神が遊んだ不完全な世界

田所舎人

主人公(仮)と賞金首

「生きたままって…無理だろ?そんなの」
  尋ねられた俺はそう答えるしかなかった。
「そうだ。普通は無理なんだよ。だけどな、なんで無理だって思うんだ?」
「だって生きた魔術師は体内にある魔素によって抵抗するって言ってたやん」
「そうだ。普通は無理な話。理屈抜きで倫理的、人道的にもやっちゃいけないことなんだ…。だけど、障害となる物を取り除いたら?」
「それってつまり…」
「身体中の魔素を根こそぎ奪い仮死状態にして魔具化させる」
「…」
  俺は想像するだけで寒気が走った。魔素とは俗に言う生命エネルギや精神エネルギの源流なんだ。それを生きたまま奪われるなんてことになったら…。
「辛い…よな…」
「まだ研究段階らしい。犠牲者は多いとはいえ、まだ成功はしていない。やつの逃げた後の工房の資料の内容によればな」
「…それはいつの話だ」
「2ヶ月前だ。もしテイラーが研究に成功していたらコイツは俺の手に負えない。おそらくBランクかB+ランク級の相手になるぜ」
「…ハァ…」
  決めた。テイラーは俺が捕まえる。
「ユズル、テイラーの野郎。俺も手伝わせろ」
  驚くユズル。だけど今回ばかりは冗談じゃない。
「ケイちゃんがか?たぶん無理だぜ俺に負けるようじゃな。あの凛って嬢ちゃんなら兎も角だ」
「いや、それでもだ。仕事中に死んだらそれまでだ。依頼が解決したらユズルがやったことはもういいことにする」
「素人相手と手を組むのは強敵より厄介って知ってるか?」
「…じゃあ、勝負するか?」
「勝負って俺とか?やだね正々堂々は俺の領分じゃねぇ」
「俺なりのルールなんだがな、勝負を申し込まれる側が勝負の内容を決めていいことにする」
「…ってっと俺様が決めていいのかよ」
「いいぜ」
「なら、あの森だな」






  昨日の森に来た。勝負のルールは相手を組み伏せること。ユズルが勝てばいままでのことは忘れる。俺が勝てばテイラーを追う手伝いをしてもらう。以上。仮に重傷を負ってもカンナが治療してくれるため多少の無茶はできる。森の外部に出ることは逃亡とみなすとする。
  ユズルが先立って10分が経過した。勝負、開始だ。
  想像上のスイッチを入れる。一瞬だけ視界がぼやけて再びピントが合う。緑と橙色が大気中を漂っていた。濃い魔素だ。自然の力を象徴した濃い魔素が漂う。そんな中、淡い枯草色の魔素が木の上にある。恐らくユズルだ。弓を構えているわけではない。じっとこちらを注視している。息を殺すようにして魔素の流れは周りの流れと同じように合わせている。ただ、流れは一緒でも明らかに色が異なる。ゆったりとした枯草色の流れが周りの濃い緑と混ぜ合わさり直ぐに見分けがつかなくなる。
「とりあえず、昨日の仕返しと行きますか」
 全力で走る!
 ユズルに背を向けて。
「!?」
 ユズルから流れる魔素の流れに乱れが生じる。動揺のせいだろう。


―third eyes―


 圭介が全力でユズルから遠ざかる。ユズルには圭介の意図が分からなかった。
(なんなんだよアイツ!いきなり走り出したかと思ったら見当違いにも程があるだろ!)
 圭介の走る速度は凄まじかった。森を一直線に駆ける。文字通り一直線に。
(あの野郎、どこまで走る気なんだよ!)
 圭介とユズルの距離は長弓で射った矢が届く距離。つまりユズルはこれ以上圭介と距離を


