NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

激しく補助席希望

第17話B そして勇者は面接を始める。みたい!



「へぇ〜ヤンドさんはモンクと拳闘士の職業を中級まで納めてるんですね!」

「ハイ。今はとりあえず戦士として活動してますけど。」

「凄いッスね〜鎧じゃそのガタイ隠せてないですもんねぇ!」

「いやぁ恥ずかしい。まだまだ修練の途中ですので、そう褒められると困りますよ。」

「どうしてモンクと拳闘士の職業選んだんですか?」

「自分がいた村はとても貧しくて、冒険者になるのにまともな武器も揃えられなかったんですよ。それで、素手による格闘術を学んで武器要らずの戦闘方法を学びました。」

「凄いなー!武器は鍛えた己の肉体って奴ですよね?」

「いやいや、本当に武器が買えなかっただけなんです。最近じゃそれもきつくて、貯めた蓄えを使って戦士に転職したんですけど…」

 そう言って彼…ヤンドは鎧の小手の辺りをさする。

「今はその背中に背負った斧で戦ってるんですか?」

「えっ!?あぁ、はい。…そんな所です。」

 背中に背負ってる黒い斧の事に触れた途端、何故かヤンドは焦りを見せた。

「あ、あの。なんでも誰でもって事で募集に立候補したんですけど、ひとつお願いがあります。」

「はい、何ですか?」

「自分はパーティ組んで戦う時は、バック対処専門で戦ってるんです。」

「バック対処?ですか??」

「はい、なのでフィールドで行動する時は少し離れた後方からパーティを追いかけます。」


 バック対処とはプレイヤー同士で行う戦闘の対処方法のひとつで、あえてパーティを少人数だけ切り離し、エンカウント圏の外に配置するという戦闘方法だ。後方からのエンカウントを少人数側で1度受け止めたり、主力パーティのエンカウントに後から増援という形で遠距離攻撃を仕掛けたりする。基本その少人数側には接近と防御に特化したキャラを1人は配置するのがセオリーだが、ヤンドはそこのポジションを専属で担当すると言っている。正直パーティを分けられる程の戦力は集まってないので、彼にも前線で戦って欲しいと勇者は考えた。

「えーっと…何でバック対処専門なんです??」

「その、自分の攻撃範囲がちょっと…広めに取らなきゃ周りも巻き込んでしまうかも、しれないので…」

 なんだかヤンドは急にお茶を濁し始めた。正直怪しい。

「…パーティから離れた方が自分の能力を生かせるって事ですかね?」

「はい!そんな感じです」

「わかりました、仲間と話しあってから決めますので普段街のどこにいるか教えてください。」

「あ、あと一つ聞きたいんですけど、このパーティの報酬ってどういう取り決めになってますか?」


 基本冒険者でパーティを組む時は、報酬の取り決めをしっかり行ってからにする。全てその都度山分けもあるし、前もって金額を払って成功後に必要分を出すという方法もある。これらをしっかりと決めておかなければダンジョンの奥で裏切られたりと揉めて悲惨な結果になる。

「えーっと、大きくは決めてなかったんですけど…とりあえず、1戦闘につき100Gは私が保証します。」

「え!?100Gも貰えるんですか!?」

「ハイ!なのでヤンドさんにも積極的に戦闘に参加して欲しいんですよね。」

「あー…わかりました!どうか前向きな検討よろしくお願いします!」

 そう言ってヤンドは立ち上がり握手を求めてきた。熊との戦闘を考えると1戦闘で1人100Gは中々にいい話である事は間違いなさそうだ。
ヤンドを見送った後マリーナが話掛けてきた。

