NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

激しく補助席希望

第17話C そして勇者は面接を始める。みたい!



「なんだろう。最初に来たアンジェラが1番まともに思えて来るんだけど…」

「じゃあメンバーはアンジェラさんにサイカさんで決まりですか??」

「なんでサイカさんが確定してるんだよ!あの人主婦だぞ!?」

「だってぇ!冒険長引いたら色々と生活面で大変ですし…」

「何面倒見てもらう気満々なんだよ!そもそもマリーナは店番あるからパーティについて来れないだろ??マリーナが居ると思ってるサイカさん1人になっちまうぞ?」

「それは…そうですけど…」


「…で?倉庫から戻ってみれば作業がひとつも進んでないみたいだが、俺は一体誰を殴ればいい??」

「げ!!ミンギンジャン!」

「私配達の確認行ってくる!!」ダッ

「マリーナずりーぞ逃げやがって!!」

「そうかそうか。トンマが俺の相手になってくれる訳だな?」

「すいませーん、もう空いてますかぁ?」

「ミンギンジャン、残念ながらランチタイムだぜ?俺はフロアに出なきゃならん。」ダッ

「ッチ、クソガキめ。」

 本日のランチ最初のお客様はタリエルだった。

「なーんだ、タリエルか。冷やかしなら帰んな。」

「ちょ!お客だよ!?なんなのその接客態度!!」

「へーい。じゃあご注文どうぞー。」

「んー。マルたんって何か料理作れるの?」

「俺?俺は料理作るの許可されてないか何も出来ないよ。」

「なーんだ、残念。お昼前にちょっと甘いの食べたいなぁ〜。オススメのスイーツある?」

「11時過ぎに来てスイーツはないだろ…」

「いーの!甘味は別腹!はよ持ってきて!」

「はーいスイーツ一丁入りまーす」

(何故かタリエルの顔を見ると無性に意地悪したくなるんだよなぁ。なんでだろ?)

「ミンギンジャン、スイーツの注文入ったんだけど、ウチで1番でけぇスイーツってなんだ?」

「は?でかいスイーツ?昼からそんなもん頼む奴がいるのか?」

「おー知り合いが来てるのよ。タリエルな。」

「あぁ、あのグールか。ちょっと待ってろ。」

 ミンギンジャンはスイーツの素材を選びに倉庫に降りていく。その間ヒマなので勇者は接客しにフロアに出る。

「出来た!?」

「まだだよ、そんな早く出来る訳ねーだろ」

「まだかー、お腹空いて来たなぁ」

「だったらメシ頼めば良かったのに。ここのランチ中々いけるぞ?」

「へーそうなんだ。いつもお昼はお弁当頼んでたから食べに来たことあんま無いんだよね。ま、お弁当も充分美味しいんだけどさ。」

「そうかタリエルは店番あるからあんまり食べに外出ないのか。ん?今は何してるの?」

「たまーにある冒険者ギルドへ出張鑑定してたんだー。今は帰りの途中。」

「そう言う事、じゃあ今度暇出来たらメシでも行くか?たまにはそう言うのもいいだろ。」

「え!?いいの?マルたん。」

「なーにメシぐらい奢ってやるさ。その分世話になったし。」

「あ、ありがとう。その…マルたんから誘ってくれるなんて思ってもみなかったから。」

「別にメシぐらい…うん?」

 なんだか急にしおらしくなったタリエルを見てハッとする。

(アレ?俺もしかして今、ナチュラルにデートに誘った?いやいや、ただメシ食うだけだし!つーかメシ食うって言っても大魔道飯店だし…)

「「………。」」

 赤くなった2人に沈黙が訪れる。

「いや」「あの」

 2人して同じタイミングで話し出してしまう。そしてまた沈黙が訪れる。

「おーい出来たぞ、運べ」

「お!おう、サンキューな、ミンギンジャン」

「はぁ?別にお前に作った訳じゃねーぞ?」

「そ、そうだったな!アハハ!」

「気でも狂ったのか?さっさと運べ。」

 カウンターの上に準備されたのはなんとも繊細で可愛らしいパフェだった。

「今ある果物で作れる1番なのはそれしかねぇ。昼飯前に菓子食うなって伝えとけ。」

「お、おう。ミンギンジャン、こんなのも作れるんだな。」

 ダンという大きな音を立ててまな板に包丁が根本まで突き刺さる。

「こぼさないように運びます!料理長!!」

 ゆっくりとパフェを運ぶ勇者。タリエルは運ばれてきたパフェを見るなり破顔する。

「きゃー!!可愛い!美味しそう!!!これ、誰が作ったの?」

「ウチの可愛いコックさんです…」

「マジ?」「大マジ」

「ねぇマルたん。従業員としてお願いがあるんだけど。」

「この繊細なパフェ、あまりに可愛い過ぎて何処から食べればいいかわからないから、『食べさせて』くれない?」

「な!何言ってんだよ!普通に食えよ!」

「えー出来ないの?そんな接客も出来ないでサービス業やってるなんて恥ずかしいわねぇ〜」

「いやコレサービス業じゃないだろ!?」

「私だって仕事に対しては真摯に対応したでしょ?マルたんにも同じ事を要求しているんだけど、出来ないのかなぁ〜」


「で、出来らぁ!!」

「良し!じゃあお願いしますね?店員さん?」

 ヤケになった勇者はスプーンでパフェを優しくすくう。プルプルと震える手をタリエルの口元に進める。

(落ち着け、コレはただのサービスなんだ…そう、サービス!)

「アーン」

タリエルが可愛らしく口を開けて待っている。唇の先に届くまでもう少し。

「そう、もうちょっとです、落ち着いて、マルマルさん!!」

(そう、落ち着け俺!変に意識なんかするからおかしくなるんだ。冷静に、冷静に…)

「あ!あとちょっと!もうちょっとです!」

(そう、後ちょっとなんだ。そうすれば俺は証明出来る、仕事に熱意を持って取り組む男だと…「ん?俺の心の声だと思ってたけど、なんか聞こえ…」





 窓の外から張り付くように、興奮したマリーナが覗いていた。









第17話 END

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