NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

激しく補助席希望

第19話A そして勇者はパーティを結成する。みたい!



 勇者、ハック、タリエルはバランスを崩した仲間の側に寄り、それぞれ声をかける。倒れたというよりは姿勢を維持できずに崩れたと言った感じで、特に別状は無さそうだ。みんな普通に会話も出来る。


 「いったぁ〜〜。いや、もう大丈夫です勇者さん。急に猛烈な頭痛がして、なんだかバランス感覚も一瞬無くなったんですよね。どっちが足元かわからないぐらいの感じでした。」

「大丈夫かよヤンド?みんな偏頭痛持ちなのか?」

「何を言ってるんですか、自分達が偏頭痛なんか持ってる訳無いじゃ無いですか、『NPC』なんだし。」

 今ヤンドはハッキリそう喋った。そして、自分でその言葉を出した事にショックを受け始めた。

「…あれ、なんだっけ?『NPC』??…そうか、自分はゲームの中のキャラクターだったのか。なんで忘れていたんだろうか?」

「お!おいハックッッ!!」

「あぁ、サイカ殿にアンジェラ殿もだ。」

「マリリーたんもだよ!」




「全員に『気付き』が起きたのか?俺とパーティ組んだから??」




 とりあえずみんな姿勢を戻し立ち上がる。怪我をしたり、未だに痛がっている者は無かった。

「いやぁ改めて見れば、なんだか面白い体験だったね。」

「はい、なんだかお空と地面がひっくり返ってしまったような感覚でした。」

「うーん。変な感覚。」

 冒険者の3人はあっけらかんとしていた。だがマリーナは…

「何なの?私達ってゲームのキャラクターなの?本当には生きていないの?…」

「あうー、落ち着いてマリリーたん。私達だって、この大陸でちゃんと生きてるんだよ!今まで感じて来た事は嘘なんかじゃないから安心して!」

 マリーナには受け入れられるのに少し時間が必要みたいだ。


「皆落ち着いて聞いて欲しい、今『気付き』がここにいる者に発生したが、私とそこのタリエルにも以前同じような事が起こった。何故このような事が起こるのかはわからない。だが、勇者殿がここに閉じ込められてしまった事と何か関係あるのは間違いない。そして、それを追求する為に貴殿らをこのパーティに誘ったのだ。」

 冒険者組はヘェ〜と言った軽いリアクションで終わったが、マリーナは俯いたままだ。

「そして、すでに『気付き』を終えてしまった諸君には、私達と同じでこの先誰が同じように『気付き』を得られるのかが判別出来てしまう。闇雲に他のNPCを怖がらせたりしないようにして欲しい。」

