神が遊んだ不完全な世界
主人公(仮)と依頼
  俺達4人は塔を離れて、街中を歩いていた。時間にして午前11時。少し早めの昼食を取るもよし。もう少しぶらつくもよし。路銀を稼ぐもよし。
  路銀か、、、
  いままでの旅銭は基本的にササニシキにいるころ、修行の一環として万屋で稼いだ。
  しかしながら、タユタユに来るまでにカナリ消費してしまった。馬車に積んだ食料や宿賃にカンナの衣類と小瓶や砥石といったアイテム。。。少しだけ心許ない。男が金のことでグチグチ言うのはカッコ悪いが、金がなければ食事も宿もないのだ。
(まぁ、宿ぐらいなら作れるが…)
  となれば、早めの昼食をとり、久々のソルバーのお仕事ですな。
  依頼は近郊の森に出没するというインボリュートの討伐。報酬は銀貨30枚。
  インボリュートというのは魔素を多く取り込んだ虫の化け物だ。ケンタウロスのように四本の足で動き、剣山のような両手で相手を捕縛し弱らせ、対象物を頭からバリバリと食べる生き物らしい。進化の過程は様々でインボリュートは様々なタイプがいるらしい。今回のタイプは肉食動物の腐肉から発生したと考えられる。
「ケア、なんかそれっぽいもんあったかー?」
  現在、ケアと二人でチームを組み森を探索している。カンナと凛ちゃんはお留守番だ。
「ないですね」
  探索対象はインボリュートの痕跡だ。足跡や暴れた跡を探しているがなかなか見付からない。
「もしかしてソイツって虫だからどっかで寝てんじゃね?冬だし」
「有り得ないわけじゃないですが、その可能性は低いと思います」
「Why?何故?」
「今回、目撃されたインボリュートは肉食型の形態だと思われますから、多少の寒さには抵抗があります。そもそもインボリュートがこの目撃情報通りの大きさだとするとほとんどの感覚がなくなっていると思います」
「さいですか」
  弱ったなぁ、感覚がないってことは痛覚もないんだろうなぁー。
  不意打ちをしかけるにもそのインなんとかさんは複眼持ちでなかなか難しいときた。
「やれやれだぜ」
「なにかおっしゃいましたか?」
「なんも」
  呼び水で探索してもインなんとかさんは見付からない。
「おそらく、冬眠中の動物を狙って穴の中にいるのかもしれませんね。あるいは別の森に移動したのかも」
「マジかー。弱ったなぁ…」
  討伐内容はインボリュートの両手の一組を持ち帰る事が条件とされている。いませんでしたじゃ、報酬は貰えない。
  俺ができる手立てとしては、まぁいくつかあるが、、、気が進まないなー。
「それじゃあ、もう少しだけ奥に進むか。それで無理なら奥の手を使うよ」
「分かりました。では、あともう少しだけ」
<カサカサ>
「ケア、止まって」
「どうかしましたか?」
「いや、なんか地中に違和感を感じるんだなこれが。なんていうんだろ?スポンジのように魔素を吸い取る変なものが、もしかしてコイツがインボリュートか?」
  土を操作してゆっくりと持ち上げる。
(!?)
  急に動き始めたソレは俺の足元を目指してきやがった!
「ケア!離れろ!」
  咄嗟に地面から離れて、近くの巨木にショートソードを突き立ててぶら下がる。
  俺がさっきまでいた地面からは黒光りする甲殻の腕が伸びていた。
  辺りを見渡してケアを探すがどこかに隠れたようで見付からない。
  黒光りな腕を伸ばしたインボリュートはのっそりと這い出してくる。
  ヤツを凝視すると、ヤツの体内には緑、茶、黒、濁った紺。といった変な魔素が蠢いている。
(先手必勝!)
  懐からナイフを投擲して様子を伺う。
(まぁそうなるわな)
  インボリュートは少しだけジャンプしてナイフを避わす。
  人間であれば死角になるとしても、アイツにとっては視野に入ってる。
(うわー、キモチワルイ)
  こちらを振り向いたインボリュートの顔はB級映画のエイリアンのようで、バックリと開いた口は威嚇のつもりなのか?
  ショートソードを巨木から抜き取り、構える。
  インボリュートを見据えながらやつの肩越しにケアを見た。何かの合図をしているが、、、分からん。
  気にせず討伐と行きますか。
(夜桜!)
