NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?
第14話B そして勇者は仕事を見つける。みたい?
暗がりの中から声の主が姿を現わす。予想に違わずミンギンジャンだった。
「その節は大変お世話になったみてぇだな、ミンギンジャン。だかアンタがワザワザ苦労かけてまで復活させた奴をアンタ自らが殺すのか?」
「ころすぅ?なーんでそんな1Gも得にならん事を俺がしなきゃならねーんだ??」
良し、強気の態度でカマはかけたが、どうやら殺されはしないみたいだな。だったら用は1つか。
「金を払って欲しくてこんなまどろっこしい真似したのかよ。アンタも暇だな。」
「おうおう随分と威勢がいいなぁ。その割にはお前も、お前のツレ達も一向に借金払いに来ねーのはなんでだ?もう1週間も経ってんのによぉ」
「なーに金なんて…は?1週間!?」
「ごめんなさい!そういえば伝えるの忘れてました〜!」
影の中からマリーナの声がした。そんな大事な事早く伝えてくれよ!俺1週間も寝込んでたのか。そりゃミンギンジャンも怒る訳だ。
「わかったわかった!支払いが遅れたのは謝るから。で、いくらなんだ?」
「しめて36000Gだ。宴会代と、お前の復活にかかった材料費だ。」
「さんまんろくせん!?結構な金額だな。わかった払う。ただし、分割で頼むよ。」
「…ふざけてんのかてめえ。」
ミンギンジャンが胸ぐらを掴んで体ごと持ち上げてきた。このガリガリの身体のどこにそんな力があるんだ?
「オイ!俺は払わないなんて言ってない!そんな大金今すぐ用意出来ない事なんてお前だってわかるだろ!?」
「それは『そっちの都合』だ。俺は知らん」
「ならいつまで払えと期限を決めなかったお前が悪い。それは『お前の都合』だ。俺は払うと言っている。」
乱暴に投げ飛ばされた勇者にマリーナが駆け寄る。見るに見かねたのだろう。
「パパやめてよ!マルマルさんはお金払うって言ってるんだから!そんな乱暴させるために連れてきたんじゃないわ!!」
「引っ込んでろマリーナぁ。生意気言うトンマに分からせてやらなきゃいかんのでな。」
そう言うミンギンジャンの顔面に100G金貨を投げつけてやる。
「ッ痛!何しやがる!…あん?」
「先ずはそれだ。さっさとしまえ。」
「何言ってんだてめえ??」
「いいから仕舞えってんだ!金返してんだろ!」
いきなり凄んだ勇者に、ちょっとだけミンギンジャンが押された。良し!
「おら、しまったぞ?残りは?」
勇者は今度ミンギンジャンの手に向かって金貨を投げる。
「てめぇ…ふざけてんのか!?あぁ!!」
「悪いな。俺はこうやってしか金は返せん」
「おい、いい加減にし…」
「やめてったら!いい加減にするのはパパの方よ!」
ミンギンジャンにぶん殴られる寸前でマリーナが割って入ってくる。
「マルマルさんちゃんと払う意思を示してるじゃないの!なんでそんな人に乱暴するのよ!」
「マリーナ!これは商売なんだぞ。こんなこれっぽっちずつ払われたって、苦労するのは俺達なんだ!わかってんのかぁ!」
「払いたくてもコレでしか払えねーんだよ。しょーがねーだろ」
「トンマぁ!てめぇは黙ってろ!」
「いいえ!マルマルさんは100Gずつしか払えないのよ!」
「あん?そんな事ある訳ないだろ??」
「マルマルさんは…呪い、そうよ!呪いでお金が少量しか払えないのよ!」
「「は、ハァ??」」
「マルマルさんは冒険の果てに、勇者という絶大な力を手に入れたわ!でもそのかわり、多量のゴールドを扱うことが出来ない呪いにかかってしまったの!」
「なんだーそりゃ?聞いたことねーぞ??」
「それは当然よ!だって、マルマルさん以外に勇者って職業の人見た事ある??」
ミンギンジャンは押し黙って考え事を始めた。いいぞマリーナ、咄嗟の機転でついた嘘が効いてる!後は…
「おらもういっちょ受け取れ!」
「…おい!やめろ金貨を1枚ずつ渡すのは!」
「ミンギンジャンよ。別に俺の事は信じなくていーぞ。ただなぁ。商売人として、その手の中にある『モノ』は信用した方がいいんじゃねーのか?」
ミンギンジャンがまじまじと金貨を見つめる。
「 …この『大陸』じゃ、なんでも『アリ』か…」
「なんだって?」
「なんでもねぇ!分かった、分割で払うのは許そう。ただし、いつまでもダラダラ払われたんじゃあこっちも困る。」
「なら、俺が毎日ここで働きながら金を返すってのはどうだ?」
「「はあ??」」
「どうせ俺がいついつまでに払うなんて言っても信用がないだろ?だったら毎日ここに来て働きながら、タイミングを見てその都度アンタに100G払う。それなら、俺が逃げないように監視する必要もないだろ?」
「…うーん…」
「ただ俺にも色々と都合がある。終日働くのは無理だから…そうだな。午前中だけってのはどうだ?食い物屋なんだから、午前中の仕込み作業の方が忙しいだろ。その忙しい時間帯を手伝う。アンタは金も返してもらえるし、毎日来るなら監視も要らない。そして毎日タダで労働力が手に入る。俺があんたの立場なら、こんな美味しい話断るぐらいなら商売人辞めてるぜ?」
「…この話でてめぇに何のメリットがある??」
「アンタの『味』、嫌いじゃねぇからな。仕込みしながら盗ませてもらう」
ミンギンジャンがニヤリと笑った!良し!効いてるぞ!
「…仕込みは6時からだ。遅れたらその分借金に追加する。マリーナぁ!そのトンマを表に連れてけ!!」
そう言ってミンギンジャンは納得し、また奥の暗がりに引っ込もうとする。
「オイ!待てよミンギンジャン!!」
「あぁ?なんだまだ用か??」
「交渉成立したんだ。『仕事』が決まったんならコレが必要だろ?なぁ、『雇用主』さんよ。」
勇者は右手を開いて突き出す。その意図はミンギンジャンにも伝わったようだ。
「…ったく、喰えねぇガキだ。サボったりしたら承知しねぇからな。」
ミンギンジャンも右手を突き出し、叩きつけるように『握手』をする。これでなんとかこの場は丸く納められた。
「やりましたねマルマルさん!明日から、よろしくお願いしますね!」
「あぁマリーナ、さっきは助かったよ。それと…」
勇者はぐっとマリーナを抱き寄せる。
「え!?やっ!ちょ!!」
「今度俺をハメたら、ただじゃ済まさねぇからなマリーナ。一生俺に頭上がらない身体にしてやっても良いんだぞ?」
「は、はい。ごめんなさい…」
マリーナの耳元で釘を刺しておいた。これで彼女は二度とこんな事しないだろう。多分。
倉庫を出て、階段を上がると大魔道飯店の厨房の裏手に出た。どうやらここは店の地下だったらしい。厨房を抜けてフロアに出ると…
「「「ウオォォォオオォォオォ!!!」」」
溢れんばかりの大喝采が待っていた。
Bパート終了→
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