「ねぇ、ちょっと聴きたいんだけど。」

「何かな?アンジェラ殿」

「さっきユーシャが言ってた帰らなきゃ行けない場所って、もしかして?」

「その通り、察しが良くて助かる。彼は本当の意味で「人間」だ。」

「でもさ、さっきパーティ組むとき使ってたの紫のメニューボードじゃなかった?」

「おぉ!素晴らしいなアンジェラ殿!良くそこまで目が行き届く、流石の観察眼だ。」

「…別に、こんなの『普通』だし。」

 何故かアンジェラが照れる。

「彼は…勇者殿はプレイヤーだった。テストプレイを終えられ、あちら側に帰られたのだと思ったのだが、急に閉じ込められ空から落ちて来た。」

「え!落ちて来た!?勇者さんが??」

「そーなの。グチャグチャのミンチになってそりゃーもう大変だったんだから〜」

「おいタリエル、その話もういいだろ。むしろ俺が聴きたくない。」

「その後、彼のメニューボードは緑から紫に変わってしまった。ステータス上も今は完全にNPCになってしまっている。」

「そういえば、勇者君メニューが紫色だったものねぇ。帰れないとどうなるの??」

「んー、一応仮説なんですけど、このままだと死んじゃうのかなーって。」

「「「えぇっ!?」」」

「いや、でもこっちの世界にもう2週間近くいるし、流石にそんな時間経ったら死んでてもおかしくないと思うんだよな。」

「考えられる可能性は2つ、こちらと彼方では時間の進み方が違うか、既に勇者殿の身体は失われて、その状態で魂だけがこちらに来ているかだ。」

「…やっぱそうなるよなぁ。ハックもそう思ってたのか。俺も薄々感じてたんだ。もしかしたら既に死んでるんじゃねーかって…」

「勝手に死んでるなんて、決めつけないで下さい!!」

 さっきまで沈んでいたマリーナが大声で怒鳴りながら立ち上がり、勇者を睨む。

「お、おう。どーした?マリーナ??」

「勝手に生き死にを決めつける人は大っ嫌いです!!まだやれる事があるんでしょう?その為にハックさん達とパーティ組んだんじゃ無いんですか!?」

「その通りだ、マリーナ嬢。私達にはまだやれる事がある。」

 ハックはニヤリと笑い、周囲を見渡す。



「そこでこれより第2回、賢人会議を行う!!!」

「「うわぁ」」「おー」「え?え?」「パチパチ〜」

 なんだか様々なリアクションだったが、第2回目の賢人会議は始まってしまった。







「…以上が、勇者殿の置かれた状況とその特異性である。その黒いメニューボードは勇者殿本人で無ければ効果を発揮出来ない事も証明された。」

「そして私がマルたんの第1夫人であ〜る!!」

「はいはい、みんな真面目に話してるからね、向こうで遊んでようねぇ。サイカさんすみませんが相手してもらえます?」

「は〜い、おいでタリエルちゃん。良い子ね〜」

「ちょっと!また子供扱いするし!!もう!!」

「児戯は辞めよタリエル!真面目な話だぞ!」

「マルたんのせいで怒られちゃったじゃん!!」

「いやお前自分が悪いだろ」

「話を続けるぞ。ここで1つ私は仮説を立てた。勇者殿が今デバッグ専用のキャラクターとしてここに存在する前に、ゲーム製作者がこのキャラクターを使ってゲームのイベントを確認する作業をしたとする。そうであれば、デバッグ中にもし接触を持ったNPCはその事を覚えている、もしくは見聞として伝えている筈なのだ。」

「なるほど、つまり『大陸』の各地に伝わる『勇者の伝説』を調べれば、開発者が各地で何をしていったかがわかるって事ですね!」

「その通りだヤンド殿、そしてその何処かに開発者専用の端末が残されているのではないかと私は考えている。まぁ多分だが、普通のキャラクターでは行けないような所だ。」

「でも、勇者って名前の人とか、勇者って職業になったって聞いた事ないけど、本当に勇者君以外にいるの??」

「居るぞ、近くに。この町の領主の祖先だ。」

「さすがアンジェラ殿。冒険者として長い分直感が冴えておるな」

「まぁ…冒険者やってればこのくらい、普通だし」

 また何故かアンジェラは照れた。通り名が普通なだけあって、普通より優れてると評価されると嬉しいのだろうか?何かアンジェラに物を頼む時はその点に注意しようと勇者は思った。


「我々のまず最初の冒険は、この地の領主であるザゥンネ家にまつわる、『ザゥンネの勇者』について調べる事とする!!」

「ざ、残念勇者…」

「彼の血筋の祖先には勇者がいたという事は広く伝えられているので、皆も充分知っているであろう。」

「はい!」「知ってます」

「え、みんな知ってるのか?俺だけかよ知らなかったの。」

「勇者殿はまだここに来て日が浅いのだ、知らなくて当然だ。」

「えーっと、確か領主様が騎士になったのって、ご先祖様をリスペクトしての事だったんですよね?」

「!!なるほど、それで俺が勇者を名乗って怒ってたんだな〜」

「私あの人苦手〜。なーんか固い事ばっかりしか言わないんだもん。お店にたまに用あって来るんだけどさ〜。正直あんまり関わりたくないなぁ〜」

 何故かハックがめちゃくちゃ咳き込んでる。ブドウ酒でむせたのか?他の仲間からも、あまり残念騎士は人気がない事が雑談の中からもわかった。


Aパート終了→

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