  第二歩でトップスピードまで持ってきてからの薙ぎ。樹齢5、60年の樫の木でも薙ぎ倒せる技の一つだ。
<ガキンッ!>
  嫌な音とキモチワルイ手応え。
  刃がヤツの腕に食い込んで外れない!
  咄嗟に手を話して距離を取る。
  恐気に晒されて咄嗟に距離をとったにも関わらずインボリュートは緩慢な動きだ。
  こちらにのっそりと近付く。
<パキッ>
「ッツ!」
  緩慢な動きからの目に止まらぬ跳躍。小枝の折れる音ががなければ反応が遅れて奴の腕を十夜で受け止めることなく膓をごっそりと持っていかれるところだった。
「糞が!」
  思いっきり奴の体を蹴り、跳躍しつつ小瓶を投げつける。
<パリン!>
  潤沢な魔素を秘めた種が発芽してインボリュートをがんじからめにする。
「ふぅ…あぶねぇ、っかった」
  息を飲みながら、絡めとられたインボリュートを凝視する。
<カサカサ、カサカサ>
(アイツ!?食ってやがる!)
  もとが虫だからか、木の幹やら茎を食べてもおかしくないが…。それを吸収しやがる。
(こりゃ、森の雫は使えねぇな)
  水球で息を止めるか?いや、こいつの呼吸器官がどこにあるか分からない。
  木を食うなら十夜も危ない。何気に強敵じゃねぇか!
  ふと視界に刃こぼれしたショートソードが入る。
(甲殻は無理でも間接なら…)
  ショートソードは両刃だ。片刃が刃こぼれしてもまだ片側がある。
  拘束している間にショートソードを手中に納める。
  刃こぼれしたギザギザには黒い甲殻と微妙だが、体液が付着している。ある程度は期待できそうだ。
「ケア!何か仕掛けるみたいだが、あと少し待ってくれ!」
  ケアに投げ掛け、ショートソードを構える。
<バリバリ!>
  とうとう顔を出してきやがった。
  大きく開いた口に剣をぶっさすかと思案したが、甲殻であの固さだ。歯ならばこんな剣ぐらい簡単に噛み砕くだろう。
(これが手に汗握るってやつか)
「Concentrate、Concentrate、Concentrate!」
  魔素を体内に流して体を暖める。手が白くなるほどしっかりと握る。標的は左腕肘関節。使う技は"躑躅"。簡単に言うと回転切り。隙だらけな弐の太刀要らずの斬撃。
  インボリュートの脚はまだ拘束している。顔が出てきたから、腕が露出するまであと少し。その瞬間を狙う!
<バリバリ>
  肩口の幹を貪る。
<バリバリ>
  左腕上腕が露出した。
<バリバリ>
  肘関節が露出した!
「そこだ!!」
  トップスピードを全て剣に乗せ左足を軸に今できる最高の威力で叩き切る!
<ズシャ!>
「キュイイイイイ!!」
  腹の底から何かを擦ったように泣き叫ぶインボリュート。
「もういっちょ!」
  腕と肘を断った勢いから逆袈裟に右肩関節を狙う。
<ガリッ!>
(やべっ…)
  弐の太刀要らずからの斬撃から無理に攻めたために刃が再び食い込みながら止まってしまった。
  インボリュートはそんな俺の伸びきった腕に向けてその歯牙を突き立てようとしていた。
「野村さん!退いてください!」
  ケアの声が耳に入ることで咄嗟に避わす。
「後は私に任せてください」
  退いた俺と入れ替わるように前に出たケアはインボリュートに突き刺さったままのショートソードを下から叩くようにして食い込ませ断ち切る。
「全ての素となる数多の因子よ。全ての虚無を等しく満たせ」
  ケアは詠唱すると深い闇で満たれた小瓶の封を解く。
  すると闇はインボリュートを包み込む。
  インボリュートの魔素が闇へと流れ、闇は徐々に明るみ得る反面、インボリュートの体は徐々に小さくなっていく。
「ケア、今のは…魔術か?」
  腕を拾い上げるケアに問いを投げ掛ける。
「ええ、今のは魔素を奪う魔術です」
「マジか?スゲーなそれ」
「そんなに大したものではないですよ」
  収集品を腕に抱えこちらに寄る。投擲したナイフをこちらに差し出す。
「サンクス。さっきの魔術は俺でも使えるんかな?」
「たぶん無理だと思いますよ」
「そっか」
  なんとなく納得した。感覚だが、俺には無理な気がした。
  なんにしても討伐成功。今日も一日お疲れ様でした。
