NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

激しく補助席希望

第23話B #1 『残念勇者の伝説』


 皆が書斎の円卓に座り、マリーナがコーヒーを準備する。


「ついに我々は本格的に行動を開始する!先ずは前にも伝えたがこの地方に伝わるザゥンネの勇者についての伝説だ。」

「残念勇者の伝説…プクク」

「タリエルさん、可愛そうだから笑ってはいけませんよ。」

「残念マルたんの伝説…ぶっ」

「オイどさくさに紛れ込んで俺の事笑ったろ。」

「いいえ〜笑ってなんか無いわぁ〜ウクク!」

「ユーシャちゃんと話聞いて。」

「な!俺かよ…」ブツブツ

「結局の所分かったのは、ザゥンネの領地内のどこかにその祖先の墓があると言う事だけだ。先ず第1の目標は領主の館に侵入し墓のありかと鍵を盗む。第2の目標はその祖先の墓標に何と刻まれているのかを確認する事だ。」

「「「おぉ〜〜」」」パチパチ

「うぉーついに本格的な冒険って感じだな!これこそまさに正統派RPG、レッツエンジョイサウタナライフ2って奴だ!」

「うっわー何そのダッサイ掛け声。」

「うるせー!前作ではコレが定番だったんだよ!」

「ハック君。館の侵入にはみんなで行くの?」

「最低人数で行動しようと思う。サイカ殿、そなたも隠密行動には自信はあるだろう?」


 サイカは今まで見せた事の無いような邪悪な目でクスッと笑う。

「いいわ。私が行きます。」

「ま、マルたん!ちょっとサイカ怖いんですけど〜!!」

「あんな顔俺も初めて見たぞ!?サイカさんは一体何者なんだ??」

「ヤンド君も自分の事しっかり話したし、私も自分の過去を言うべきね。知ってるのはハック君だけみたいだし。」

「サイカさんの過去…自分も知りたいです!」

「え!ちょっとサイカさんって凄い人なの!?私と同じ一般人枠じゃ無かったんですか!?」

 状況を飲み込めないマリーナの肩にアンジェラが手を置く。


「オンナの秘密が、オンナを強くする!」ビシッ

「いやそれダンジョンでサイカさんに言われたまんまのセリフだろ。」

「前にリーダーにも聞かれてましたけど、サイカさんは一体何者なんですか??」


「私は…… 昔、『悪い女』だったの。」


「「サイカさんが悪い女…」」



 そのムチムチぷりんな身体で男遊びに走る20代前半のサイカ。色々なパーティに所属しては男共と関係を持ち、そこを壊滅させて持ち物有り金を奪う。彼女の為に泣いた男も女も数知れず、今日も獲物を狙いに夜の街を行く。

…的な妄想シーンが流れております。15歳未満閲覧禁止



「……」ドカッ

「痛って!何しやがるタリエル!」

「10G賭けても良い。絶対えっちな事想像したでしょ?」

「何おこんきょにそ、そんな事お…」

「ほーらはぐらかした。サイカでえっちな考えてたんでしょ!顔を見れば分かるわよ!」

「かお?一体どんな顔してたって言うんだ?」

「こんな顔。」

 タリエルが指を差す。その先にいたのはヤンドだった。ヤンドは涙と鼻血を流しながら険しい顔で握り拳を作っている。

「いけません…いけませんぞサイカさん!まだ貴女ならこちらに戻って来られる。遊びは辞めてこちらに…あぁ!けしからん!けしからんですぞ!!…」

「「おおぅ」」

「ヤンドはモンクの修行で禁欲中。」

「詳しいんですね。アンジェラさん…」

「冒険者として、職業の特性を知ってるのは普通!!」ドヤァ

「ま、そんな訳で昔取った杵柄って奴で隠密行動辺りはちょちょいのちょいってカンジなのよ。うふふっ。」

「もしかして、ニンジャ?」

「ざーんねんアンジェラちゃん、くノ一よ。それも上級の。」

「「さ、サイカさんがくノ一…」」



以下略




「マルマルさん!話が全然進まないのでやめて下さい!ハックさん怒ってますよ!」

「すまんハック。え?つーかなんで俺が謝んの?」

「オホン!いいかな、皆の衆?」

「「「はぁーい」」」

「パーティが行動するに当たって、クエストを受けなければ基本的に街からは出られない。しかし、その問題についても解決済だ。いつでも問題なく外に出られる。」

「え!?どんな方法なんだよ?俺一人で出ようとした時止められたんだぞ。」

「ふふふ、それはその時までの秘密としておこうではないか。」

 ハックは不敵な笑いを見せる。本当に自信があるのだろう。

「編成だが、まずは領主の館侵入は4人ぐらいに絞りたい。とりあえず私は確定だが、後3人を選出する。立候補はあるか?」

「はーい私行きまーす!」

「よし、まずはサイカ殿。他に誰か居ないか?」

「自分は潜入には向いてないので…ちょっと…」

「誰も出ないなら出るよ?ユーシャは?」

「うーんどうしようかなぁ。俺潜入には向いてないと思うんだけど、行ってみたい気持ちは有るんだよな〜。」

「ブレイブハートが行くなら私は影の中から見守ってるよ。」

「お?ナユルメツなら誰にも気付かれずに行動出来るからな。よし俺も行こう。」

「マリーナと<現金の亡者キャッシュ・グール>は?行かないないなら私行くよ?」

「私は無理です!不法侵入なんてそんな…」

「私だってそんなの無理だよ!戦闘系のスキルなんてほとんど持ってないし!てか、なんで通り名呼びなのさ!」

「…いや、ここはソナタに行ってもらおう。タリエル。」

「は?」「へ?」

「店の営業時間外なら問題無かろう。」

「いやいやいや!待ってよハックさん!」

「そうだぞハック。ここは戦力的にアンジェラに頼んだ方が良いんじゃないか??」

「ザゥンネ家の領地を散策するにあたってタリエルは最終手段にも匹敵する活躍を見せる。私はそれを期待しているのだ。」

「「ええっ!?」」

「頼むぞ、タリエル。」

「って言われても何の話か分かんないし、困るんだけど!ちょっと!!」

「と、言う事で、先発メンバーは決まったな。後発メンバーについては必然的に残りのメンバーになるが、もし先発の行動がザゥンネ家にバレた時にはそのまま直行で合流し、祖先の墓に向かう可能性もある。皆抜かりなく準備をしておくように!」


「「「おぉーー!!!」」」

「みーんなやる気だなぁ〜!俺も頑張るよ!みんなヨロシク!」

 メンバーは皆勇者にサムズアップをする。勇者もそれに返す。

「さぁ、先ずは明日の出発の為に皆準備をして欲しい。最低2日は泊まりになるだろう!」



「「おぉーー!!」」「えっ?」


「「ん?」」「泊まりなの!?」

「領主の館まではその日に着くが、祖先の墓までは領地の端まで向かう事になる。モチロン泊まりだが…勇者殿、何か不都合な点があるのか?」


「いや、すまん。俺借金返さなきゃいけないから、泊まりは無理。」





「「「ええぇぇ〜〜〜。」」」







第23話 END

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