神が遊んだ不完全な世界

田所舎人

幕間

 圭介は与えられた私室で着替えていた。手彫りの狐面に浴衣を着て帯を締める。祭のスタイルはこれだという圭介のこだわりが見て取れる。魔素を込めた糸で編んだ巾着を片手にぶら下げ、中には様々な自作魔具を入れていた。懐刀サイズの十夜を帯に差し、長くなった黒髪を後ろで束ねる。
 レスリックの街中でササニシキの特産品を扱う露店で購入した物品だ。紺を基調とし、藍色の川に流れる桃色の蓮の花の刺繍が施されており、圭介は一目惚れをしたのだ。
 夜空には朧雲を透かした十六夜が昇っており、夜目が効かぬものは何も見えないであろう。
 息を殺し、音を殺し、気配を殺す。窓を開けば冷えた空気が流入するが、体表を覆う魔素が冷気を遮断する。弧面を被り、野外へと飛び出す。






 全身を黒で覆う外套を纏い、短弓を背負い、腰には艶消しを施した片手剣を二本差した男がいた。
 男は闇に溶けるように希薄な存在として影のように佇み、一点を見つめていた。郊外に研究所として建設されたフランの医術研究所。
 研究は地上よりも地下が好ましい。その理由は地上に比べ、地下は環境変化が小さいため、研究、実験をする上で誤差が少なく、魔素が地上に比べ地下は濃くなる傾向があるためだ。そして研究所は総じて部外者を排除するための罠も多く設置している。
 男は研究所を見つめている。十六夜が朧雲に覆われ、月明かりが弱くなり闇は更に濃くなる。
 男は動き出す。






 金の髪を束ねた少女は扉を叩く。中から返事はなく、少女は扉を開く。見知った少年の衣服はベッドの上に丁寧に折りたたまれ置かれている。窓は開いており、室内は冷気で満たされていた。少女は部屋を飛び出し、愛刀を携え、自らも館を飛び出し、夜風を切った。






 眼鏡をかけた茶髪の青年は白の髪を持つ小さな少女と緑の髪を持つ少女を見守っていた。白の髪を持つ少女は焦点の定まらぬ瞳を窓の外へと向ける。緑の髪の少女は白い髪の少女を呼びかけるが反応を示さない。白い少女は呼ばれたように駆け出す。緑の少女は白い少女を追い、茶髪の青年は二人を追いかけた。





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