  路銀か、、、
  いままでの旅銭は基本的にササニシキにいるころ、修行の一環として万屋で稼いだ。
  しかしながら、タユタユに来るまでにカナリ消費してしまった。馬車に積んだ食料や宿賃にカンナの衣類と小瓶や砥石といったアイテム。。。少しだけ心許ない。男が金のことでグチグチ言うのはカッコ悪いが、金がなければ食事も宿もないのだ。
(まぁ、宿ぐらいなら作れるが…)
  となれば、早めの昼食をとり、久々のソルバーのお仕事ですな。
  依頼は近郊の森に出没するというインボリュートの討伐。報酬は銀貨30枚。
  インボリュートというのは魔素を多く取り込んだ虫の化け物だ。ケンタウロスのように四本の足で動き、剣山のような両手で相手を捕縛し弱らせ、対象物を頭からバリバリと食べる生き物らしい。進化の過程は様々でインボリュートは様々なタイプがいるらしい。今回のタイプは肉食動物の腐肉から発生したと考えられる。
「ケア、なんかそれっぽいもんあったかー?」
  現在、ケアと二人でチームを組み森を探索している。カンナと凛ちゃんはお留守番だ。
「ないですね」
  探索対象はインボリュートの痕跡だ。足跡や暴れた跡を探しているがなかなか見付からない。
「もしかしてソイツって虫だからどっかで寝てんじゃね?冬だし」
「有り得ないわけじゃないですが、その可能性は低いと思います」
「Why?何故?」
「今回、目撃されたインボリュートは肉食型の形態だと思われますから、多少の寒さには抵抗があります。そもそもインボリュートがこの目撃情報通りの大きさだとするとほとんどの感覚がなくなっていると思います」
「さいですか」
  弱ったなぁ、感覚がないってことは痛覚もないんだろうなぁー。
  不意打ちをしかけるにもそのインなんとかさんは複眼持ちでなかなか難しいときた。
「やれやれだぜ」
「なにかおっしゃいましたか?」
「なんも」
  呼び水で探索してもインなんとかさんは見付からない。
「おそらく、冬眠中の動物を狙って穴の中にいるのかもしれませんね。あるいは別の森に移動したのかも」
「マジかー。弱ったなぁ…」
  討伐内容はインボリュートの両手の一組を持ち帰る事が条件とされている。いませんでしたじゃ、報酬は貰えない。
  俺ができる手立てとしては、まぁいくつかあるが、、、気が進まないなー。
「それじゃあ、もう少しだけ奥に進むか。それで無理なら奥の手を使うよ」
「分かりました。では、あともう少しだけ」
<カサカサ>
「ケア、止まって」
「どうかしましたか?」
「いや、なんか地中に違和感を感じるんだなこれが。なんていうんだろ?スポンジのように魔素を吸い取る変なものが、もしかしてコイツがインボリュートか?」
  土を操作してゆっくりと持ち上げる。
(!?)
  急に動き始めたソレは俺の足元を目指してきやがった!
「ケア!離れろ!」
  咄嗟に地面から離れて、近くの巨木にショートソードを突き立ててぶら下がる。
  俺がさっきまでいた地面からは黒光りする甲殻の腕が伸びていた。
  辺りを見渡してケアを探すがどこかに隠れたようで見付からない。
  黒光りな腕を伸ばしたインボリュートはのっそりと這い出してくる。
  ヤツを凝視すると、ヤツの体内には緑、茶、黒、濁った紺。といった変な魔素が蠢いている。
(先手必勝!)
  懐からナイフを投擲して様子を伺う。
(まぁそうなるわな)
  インボリュートは少しだけジャンプしてナイフを避わす。
  人間であれば死角になるとしても、アイツにとっては視野に入ってる。
(うわー、キモチワルイ)
  こちらを振り向いたインボリュートの顔はB級映画のエイリアンのようで、バックリと開いた口は威嚇のつもりなのか?
  ショートソードを巨木から抜き取り、構える。
  インボリュートを見据えながらやつの肩越しにケアを見た。何かの合図をしているが、、、分からん。
  気にせず討伐と行きますか。
(夜桜!)
  第二歩でトップスピードまで持ってきてからの薙ぎ。樹齢5、60年の樫の木でも薙ぎ倒せる技の一つだ。
<ガキンッ!>
  嫌な音とキモチワルイ手応え。
  刃がヤツの腕に食い込んで外れない!