離されるわけにはいかない。全力で圭介を追うユズルだが徐々に不思議な感覚にとらわれる。圭介の後を追うユズルは常に木の枝と枝を飛ぶようにして移動している。これだけ密集している木々ならば跳躍すればどこにでも飛び移れる。しかし、何故かユズルは移動のため飛び移る枝を選ばなければならない。つまりそれだけ飛び移れる枝が少ないのだ。
(なぜだ?移動一つでこんなに困らせられる?)
 圭介が一直線に走る。ユズルは移動に苦戦させられる。
(アイツ…このまま森に出るつもりか?)
 森に出れば自動的にユズルの勝利となる。そう考えてる矢先に異常なほど生い茂った森に迷い込む。太陽の光さえも届かない程生茂った森。異常な光景に目を丸くするユズル。
(こんなの…昨日はなかったぞ…)
 気持ちが悪い森。木というのは自然物であり秩序にしたがって生えるものではない。そのはずの木々は等間隔にきれいに行列をなしているのだ。太陽の光は届かず、等間隔に茂った森は方向感覚を狂わす。
(…しまった。ケイちゃんを見失ったか)
 異常な森の光景に警戒心が働いて追跡する足を止めてしまった。


 一方、啓介は―――


「ハァ…ハァ…ハァ…」
 木の根元に腰を下ろして息を整えることに専念していた。
(さすがに…森一つ育てるってのはキツイな…)
 蓄えていた魔素の一部を失った圭介は息を切らしながらゆっくりと意識を保つ。一度に魔素が流れた後は思考に霞がかかったようになるのは魔素が脳に蓄えられるということの裏付けなのかもしれない。
「さてと、ちょっくらお仕事と行きますか」
 この森に漂う魔素は限りなく近い白。あらゆる物質を還元・吸収してきた圭介の魔素。圭介の目から通した世界はその真っ白な空間にポツンと浮いた枯草色のユズルがいる。圭介は十夜を地面に突き刺し魔素を流す。この十夜も凛が持つ雪丸と同じ魔刀。凛とは異なり剣術の一部しか使えない圭介は構成刃先を作り出すことはできない。しかし圭介の持つ十夜にはいくつかの能力がある。例えば魔素を栄養として与えることで折れた十夜は再生をする。地面に刺せば根を張り辺りの水分を吸収する。逆に所有者が魔素を流すことにより木々に対する影響力を高める。結果として―――


「うぃっす」
 ユズルは人面樹のように木の中に閉じ込められていた。
「ケイちゃん、カナリ趣味の悪い魔術使うね」
「人聞きが悪いな。お互いを傷つけないようにして配慮したんだぜ?」
 ユズルは手足一つ動かない状態を認めたあと
「俺の負けだよ」
 圭介の実力を認めた。
「オーケー、俺の勝ちだな。約束は守ってもらうぜ?」
 圭介はそっと木に手を当て木を還元する。
「お前、一体どんだけ魔素持ってんだよ」
 ユズルはスタッと着地して圭介に問う。
「んー、一般魔術師並み?」
「馬鹿言うなよ。ケイちゃんが一般なわけねぇだろ?規格外だよ。き・か・く・が・い」
「そうなん?魔術師ってこんぐらい平気でやるもんじゃね?」
「普通の魔術師なら魔具の補助を受けても木の十本も創造すれば音を上げると思うぞ?100本、200本なんてのはBランク以上の魔術師ぐらいだぜ」
「そんなに凄いのか…」
「ケイちゃんのソルバーランクって今は?」
「確かこの間、Dランクになったって言われたな」
「D!?」
 ユズルは驚いた様子で圭介を見る。
「Dなわけねぇだろ!そんな力持ってDってどんな酔狂なんだよ」
「…そういわれても…」
 圭介は困ったような、困ってないような微妙な表情を浮かべたままヘラヘラと笑っていた。
「まぁいいや、俺が何を言おうが本人にそのつもりがないんじゃな」
「そうそう、気にすんなって、どうせ俺のことなんだからさ」
 飄々とした物言いをする圭介は笑っていた。






