神が遊んだ不完全な世界

田所舎人

主人公(仮)の久しぶりのノギス

 タユタユを出て約三日が経過した。日も傾いた頃、市壁が視界に入ってくる。
「やっと着いたか」
 なんだかんだでノギスにたどり着いた俺達はノギス東門から入る。その際、俺と凛ちゃんとケアはギルドの証を、ニーナ嬢とカンナは神威の証を提出した。
「圭介、どうしましょうか。先に宿を取るべきだとは思いますが」
「そうだな。飯より宿が先だな」
 ノギス西側には宿があり、馬をあずける場所もあったはずだ。
「ニーナさん。馬車を南側に向けてください。そちらに宿と馬をあずける場所があるはずです」
「分かりました」
 ニーナ嬢は手綱を操り馬車を思うように進める。


 宿に着いたとこでシングルを3つとダブルを1つといった部屋の取り方をする。ダブルはニーナ嬢とカンナが使うこととなった。正直な話、自分で仮宿を取ることも考えたが、さすがにアレは疲れる。後から考えたのだが、仮宿を作る時に陽光が少なすぎるせいで自分の魔素を大量に消費したことが倒れた原因だと考えられた。


「それじゃあ、これから別行動にするから各自好きにしてくれ」
 それぞれの部屋に荷物を置いた俺たちはエントランスに移動し皆にそう告げた。そしてコートから銀貨を入れた袋を取り出して、凛ちゃんに渡す。
「もう日も暮れてあんまり時間はないだろうけど、街を見て回るのもいいかな。なんか欲しいモンがあったら、そのお金使っていいから。俺はちょいと世話になった人たちに顔を出さないといけないから」
 各々がそれぞれの考えを口に出す。
「では、私は市場を回って見ます」
 と凛ちゃん。
「私はカンナ様とご一緒します」
 これはニーナ嬢。
「カンナも市場に行きたい!」
 ワクワクしているカンナ。
「僕はギルドに一度行ってみます」
 神妙な顔をしたケア。
「んじゃ、また後でな」


 それぞれと別れて俺は街の西側でも少し北よりの区域に足を向ける。行き先はユニさんの邸宅だ。2ヶ月前に利用していた道を見下ろしながら、宿からはそこそこの距離を屋根伝いを走る。あの時は信徒が松明を片手に持って歩いていた中を俺も混じって行進してたっけか。感慨に耽りながらもたどり着いたユニ邸はやはり大きかった。門をくぐり、石畳を歩き、戸を叩く。しばらくしてから物音が聞こえ、声がする。
「お待たせしました」
 戸が開き、ウリクさんが現れる。
「お久しぶりです」
 軽く頭を下げ、自分の無事を示す。
「っと」
 急に抱き寄せられ、ウリクさんの胸に抱きとめられる。
「良かった。圭介さんが無事で本当に良かった」
 声を震わせたウリクさんが感情的なまでになっていた。
 そのとき俺は思った。
(心配させちゃったな)
 そして、心配してくれることに対して俺は嬉しかった。
「ただいま…です」
 少し戸惑いながらも、やっと口にできた。
「帰ってきたってことは、解決したんですか?」
「はい。キチンと解決できましたよ」
「良かった」
 やっと俺を離してくれたウリクさん。感情が高ぶっているせいか、少し目に涙を浮かべていた。
「それに色々ありまして俺は今、旅をしている最中です」
「そうなの?じゃあ、また出ていくのね」
 少しばかり寂しそうな表情を浮かべるウリクさん。
「仕方ないです。それでもノギスに帰ってきたら必ず顔を出しますよ」
「その時はキチンともてなしますよ」
 可愛らしい笑みを浮かべるウリクさん。
 その後、是非夕食を一緒にと申し出を受けたがそういう訳にもいかず断ることとなり、ユニさんの所在を聞いたところ。ユニさんは不在とのこと。理由を聞いてみたところユニさんは「学術研究都市の図書館が開放されることになったから、ちょっと出かける」とのこと。残念だが、会うことは叶わなかった。
「では、そろそろ御暇しますね。また改めて遊びにきます」
「はい、お待ちしております」
 にこやかに別れを告げユニ邸を後にする。


 帰ると夕食の用意もできており、凛ちゃん・カンナ・ニーナ嬢が席についていた。
「あれ?ケアはどうした」
 俺も席に着きつつ尋ねる。
「分かりません」
「ケアさんならギルドに向かってからお会いしていませんよ」
 凛ちゃんとニーナ嬢がそれぞれ答える。
「じゃあしょうがないか。先に俺たちだけで食べようか」
 不思議なことだが、ケアが食卓に現れることは食事を終えた後もなかった。しかし、ギルドに向かったことから昔馴染の友人と卓を囲むこともあるだろうと結論づけた。そのあとは各々の部屋に戻り、明日へ備える。久々の柔らかいベッドはとても寝心地が良かった。

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