NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?
第6話B 勇者はどうしても装備を調えたい。みたい?
タリエルから伝わる、さっきまで稲光でも発しそうな殺伐とした空気が突如、ピンクで甘ーくとろけるような物へと急激に変化した。ハックは驚きのあまり声が出せない。
「・・そ、そんな事っ!いくら私のマルたんの頼みでも、仕事に私情は挟めないようぅ~」
「こんなに俺が頼んでるのにか?」
「だ、駄目!そんな顔みせないでぇっ!そんな顔されたら、わたし・・・」
「なあ、頼むよ。俺が頼み事した事あるか?俺がタリエルの事どう思ってるか、知ってるんだろ?」
「やあぁぁ~らめぇぇぇ~!!こっちみないでえぇ!」
ここぞとばかりに勇者が一歩前に踏み出す!壁に逃げ道を阻まれたタリエルは愛という名の呪縛から逃げ出せない!そこにさらにダメ押しの壁ドン!!こうかはばつぐんだ!
「きゃうん!」
「たのむよ。『僕のタリエル』。僕を助けてよ」
「はぅん!はぁはぁ・・・らめぇ、マルたんらめぇ!ハックが!ハックが見てるのに!!あぁこんなぁ~っ!!きゅう~~ん!」
タリエルはなぜか内股になってもじもじと悶える。それを見ているハックはあまりの現実離れした光景に手に持っている杖を落とし尻もちを付く。小さな声でうそだこんなのあり得ないと何度もつぶやく。
「ええーい、まだあらがうかタリエル!いい加減俺の全てを受け入れろ!」
左手でタリエルの胸ぐらを掴み引き寄せ、右手の一差し指でタリエルの胸に付いている局員バッチをクリクリとなで回す。その度に耳まで真っ赤にしたタリエルは熱い吐息でイヤイヤと駄々を捏ねる。更にとどめの一撃!勇者の『耳元で甘くささやく』攻撃!タリエルは瀕死の重体だ!
「なぁ・・何も『タダにしてくれ』って言ってる訳じゃあ無いんだ、そうだろう?『タダにしろ』なんて最低な男のすることだ。俺は最低な男か?」
「いや・・ちが・・ゆうたんは・・」
なんかもう呼び名がマルたんなのか勇たんなのかごちゃ混ぜになってきたぞ?ここで更に過剰殺戮!伝説の勇者の『アゴクイ』ッッ!!タリエルはもはや耐えられない!
「さぁ・・自分の口で言うんだ、『100Gに値引く』って・・さぁ」
「あぁ・・・」
勇者の唇がタリエルに近づく!その距離約15㎝!タリエルの吐息がかかる!
「さぁ・・!」あと10㎝!
「いや・・・」 7㎝!!
「さあ!!」 5㎝を切った!!!
「だめっ・・」 あと数㎝!!!!
「さあっっっ!!!」 数㎜!!!!!
「ね、値下げしちゃううぅぅっっっ!!!!!」
「すいませーん。『大魔道飯店』のマリーナですけど、タリエルさんに出前注文のお届け・・って
キャアアアアアァァァァ!!!」
ガッツポーズを決め、ハーフプレートを握りしめる勇者(すっごい満足顔)まるで乱暴に荒らされた店内(元から)、静かな室内に響く乱れた吐息と漂う少女の甘ったるい汗の香(え?なんで?)、力なく机の上にうつぶせに倒れるタリエル(いやどっから机出てきたしw)、衣服は乱れ、胸元ははだけ、前髪は汗で顔に張り付きただ宙を見つめるうつろな目と涙の跡(いややったの俺だけど何この状況?)。彼女の手にはなぜか100G(消費税コミ込みでーす☆テヘ)誰がどうみても完全に『事後』ですありがとうございました(おーい何の後だってー?)の、状況に運悪く出くわしてしまったマリーナは完全に勇者を悪と認め、全力で張り倒す(本日二回目、距離、威力↑↑)
たまたま視界の外に倒れ込んでいたハックも、髪の色がぬけるほどの衝撃を受け真っ白に干からび切っていた。よほどショックだったのだろう。あのタリエルが値引きを迎える所をこの目で見る日が来るなんて(いちいちルビおかしくない?)
「なんなのこの人サイッテ―!!信じられない!!ただの名前がかわいそうな人だと思ってたけど、まさかこんな事する人だと思わなかったわ!!女の敵!もう会いに来ないで! ・・・ってアレ?なんで私この人と会う約束?してたんだっけ??あれ?」
短時間とはいえ、勇者の最初の『ウィンク』攻撃の相手になってしまったマリーナは、勇者に惚れてる間に自らに会いに来る口約束をしていたのだが、その後すぐにコミュランクは戻されていた。だから、会う約束を自分からしたにもかかわらず何故そうしたのかまるで覚えが無い。
「???まぁ、それは良いとして、自称勇者さん!タリエルさんとちゃんと話し合って、責任は取ってあげて下さいね!今日のお代はマルマルさんに付けて置きますから!!」
そう言うとマリーナは岡持をブンブンと振り回しながら帰って行った。勇者は叩かれた頬を擦るが、背中からの強烈な悪寒に思わず振り向く
「・・ポ~~~ッ」
机に伏したタリエルが顔を真っ赤にして、指を咥えながら仲間になりたそうな目でこちらを見ている。あ、あかん!
「お、おいタリエル。もう商談成立したんだ。な。分かってくれよ。こっちも商売?なんだ。つ、つーかアレだ、ほら。最初にお前が俺の名前笑ったのが悪いんだぞ!元はと言えばお前の責任・・・ハッ!?」
「・・・責任、取ってよね?」
(うわぁなんだその可愛い言い方は、おもわず返事するところだったぞ!落ち着け!平常心!てか、そろそろコイツ戻してやらないとかわいそうだ。ここは大人の余裕を見せて・・・)
「さあ、起きるんだタリエル。君との関係は取引だったんだ。取引は終わったんだぞ。余裕ある大人の男は取引後のイチャイチャは好きがらないものさ。さ、服を着て(てかなんで服開けてんの?マジでなんで?)」
「あ・・・。」
「夢から覚める時間だよ、ベイビー(キラッ)」
そう言ってタリエルに向かってウィンクする。バチッと火花が飛んだような感じがして、タリエルの体が一瞬震える。
(うわわあああぁぁ俺めっちゃ恥ずかしいいいぃぃ!今更だけど!今更だけどめっちゃ恥ずかしいいいぃぃリアルでこんな経験なんてしたことねーようわああぁぁ)
恥ずかしさのあまり全身がむず痒くなり悶える。そんな勇者を尻目に、ぼーっとしていたタリエルの顔には最初会った時のような生気の無い低血圧っぽい顔色が戻ってくる。それどころか、どんどん青くなっていく。
「あ、あ、あぁ・・ あーっ!!!」
突然頭をかきむしり涙をだしてたじろぐ。真っ青になってうろたえはじめる。
「な、なんだよ大げさだなぁ、たかがシルバーのハーフプレートぐらい、良くて千数百Gってとこだろ?今日した俺の買い物で十分元取れてるだろ。」
「グスン・・・ ~~」
「え?何??」
「~ス~~なの」
「何だって??」
タリエルは涙を浮かべてこう言った。
「・・ミスリルなの。定価198000G。」
あちゃ~~。てへぺろっ
第6話 END
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コメント
激しく補助席希望
清水さんいつも読んで頂きありがとうございます!
この作品には私の持っているセンスを余すことなくつぎ込んでいるので、ぜひお楽しみ下さい
清水レモン
ぴ、ぴろ…ー…ルビいいですね! 何回も読み返してしまいました!!