックの顔が凄みを増した。
「魔法攻撃の真髄とは、最も少ない消費量で、最大限の効果を得るにある!!」
ハックは杖を構える。
「広範囲魔法は確かに魅力的だ。しかし!ただただ魔力を膨大に消費して対したダメージしか与えられないのはナンセンス!!」
杖の先が輝き出す。
「最小限で、弱点に、最大限の効果を…」
杖の先に込められた稲妻魔法が強烈な光を放つ!もはや直視出来ない程だ。
「うわぁ!」「きゃあ!」「これは…凄いぞ!」
光輝く杖の先で、そっと鎧を『撫でる』。
鎧は撫でた通りに『溶断』された。
「…これが、魔法だ」
「「すっげぇぇええぇ!!」」
「「「カッコイイ〜!!」」」
「恐ろしいな…」
「…今のは、先程見せた稲妻魔法を一点に集中させ、威力を格段にはね上げた物だ。しかも、それでいて魔力消費は先程の10分の1に満たない。いいか、最も大事なのは概念だ。どれだけ自分のやりたい事を細かくイメージ出来るかによって、魔法の効果は雲泥の差となる。それでは、私の授業は以上で終わる。」
「「「おぉぉぉぉ〜〜!!
」」」パチパチパチ…
第53話 END
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