NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

激しく補助席希望

第10話B 勇者はどうしても現実に帰る。みたい・・・


「あの、地獄の強突く張り、<現金の亡者キャッシュグ―ル>を抱くなんて・・」

「あいつ売れる物はなんでも平気で売るって聞いてたぞ?それをまさか逆手に・・」

「お、おれ!奴は金の為ならたったの1Gでも何でもするって聞いたぞ!?そんな女に・・」

「おれも聞いた!奴は逆に、金としか寝ないって話だぞ?」

「あ、ありえねぇ。あの、人を多少の金の詰まった小銭入れぐらいにしか思ってないような奴に、女を自覚させて『値切る』なんて・・」

「まさに<負け犬グッドルーザー>・・人生の負け犬だよありゃあ・・・そうでも無きゃあんな真似、出来るわけ無い!」

「「「ゾ、ゾゾゾゾゾ~~~!!!!」」」

 いやーさっきよりもみんな引いてないか?いや、そうでもないかな??あれだ、きっと気のせいだ。ねぇ神様?あれ、なんか涙が・・・

「ねぇちょっとマルたーん!なんかー、マルたんのせいで私まで悪く言われてるみたいなんだけど?困るんだよねパーティー組んでから悪い評判立てられるのはー。一緒にいる人の事も考えてくれなきゃとっても迷惑なんですけどー?ぷんぷん。」



「つつっっ!!!てめぇg!an1aniitenn!!damzi5bukkor!!ogoraxa!!」

「ま、まぁまぁ落ち着きなされ勇者殿!ぷぷ・・うっくく、これは失礼!オホン!」


「ハック!!元はといえば貴様がsaki3nihagim7etann5gaaa6aa4a!!!」

「がーーはっはっは!!!」

 二人の胸ぐらを掴んで激おこする勇者も、流石に『この店の大将』の笑い声には驚いて我を取り戻す。

「がーっはっは・・ ぬん?どうした?」

「いやぁ、ミンギンジャンも笑うんだなぁってさ。ゴメン、俺アンタの事勘違いしてた。」

「だからなんでてめぇは俺の事知ってんだ?気味がわりぃ」

「まーあれだ、俺が知ってんのはアンタであってあんたじゃなくて『前作』の・・まぁ気にすんなよ」

「はぁ??」

「ソレよりも謝りたい事がある。昔の事だけど、俺、アンタが痩せてるのは自分の料理が不味いから痩せてるんですか?ってDMで質問したことあるんだ。悪かったよ、アンタの事そんな風に言ってさ。」

「「おおきなお世話だよッ!!!」

 ミンギンジャン親子に全力でぶん殴られる勇者。店の外に飛び出して、やっとその勢いが止まる。

「おい!!貴様等!!気が変ったぞ!!今日は『俺のおごり』じゃなくて、この『トンマ』のおごりだ!!たらふく飲め!!!」

「うひょおぉぉ今日はゆーしゃのおごりだぁぁ!!」

「まーるまるっ、それまーるまるぅっ、それまーるまる!!」

「たいしょー!!あたし高級薬膳鍋!!めっちゃダイエットに効く奴!あと持ち帰りでさっきの豚の丸焼き!!3人前!!」

「いやいや、ここで持ち帰りを頼むのは流石の私もひきますよタリエル。」

「えーいいじゃん!だってマルたんのおごりだよ?うちらもうパーティーだし!マリリーたんお酒5つ追加~~」

「だから私はマリーナですって・・まったく、変った人ですね。」

「あぁ、だが、それが『良い』。良い一日だった」

 気絶したまま、勇者はゴロツキ共に担がれて店の中の右へ左へと運ばれていく。そんな勇者を見て、みんな酒が入ってるからだろうが、とても良い顔をして笑い合っていた。

「大変な一日だったみたいですけど?彼にとっては。」

「そうだな、だがファステにとっては最良の一日と言えただろう。彼がこの街に来てくれて嬉しいよ、そして感謝もしている。ありがとう、勇者殿」

「なんか・・ハックさんも変わりましたよね?そんなに人を褒める質でしたっけ?」

「いや、彼に『変えられた』のさ。彼の、『人間味』にね」

「へぇ~~」

「ねーマリたん!お酒ってば!全然足りないよこっちは~~」

「はーいただいま~タリエルさん。」






「君達!何時まで騒いでいるのだ!?いい加減にしたまえ!!」

「やべぇ!『衛兵』と『残念騎士』がきたゾ!逃げろ!!」

 そう言われて店の入り口に現れたのは、この街の門番だった衛兵となんだかいかにも真面目そうな騎士風の男だった。その二人を見るなり、ゴロツキ共は散っていく。

「だ、だれが『残念』だ!許さんぞ我が家名をバカにするのは!!」

「ひえ~~にげろ~~!!」

「待たないか君達!!」

 あっという間にあの喧噪は無くなり、店内に残ったのはミンギンジャン親子と勇者パーティーだけだった。




「…おい」

「さ、さぁて帰ろう勇者殿!そんな所で寝ていてはカゼを引くぞ。よもやソナタ、今晩の宿も用意しては無いではないか?仕方が無い、パーティーメンバーの私が手配してやろう。これタリエル、勇者殿の足を持つのだ。」

「えー!まだ全然食べ足りないよ!」

「いいから、空気を読んで付いてきなさい。」

「はーい」

「だからおい、ハック」

「ソレでは失礼する『店主殿』、ごきげんよう」

「オイ待て!!」

 3人はあっという間に見えなくなるぐらい凄まじい勢いで逃げていった。

「そろーり、そろーり」

「どこいこうってんだ?マリーナ?」

「あ、あーえと!急用を思い出して・・」

「おうまさか俺一人にココ片付けさせようってんじゃないだろうな?」

「や、やだなーパパたら、わたし、ちょっとお花を摘みにいって来るわ!おほほ~!!」

「あっおい!!」

 マリーナも走って何処かへ消えていく.残されたのはミンギンジャンただ一人。

「うぐぐぐぐ・・!!覚えてろぉ!!クソゆーしゃぁぁぁ!!!」

 店内はトルネード魔法か爆発魔法でも唱えられたかのような有様。その真ん中でただ一人残され、まるで悪役が正義の味方に対し悔しがるような、そんな雄叫びを上げるミンギンジャンだった。


「うーん・・あれ??」

「お、目が覚めたか勇者殿。怪我はしてないか?」

「えーっと・・主に顔面と、サイフと、人間としての尊厳が手遅れぐらいにへこんでるけれど、私は元気です。」

「そのような皮肉が言えるくらいだ、もう下ろしても良かろう。」

 俺よりも背の高いハックに担がれると、中々に見晴らしがいいなぁ。なんて事を考えてると、足下から文句が聞こえてくる。

「ちょっとマルたん!いい加減重いんだけど!?歩けるなら自分で歩いてよ!もう!」

「あぁ、わるかった、お!ちょっと待ってくれ!」

 二人が地面に勇者を下ろすと、小走りに勇者は近くにある宙に浮かぶ青い鉱石の塊のような物に近づく。これはセーブスフィアだ。

「・・よし、セーブ完了っと!これでよし、後は・・・時間か。」

 頭の上に天高く輝く満月を見て、勇者は寂しくなった。

「なぁ、二人とも。話があるんだ。」

Bパート終了→

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