  咄嗟に手を話して距離を取る。
  恐気に晒されて咄嗟に距離をとったにも関わらずインボリュートは緩慢な動きだ。
  こちらにのっそりと近付く。
<パキッ>
「ッツ!」
  緩慢な動きからの目に止まらぬ跳躍。小枝の折れる音ががなければ反応が遅れて奴の腕を十夜で受け止めることなく膓をごっそりと持っていかれるところだった。
「糞が!」
  思いっきり奴の体を蹴り、跳躍しつつ小瓶を投げつける。
<パリン!>
  潤沢な魔素を秘めた種が発芽してインボリュートをがんじからめにする。
「ふぅ…あぶねぇ、っかった」
  息を飲みながら、絡めとられたインボリュートを凝視する。
<カサカサ、カサカサ>
(アイツ!?食ってやがる!)
  もとが虫だからか、木の幹やら茎を食べてもおかしくないが…。それを吸収しやがる。
(こりゃ、森の雫は使えねぇな)
  水球で息を止めるか?いや、こいつの呼吸器官がどこにあるか分からない。
  木を食うなら十夜も危ない。何気に強敵じゃねぇか!
  ふと視界に刃こぼれしたショートソードが入る。
(甲殻は無理でも間接なら…)
  ショートソードは両刃だ。片刃が刃こぼれしてもまだ片側がある。
  拘束している間にショートソードを手中に納める。
  刃こぼれしたギザギザには黒い甲殻と微妙だが、体液が付着している。ある程度は期待できそうだ。
「ケア!何か仕掛けるみたいだが、あと少し待ってくれ!」
  ケアに投げ掛け、ショートソードを構える。
<バリバリ!>
  とうとう顔を出してきやがった。
  大きく開いた口に剣をぶっさすかと思案したが、甲殻であの固さだ。歯ならばこんな剣ぐらい簡単に噛み砕くだろう。
(これが手に汗握るってやつか)
「Concentrate、Concentrate、Concentrate!」
  魔素を体内に流して体を暖める。手が白くなるほどしっかりと握る。標的は左腕肘関節。使う技は"躑躅"。簡単に言うと回転切り。隙だらけな弐の太刀要らずの斬撃。
  インボリュートの脚はまだ拘束している。顔が出てきたから、腕が露出するまであと少し。その瞬間を狙う!
<バリバリ>
  肩口の幹を貪る。
<バリバリ>
  左腕上腕が露出した。
<バリバリ>
  肘関節が露出した!
「そこだ!!」
  トップスピードを全て剣に乗せ左足を軸に今できる最高の威力で叩き切る!
<ズシャ!>
「キュイイイイイ!!」
  腹の底から何かを擦ったように泣き叫ぶインボリュート。
「もういっちょ!」
  腕と肘を断った勢いから逆袈裟に右肩関節を狙う。
<ガリッ!>
(やべっ…)
  弐の太刀要らずからの斬撃から無理に攻めたために刃が再び食い込みながら止まってしまった。
  インボリュートはそんな俺の伸びきった腕に向けてその歯牙を突き立てようとしていた。
「野村さん!退いてください!」
  ケアの声が耳に入ることで咄嗟に避わす。
「後は私に任せてください」
  退いた俺と入れ替わるように前に出たケアはインボリュートに突き刺さったままのショートソードを下から叩くようにして食い込ませ断ち切る。
「全ての素となる数多の因子よ。全ての虚無を等しく満たせ」
  ケアは詠唱すると深い闇で満たれた小瓶の封を解く。
  すると闇はインボリュートを包み込む。
  インボリュートの魔素が闇へと流れ、闇は徐々に明るみ得る反面、インボリュートの体は徐々に小さくなっていく。
「ケア、今のは…魔術か?」
  腕を拾い上げるケアに問いを投げ掛ける。
「ええ、今のは魔素を奪う魔術です」
「マジか?スゲーなそれ」
「そんなに大したものではないですよ」
  収集品を腕に抱えこちらに寄る。投擲したナイフをこちらに差し出す。
「サンクス。さっきの魔術は俺でも使えるんかな?」
「たぶん無理だと思いますよ」
「そっか」
  なんとなく納得した。感覚だが、俺には無理な気がした。
  なんにしても討伐成功。今日も一日お疲れ様でした。
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