NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

激しく補助席希望

第22話B そして勇者は絶叫の中で静かに横たわる。みたい!?




 その日の夜はサイカの家で食事会となった。みんな慣れない敵を相手にしたので疲れてはいたが、一度戦いの場を過ごした事により仲が深まり、絆というものが形成されていくのを感じる事が出来たイベントだった。会話の話題はもっぱら勇者が戦闘で役に立たないという事ではあったが。

「よーし、そろそろ遅いしお開きにしよっか!片付け手伝うよ。」

「あら助かるわ勇者君!ありがとうね!」

「魚、美味しかった。」

「うふっよく食べたわね。偉いわ」

 アンジェラの頭をクシュクシュと撫でるサイカ。アンジェラは恥ずかしそうな嬉しそうな顔をしている。

「この重たいのどっちに運べば良いですか?」

「ヤンド君、調理器材は奥に運んで頂戴!いや〜家族が増えたみたいで嬉しいわぁ〜!!」

 1番喜んでいるのはサイカだ。息子が旅立ってからはしばらく一人で生活していたのだろう。料理を作ってる最中もとても嬉しそうだった。

「…また、お邪魔しても良いですか?」

 嬉しそうなサイカを見て、勇者はそう言った方が喜ばれると思った。

「モチロンよ!今度はタリエルちゃんも連れてきてね!」

 なぜそこでタリエルの名が出たのかは釈然としなかったが、勇者も喜ぶサイカを見て心が温かくなった。



 一通りの片付けが終わったその後に解散となり、其々の家のある方向へと歩いて行く。モチロン勇者はハックの錬金術工房へ向かうのだが、同じ方向へと歩いて行く人は居なかった。


「いや〜サイカさんの家庭料理美味かったなぁ〜。流石と言った方が良いのかな?年季が違うねぇ。」

 別に誰も周りにいた訳ではないが、思わず口に出してしまった。

「おまけにブドウ酒までご馳走になっちゃって…おぉっと、ぶるっと来ちまった…ここらにトイレなんてないか?」

 お酒を飲んでから歩いた事により尿意が来たが、この見慣れた通りに公衆トイレなんてないのはわかりきっていた。

「どっかそこらでするか…お、丁度いい石があったな。どっこいしょ。」


 帰る家まではまだまだ遠い。持ちこたえられないと思った勇者は立ちションしようと石の近くに寄る。


「さーてと…ん?この石…うわぁ。俺の墓じゃん。」

 もう少しでひっ掛ける寸での所でそれは手違いで作られた自分の墓だった事に気付いた。どうりで見覚えのあると思った訳だ。すぐ近くに大魔道飯店がある。

「手違いといえど流石に自分の墓にションベンはかけたくないな…よっと。」

 墓石から少し離れた所にある木に引っ掛ける事にして、勇者は用を済ませた。

「はぁ〜スッキリ〜」

「あの」

「うわぁ!!!!」

 急に背後から女の人に声を掛けられて驚く勇者。あと数秒遅かったら衛兵を呼ばれる所だった。

「何!?はい?誰!?!?」

「いや、落ち着いて、ちょっと。」

「ななんすか?俺なにもしてないっすよ!!」

「だから落ち着いてってば!静かにして。」

「なんです??何?誰?!どなた???!」

「話を聞いてほしいだけだから!」


 そう話を振ってくるその女の人は初めて見る顔だった。ピンクの髪につば広のとんがり帽子。真っ黒のローブに茶色いポーチ、手にはホウキと随分古めかしいスタイルの魔女っ子がそこにいた。勇者もなまじ飲食店でのバイトをしている分、この街の冒険者や食堂利用者なら雰囲気や人相ぐらいは覚えているが、全くの初対面の人だ。

「こんな夜更けに何ですか?始めましての方ですよね?すいません、もうパーティの募集は打ち切りましたので、残念ですが…」

「違います!ちょっと黙って聞いて!!」

 なんだかそのクラシカル魔女っ子は切羽詰まっているというか、怒ってる感じだった。何故か勇者をにらんでいる。

「あなた、人間ですよね?」

「はい?種族はそうですけど…」

「そういう意味じゃなくて!あの、DM送ろうとしましたよね?」


「はいい??」

 思わず勇者はキョトンとしてしまった。全く持って何の事かさっぱり見当が付かなかった。


「何の事です??」

「だから!あなた専用端末にアクセスしましたよね?テストプレイの後!!」

「はぁ? …はぁぁ???」

「建物から出て来た所から後をつけてたんです。その…さっきおしっこしようとしてましたよね?それで確信したんです。」

「はぁっ!?俺がおしっこぉ!?ナーンの、事かっぜぜ、全然おま思いあたららないんだけどっっ!!」

 バレると思い必至にシラを切ろうとする勇者。

「いや、もう良いですから!バッチリ見てましたし!」

「いやぁ君のかんかか、勘違いだと?思うけど??」

「良いです!話続けますけど、それで確信したんです。普通絶対にそんな事ないからハッキリ自信持って言います。あなた、『人間』ですよね?プレイヤーの。」




 先程から何を言ってるのか全くわからないが、何か頭の奥でバラバラになったパズルのピースが組み合わせられていく。少しずつ形になり、その言葉が浮かんでくる。





『人間』
『DM』
『専用端末』
『テストプレイの後』
『人間』

…ぷれいやぁ…







 そして最後にトドメを刺してくる。魔女っ子はポケットに手を入れてそれを取り出し、こちらに見せて来る。『黒いメニューボード』を。










「………うぁああぁああぁああぁあぁぁあぁあぁあ!!!?!?!???!?!??!」


 ソレを見て認識してしまった勇者は最早絶叫する以外のリアクションが取れなかった。そしてその大絶叫を聞いて『近くにある』1つの建物の扉が開いた。





「うるっせぇぇぞトンマぁぁ!!なーぁに夜中に騒いどんのじゃあぁ!!」




寝巻き姿のミンギンジャンが大魔道飯店の玄関から半身を出し、全力でフライパンをぶん投げて来た。凄まじい正確性でまっすぐ勇者の頭にぶつかる。そして全力でドアを閉めて帰っていった。


「グァッ!!」バタァァン


 勇者は小さく悲鳴をあげて、その場に倒れて気絶してしまった。



 呆気に取られていた魔女娘だが、大事な事に気付き勇者を揺さぶり起こそうとする。














「ちょ!ちょっと!!あなた!起きてよ!!  …今、出てきた人に『天馬テンマ』って呼ばれてなかった!?ねぇ!起きてってば!!」












 ファステの夜は、まだまだ長い。










第22話 第2部  END

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