NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

激しく補助席希望

第24話A #2 『残念勇者の伝説』


 「トンマぁ!そっち3人前追加!仕込みさっさと終わらせろ!」

「おー!任せとけ!」

「マルマルさーん!洗い物お願いします!」

「はいよー!!」


「…トンマの奴、最近また調子良くなってきやがったな。」

「あら、珍しいわね。パパが人の心配するなんて。」

「バカヤロウ。心配なんかしてねーわ!」

「そう言う割には気になってたんじゃないの?」

「うるせぇ!仕事に戻れ!」

「はーい」

(とは言ったものの、この前までの落ち込み様はなんだったんだ?トンマの奴、カラ元気が出るなら最初っからそうしろってんだよ。まったく。)

 そう心の中で思う、ミンギンジャンであった。




ー12時ー


「いよ〜っと、今日のノルマ終わりっ!ほいミンギンジャン!」チャリン

「おう。まかない食ってくか?」

「すまん!今日は先約があるんだ。明日また喰わせてくれよ。」

「…そうか、わかった。ちなみにお前、明日が何の日かわかってるのか?」

「え?明日??何かあったっけ?」

「お前は本当に本物のトンマだな。金の返済だよ。」

「え?!おい期日作ってない約束だろ!?」

「じゃなくてだな。ホラ…」

 ミンギンジャンはかなり大きく膨らんだ袋を手に持って見せる。なんだか金属の擦れる音がその袋からしてくる。

「??」

「本当にわかんねぇのか!?返済完了だよ。ホラ、ここに32400Gある。」


 そう言われて一気に心が跳ね上がる。

「マジか!?つー事は…!!」

「明日3600G返せればお前の借金はチャラだ。」

 勇者は小さなガッツポーズを取る。そこまで酷い苦労はしなかったにせよ、男として約束は果たせた。それがとても嬉しかった。

「教えてくれてありがとう。マリーナにもよろしく言っといてくれ!またな!」

「あ、あぁ。」

 やけに素直な勇者の反応に思わず拍子抜けしてしまうミンギンジャンだった。







鑑定局ファステ支部

「ここに来るのも久しぶりだな。おーい、タリエルゥ〜〜。」

「え!?あ、はーい!!」

 店の奥から書類を抱えて運んでいるタリエルがかけて近寄って来る。思いがけない勇者の来訪にあからさまにテンションが上がっているようだ。


「どうしたの〜!?マルたんがお昼に来るなんて珍しいじゃん?」

「ちょっと鑑定の用事もあったんだが…その前に…」ドキドキ

「ん?なぁに?」

「飯、食う約束。してたよな?確か。」

 少しずつその言葉を理解し始めるタリエル。完全に理解した今は耳まで真っ赤だ。

「して…たかな?してたよね?」

「あぁ。だから…その。今からどうだ?」

「…行く!!ちょっと待ってて!!」

 猛烈な勢いで店の奥に引っ込むと、ドタバタと書類や荷物を棚にしまい込むタリエル。カウンターにクローズの立て札を立てて、全力疾走で戻ってくる。

「出来た!行こ!!」ガシッ

「オイ慌てんなって!…つーかなんで腕掴むんだよ?」

「うふふ〜〜それはもちろん、マルたんの気が変わらないようにだよ〜。」

「あのなぁ。一応言っとくけど俺はパーティの仲間として親睦を深める為に誘ってんだからな!変な勘違い起こすなよ?」

「はぁ〜〜い。」デレデレ

 超がつく程のご機嫌笑顔全開でタリエルは勇者の腕にしがみつく。勇者は何故か照れてしまいタリエルの顔が見れなくなってしまった。

「じゃあ行こっか。って言っても俺ミンギンジャンの店以外で飯屋知らないし適当に探しながら歩く事になるけどいいか?」

「うん!マルたんのお任せでおねがーい!」


 そして2人は腕を組みながらファステ支部を後にするのだった。








 …ガタッ


「み、見ちゃいましたね…」

「あぁ、見てしまったな。」


 建物の陰から覗く2人組、1人はエプロン前掛けをつけたエルフで、もう1人は全身にベルトやチェーンをつけたダークエルフ。


 興奮し鼻息を荒くするマリーナと、新しいオモチャを手に入れた子供のような顔をするハックだった。

「コレはもう…お弁当の配達どころじゃありませんね!」

「私は一向に構わないが…店主殿に怒られてしまうのではないか?」


「おーい!2人共何してるんですか?」

「!!ヤンドさん!ちょうどいい所に!」

「すまぬヤンド殿、パーティの一大事である故大切な頼みを其方にしたい!」

「えっ?えっ?」

「このメモとお弁当!配達お願いします!それが終わったらパパの所行ってお手伝いして下さい!」

「えっ?ちょ!マリーナちゃん!?」

「頼むぞ!ヤンド殿!!パーティの未来は君にかかっている!」


 そう言ってヤンドにお弁当の山とメモとエプロンを渡す。そして2人は街の路地に隠れて行った。

「えぇ〜〜…」

 訳も分からず1人残されたヤンドが、2人の後ろ姿を見つめるのだった。



Aパート終了→

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