「良かったですね!2人も志望者が現れて。」

「うん。だけどなーんか正直パッとしなかったなぁ。」

「あ!そんな事言ったら失礼ですよ!」

「それは重々承知だけど、でもなぁ。…ま、初級レベルで募集かけてもそんな凄い人来ないよなぁ。」







「すいませ〜んご無沙汰しております〜」

「あ!サイカさんいらっしゃいませ!パパは倉庫に居ますので呼んで来ますね。」


 しばらくしてから今度はどう見ても主婦っぽい人が店を訪れて来た。エプロンというか、前掛けをつけた年上のお姉さん的な雰囲気の人だったので、勇者は厨房の奥からチラッとだけフロアを見て、関係無いなと作業を続けた。

「ごめんなさいマリーナちゃん。今日は料理長に用があって来た訳じゃないのよ。」

「あれ?そうなんですか??じゃあお弁当の注文でしょうか?」


「えーっと、ココに来れば勇者君って人に会えるって話で来たんだけど…」

 勇者は突然自分の名前が上がってギョっとした。全く面識の無い人だ。

「はい、えーっと俺ですけど…どちら様でしょうか?」

「パーティ募集の件で来ました、サイカ・シクノノビィです。」

「えー!?あなたが…ですか!?すみませんが、職業は?」

「はい!主婦です!誰でもって事だったので応募してみました。一応、昔若気の至りで冒険者登録してましたので。」

 勇者は心底募集要件を適当に書いた事を悔やんだ。ハックに言われた次の日に冒険者ギルドへ行って変更を掛けようとしたのだが、既に掲示された募集は最低1週間はその効果を変更出来ないとの事だったので諦めていたのだ。まさかその辺にいるような主婦まで来るとは思いもしなかった。

「つい先日、一人息子が冒険者として旅立って行ったので…私も時間が出来てやりたい事をやってみようかなぁーって思い切ってしまいました。」

 この人は完全に余暇を利用した習い事のような感覚で来ている。どう追い返そうか考え始めた時にマリーナが余計な口を突っ込んでくる。

「え!サイカさんパーティメンバーに立候補するんですか!私もマルマルさんと(なぜか)パーティなんですよ!」

「えーそうなの!?出来れば知り合いがいた方が心強いし、私のスキルも冒険に役立ててくれればと思うんですけど。」

「えーっとサイカさん?ですか?スキルは何をお持ちに?」

「はい!炊事に洗濯、お掃除等々一通りはバッチリです!!」

「あっはい……」

「サイカさんも(一般人枠として)来てくれれば嬉しいな〜。ねぇマルマルさん?」チラッ

「いやそう言われても、流石に主婦の方はちょっと…この先危険な事も有るでしょうし。旦那さんは良いって言ってるんですか?」

 マリーナがまずいという様な表情をしてこっちにアピールしてくる。

「ん?なんだマリーナ?どうかした…」

「主人は、先に向こう側へ旅立ちました。12年前に…」

(おっと1番ヤバい地雷踏んじまった!)「す、すいません。配慮が足りない質問でした。」

「いいんです。だって、あの人はいつも…私のそばに…うぅ、アナタァ〜〜わだじはいづまでも愛じでまずがらぁ〜」

 突然サイカは旦那さん(遺影)を取り出し泣き出してしまった。

「ご、ごめんなさい!!変な事を聞いてしまって!どうか落ち着いて!」

「アナタァ〜!わだじを置いてかないでぇ〜〜!!」

(マルマルさん!サイカさんは旦那さんの事思い出すといつもこうなんです。気が済んだら泣き止みますから)ヒソヒソ

(いつもこうなの!?ってか遺影持ち歩くって凄いなこの人!)

(私は旦那さんの事見た事無いんですけど、昔パパと一緒にパーティを組んでた事があるらしくて…)

(あーそれで知り合いなのね!でもどうしたらいい?なんとかして泣き止ませないと…)

「それで、勇者君?返事はいつ頃もらえるのかしら?」

「切替早っ!!」

「いつもこの辺でお買い物してますから、決まったら教えて頂戴。いい返事期待しているわね。」

 そう言ってサイカはニッコリと笑って帰って行った。


Bパート終了→

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