 圭介とユズルはノギスに戻ってきた。宿の圭介の部屋で二人は互いの情報を交換してテイラーを確保する作戦を立てていた。
 ユズルの能力は短弓・長弓・双剣・罠作り・矢の細工・魔覚(触)と行った具合だ。
 圭介の能力は剣術・魔術・武術・魔覚(視)・還元といったもの。
「なるほどね。それであの魔素保有量なわけか」
「まぁそんな感じだよ」
 お互いの能力を確認しながら
(ケイちゃん、なんで剣術とか選んだんだろ?)
(ユズル、弓を使って双剣とか…)
 とお互いに不思議がっていた。
「結局、あの森にはテイラーはいないんだな?」
「たぶんな。テイラーが最後に立ち寄ったのがトルクなんだよ。分かるか?トルク」
「いや、分かんね」
 圭介の知っている街ではない。
「トルク、別名『貧困都市』。とにかく治安の悪い街なんだよ。金さえあれば奴隷が買えるんだ。テイラーはもともとカナリの金持ちでな。その金を使って奴隷を実験材料にしてたのさ」
 圭介の表情が少しだけ翳る。
「その街でテイラーの情報があったってわけか」
「簡単に言うとそうだな。おそらくテイラーならノギスに来たあと森に潜伏すると思ったんだよ。噂ではテイラーはこっちの地方の人間らしいからな」
「なるほどねー」
「実はテイラーが向かう候補がもう一つあったんだよ。それが学術都市『レスリック』って分けさ」
(レスリック…どっかで聞いた覚えがあるな)
「年に一度の学術発表会があってカナリの人間がレスリックに流れ込むんだ。その中にテイラーがいる可能性がある」
「ああ、学術発表か…」
「なんだ?興味があるのか?」
「まぁね、もっと魔術のことを詳しく知りたいからな。その発表会ってのは正確にはいつから始まるんだ?」
  圭介がユズルに尋ねる。
「そうだな…今から15日後だな。馬車で5日はかかるから早めに行きたいな」
「二週間ちょいしかないのか…」
  圭介は呟きながらベッドに倒れ込む。
「できることなら明日か明後日にはノギスを発ちたい」
「え、なんで」
  倒れ込んでいた圭介がガバッと起き上がる。
「テイラーは賞金首なんだ。追ってるのは俺達だけじゃない。それにテイラーの足取りを調べなきゃいけないからな」
「そういやそっか…」
  手近にあった十夜を手に取り魔素を流し水を与える。
「そうだ。ユズル、テイラーの持ってたものって何かないか?テイラーの魔素が残留してる


アイテムとか」
「それならいいものがあるぜ」
  ユズルが出したのは一冊の本だった。
「テイラーは研究の内容を記していてな。これはその写し。インクにはアイツの血が混じってあるから魔素は編み込まれてるはずだ」
  圭介はそれを手に取り目を通す。


『―体内から効果的に魔素を取り出す方法―


1.実験内容
→被検体の脳の摘出


2.実験目的
→魔具化に障害となる体内魔素を多く含む脳の摘出をすることで魔具化を容易にする。


3.実験材料
→被検体※1


4.実験方法
→被験体の頭蓋を鋸にて切削、及び神経系の切除の後脳の摘出


5.実験結果
→脳を摘出後、心配停止。死亡。魔具化には成功するも駄作。処分。


※1
イム

24歳
トルク出身
魔術師適正E
銀貨10枚



  ページを捲る。



1.実験内容
→被検体の血液の枯渇


2.実験目的
→体内を巡る血液を枯渇させることにより偏りなく抵抗力を弱らせる


3.実験材料
→被検体※1、吸血虫※2


4.実験方法
→拘束した被検体の四肢を吸血虫を用いて血液を抜く。被検体は強く抵抗する恐れがあるため前もって薬物※3を投与することとする。72時間の時間をかけるため、被験者の薬物投与と吸血虫の交換は12時間おきとする。


5.実験経過
→00時間後:目隠しをした被検体は薬物投与以前は強く反抗を示す。薬物投与直後は反抗することなく大人しくしている。
 12時間後:2度目の薬物投与と吸血虫の交換。被検体の意識は戻っており、強く反発する。便意を訴えるが実験には差し支えない。吸血虫は大きく肥大している。
  24時間後:3度目の薬物投与と吸血虫の交換。実験室は糞尿の臭いが漂う。87号に片付けさせる。被検体は水を強く要求する。水を与えることは実験結果に影響を与えるため水は与えない。薬物投与の際、強く怯える。吸血虫は大きく肥大していた
  36時間後:4度目の薬物投与と吸血虫の交換。実験室には悪臭が漂う。被検体は酷く怯え寒さを訴える。室内の温度を僅かに上げる。凍死されては実験にならない。薬物投与に対する抵抗は弱くなる。吸血虫の大きさは24時間後に比べ一回り小さくなる。
  48時間後:5度目の薬物投与と吸血虫の交換。被検体の反応が鈍くなる。脈が弱く、呼吸が浅い。内太股を強く摘まむも反応がない。次の12時間は耐えられない可能性があるため実験を中断。魔具化の術式を施す。



  また一枚捲る。


『術式を施した被検体は強く悶え苦しみ死亡。


6.実験考察
→血液を奪うことにより抵抗力を奪うこと自体は成功。ただし被検体は死亡。魔具化の術式を施すことにより残留した魔素により強い反作用が生じたと推測。今後の課題は反作用を生じない被検体を手に入れるか反作用を生じさせる残留魔素を根こそぎ奪う方法の確立。の二つが挙げられる。


※1
ルン

14歳
トルク出身
魔術師適正E+
銀貨8枚


※2
ノズル・ヒル
体長1cmのヒル。対象の皮膚上に張り付き麻酔針を射ち吸血。吸血後の体長は3倍程になる。


※3
ボルダの薬
ボルダの木に実るボルダの実の表面を傷つけ果汁を採取し、その果汁を乾燥させ粉末状にして経口摂取することで五感の鈍化、幻覚作用、多幸感を及ぼす。





  圭介は実験データを机の上に置く。


「やばいな…」
「かなり危険なやつってことは解ってくれたか?」
  ユズルの目は真剣そのものだった。
「ああ、狂人かと思ったが実験データから見るに冷静だな。それにこの実験…」
「かなり気色悪いことやってるな」
「いや、まぁ、そうなんだけど…」
  圭介は実験データを読む内に一つの仮説が立った。
(もしかして、この実験は成功するのでは?)
  と。
  圭介はこれをユズルに言うか迷った。もし、仮説が正しかったらユズルはこの件から手を引くかもしれない。それは圭介にとって困ることだ。
「ケイちゃん、それ見て何か分かったことあるかい?」
「あ、ああ、たぶんテイラーの魔素は焦げ茶色だ。目の前にいればすぐに識別できるさ」
「へー、ケイちゃんの魔覚ってすげーな。色まで識別できるのかよ」
「魔覚?」
「魔覚、知らないのか?」
  圭介は頷く。
「魔覚ってのは簡単に言うと第六感って呼ばれてるやつだ。本来は魔を観測する器官は人間にないんだけど、…共感覚って分かるか?」
「あー、心理学でやったな。あれだろ?脳の発達が未熟な子供が白字の数字を見て色を答えるってやつ」
「まぁたぶん似たようなもんだ。例えば旨そうな料理を『見る』だけで『味を感じる』とかな。魔覚はそうやって他の器官との共感覚で発言するんだ。俺様や氷川の嬢ちゃんは触覚との共感覚で魔素を圧力として感知する。ケイちゃんの場合は視覚との共感覚での発露だろうな。それも色覚付きだ」
「色覚?」
「たぶんケイちゃんのそれはレア中のレアだぜ。レスリックにいる教授の一人も視覚と魔覚の共感覚を持ってるんだが、それでも明度が限界だ。明度ってのはあれだ。明るいか暗いか、白いか黒いか、な」
「そうなんだ…」
  圭介は自分が持つ能力に改めて考えさせられた。
(この目が…レア…)
「まぁこれでテイラーの発見は少しだけ有利になったわけだ」
「そうだね」
  ユズルは腰を上げて扉のノブに手をかける。
「今日はこれぐらいにしとくよ。テイラーの件はまた明日話そう」
  ユズルが部屋を出ると入れ替わりにカンナが部屋に入ってきた。
「ケイスケ!」
  カンナは大きく跳ね、ベッドに座っていた圭介を押し倒し馬乗りになる。そのままの状態で器用にピョンピョンと飛ぶ。
「ケイスケ!遊びに行こう!」
「分かった!分かったから!下りて!」
  落ち着きのないカンナをどうにか下ろす。そのぐらいのタイミングでニーナが現れる。
「カンナ様、あまり圭介さんを困らせてはいけませんよ?」
「はーい」
  カンナはニーナの言うことを素直に聞いて返事をする。
「圭介さん、今日は貴族街に出掛けることになりました」
「貴族街?なんでまたそんなとこに?」
「カンナ様があの鐘を見に行きたいそうなのです」
  部屋の窓から見える灯台のような高い建物の上部に大きな鐘が釣ってあるのが見える。
「昨日のお昼頃、市長に会ってきました。その時に許可を頂いたので問題はありませんよ」
  圭介には断る理由はない。それに圭介はカンナと約束した。
(色んな景色を見せてやらないとな)






  貴族街に入る際には入街する際のチェックより厳しいものだった。
  ニーナが出した神威の証を提出することで許可が得られた。ただし、圭介とニーナはカンナの付人ということになってる。正式なお客人はカンナ一人ということだ。
「やっぱ身分制度みたいなもんがあるんだな」
「そうですね。貴族と平民、それから奴隷がいます」
(奴隷…)
  圭介の脳内にはあのレポートがちらつく。
「ケイスケ、どうしたの?」
  カンナが圭介の手を引く。
「いや、なんでもない」
(今日はカンナに付き合うって決めたんだ。カンナの思い出に残るのは笑った俺でいないと)
  圭介はいままでではなくこれからを思って笑った。






  塔の内部は意外にも階段だけしかなかった。ただ登るだけだった。
「ニーナ、平気?」
  圭介は後ろのニーナに声をかける。
「え、ええ。大丈夫です…」
  全然大丈夫そうではない。息も絶え絶え痩せ我慢。
「はい」
  圭介は手を差し出す。その手をじっと見つめる。
「だ、大丈夫ですよ!」
  少しだけ耳を赤くして声を荒げてさっさと階段を上がる。
(怒っちゃった…。お節介だったかな)
  圭介は後を追うようにして階段を駆け上がる。
  頂上には見晴台があり、絶景が見える。
「お、あそこが俺が倒れてた場所かな」
  圭介はそういうが、見ているのは高台だ。その高台を挟んだ向こう側にあの場所がある。
(あそこが駅だからここから西南西に向かえば俺の実家か)
  この世界にはあるはずない自宅を思う圭介。郷愁の念が胸の内をそよぐ。
  カンナとニーナは真下に広がる街並みを見ていた。
「ニーナ!あそこにカンナ達の泊まってる所が見える!」
「そうですね、カンナ様」
  実に楽しそうだ。
  圭介が振り替えるとそこに巨大な鐘が釣られてある。鳴ったらきっと良い音がするのだろう。この鐘が鳴っているのを圭介は聞いたことがなかった。この鐘は街の象徴のようなものなので、未だに残されているらしいが、時々取り壊すという意見も上がっているだとか。
(街の象徴かぁ…。それを壊すってことは歴史的に寂しいものがあるな)
  圭介は鐘に近づきそっと触れる。それはとても冷たかった。
(?)
  圭介の触れた場所に不思議な形の穴が出現する。圭介が触れても何も起きない(?)
  それは圭介の魔視覚(命名:圭介)によって見えるものだった。
<ちょんちょん> 
  圭介の腰辺りをつつく感触。そこにはカンナがいた。
「ケイスケ、肩車」
「肩車?」
  別に圭介が肩車を知らない訳じゃない。なぜ今肩車なのかが分からなかった。
「じゃあ、あっち向いて股を開いて」
  カンナは指示通りにして、圭介はその間に首を入れ一気に持ち上げる。
(軽っ!?)
  思った以上に軽いカンナ。20kgないかもしれない。
「ケイスケ!あんまりフラフラしないで!」
  圭介の髪を鷲掴みにするカンナ。
「痛い!痛いって!分かったから髪を引っ張んなって!」
  どうにか態勢を整え、カンナの指示に従って鐘の前に立つ。あの穴だ。見た目は如何にもな鍵穴…。その穴にカンナが触れると眩い光に包まれた。



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