神が遊んだ不完全な世界

田所舎人

主人公(仮)とタユタユ

  タユタユまで到着するのに実に3日かかった。


  この三日間は一人旅と違い、話し相手がいるため楽しい旅だった。


  個人的に面白かったのは初日の夜営の時だった。


  本来ならば夜営というのは薪を拾い、薪をくべながら火を維持しつつ交代で見張りをするのが通説であり、俺もそうは思っていたが、どうにか夜だけはぐっすりと眠るために試行錯誤した結果。


  土木建築よろしく、3DKの一軒屋を建てました。


  一人につき六畳の部屋かつ、薪も十夜で造ることができ、ついでに木造ベッドから椅子と机、箸から皿といった食器も作った。


  今回は粘土と水を練り合わせて、火の魔石のついた魔具があるため加熱した。そのためしっかりした建築物ができた。


  さすがの二人も呆れられた。


  凛ちゃんなんか、


「どうしてあなたは剣術を覚えようと思ったんですか?」


  と改めて問われたほどだった。


  オーステナイトのおっさんは少し強張った表情だったが気にしないことにした。


  食事は凛ちゃんの手料理だ。やはり娯楽らしい娯楽といえば美食が上げられるだろう。


  今日の食材は町から買った保存食の類いと道中に手に入れた蛙と野草だ。


  乾燥させた魚を沸騰させた湯に入れて十分にダシをとり、胆嚢や膀胱といった食べられない部位を取り除いた色鮮やかなピンク色の蛙の肉を入れ、少し時間を置いた後から刻んだ野草を投入。最後ににピリリと辛い乾燥させた植物の種を潰したものを入れて一品目は完成。


  二品目は摘んだ若葉の芽と薄くスライスした保存のきくベーコンのような肉を菜種油で炒めたもの。


  そして、最後は俺が造った力作の竈で炊かれたお米。


  充実しすぎている。


  一人の時ではこうはいかなかった。


  摘んだ野草、薬草を行商人と交渉して金銭や食べ物と交換しながら旅していた頃が懐かしい。


  味も格別だった。オーステナイトのおっさんは居心地が悪そうだった。食事をすればシードボムが発芽しないかと心配でもしているんだろう。だが気にしない。


  といった初日。


  凛ちゃんの感想は


「これは夜営ではない」


とのこと


「若草師範から学んだことと違う」


とも言っていた。


  過去に師範に連れられて夜営の訓練でも受けたのだろう。苦虫を潰したような顔をしていた。


  オーステナイトのおっさんは俺を普通の魔術師ではないと言っていた。


  普通の魔術師ってなんぞや?


  まぁ、これだけの魔術を見せつけたらシードボムも信用してくれるだろう。






  とまぁこんな感じの初日。二日目、三日目も特出して描写することはない。これから塔を攻略するには呑気にしていた気もする。


  とにもかくにもタユタユに到着した。


  本来の約束を守るときもきた。


  たった数日だが、おっさんには世話になったがお別れだ。縁があったらまた会えるだろう。


「じゃあな、おっさん。縁があったらまた会おう。俺達は郊外で夜営をしているからいつでも来ていいぜ」


  そう言って俺はタユタユ目前の丘のあたりでオーステナイトのおっさんを下ろした。


  おっさんが何か言っていた気がするが、、、忘れた。


  元来、俺は頭はよくないからな。しょうがない。


「それで、あなたはどうしようと言うのです?」


  馬の手綱を握った凛が聞く。


「別にどうもしないさ。策はもう決まってある」


  ブレスレットを掲げて凛に見せる。


「また魔術ですか…本当にあなたは何のために剣術を求めたんですか」


  忌々しそうに俺を見る凛ちゃん。やはり、剣術一筋の凛ちゃんにとっては面白くないらしい。まぁ面白い策を思い付いたら試さないことには始まらない。


「あっちにむかって馬車を進めてくれないか」


「私は御者しゃないんですけど」


  と文句を言いつつも馬を操る。




  俺は降りて地面に手を着く。


「なるほど、これはこれは、なんとも素晴らしい。最高の舞台になりそうだ」






  俺達は堂々と宗教都市タユタユに入国する。


  というのは嘘っぱちです。


  市壁の一部を人一人が通れる十分な穴を空けた。


「いいんですか?密入なんかして」


「どうせ入るときはバレるさ、ギルドの身分証明には俺の名前の情報もあるんだからな」


  それにしても、穴を空けたことに驚かないのか?ってか、今更穴を空けたぐらいじゃ驚かないか。






  中は今までにない賑わいを見せていた。人だけでない。獣や鳥といった様々な生き物が町中を闊歩していた。そして、その獣や鳥は人語を解し話していた。まるで、桃太郎に出てくる猿や犬や雉のように当たり前に。


  いや、呆けている場合じゃない。グズグズしていると間に合わなくなる。


「氷川、宿をとるぞ」


「はい」






  見つけた宿は現金前払いなら個人情報は一切問わない店だった。


  酒場と一体となった宿は荒くれ者共御用達の様子。凛ちゃんを下卑た視線に晒すのはいい気分ではないが仕方ない。


  受付で清算をしているときに、肩を叩かれた。振り替えると見たことのない男が立っていた。俺より7、8センチ背が高くボサボサの茶髪。眼鏡を掛けたにこやかな印象の男だった。その男は振り向いた俺の耳元で


「野村圭介さんですね」


と囁いた。


  瞬間、俺は総毛立った。
「氷川、清算任せた」


  俺は銀貨袋を凛ちゃんに渡して、俺は不審な男に向かい直った。


「少し、話さないか」


「いいですよ」


  酒場兼宿を出て人気のない路地に入る。辺りは薄暗く、他人の目を気にしなくて済む場所だ。


「どこで俺のことを知ったんだい?」


  頭を掻きながら聞く。


「知るも何も僕は一度会っていますから」


  へ?


「いや、俺には覚えがないんだが…」


「そうですよね。一度も話したことがないですから。君に始めて会ったのはノギスのギルドだよ」


「ってことは、あんたがあの中にいたわけか?」


「そうだよ。僕もソルバーだよ」


「で?あんたはなんで俺に話しかけたんだ?俺の賞金が目的か?」


「別にお金には興味はないよ」


 一度、言葉を区切り地面を見下ろす。


「僕が興味があるのは神についてだ」


「なんだ?お前は信者なのか?」


  先ほどからクエスチョンマークしか出てこない。


「違うよ。彼らは神を崇拝している。僕は神について研究している。そこが大きく違うんだ」


「つまり、学者先生ってわけか」


「そういうことです。理解が早くて助かります」


「それで?その学者先生が俺になんのようだい?」


「そこで本題なんだが、君は神になんらかの関わりがある。違うかい?」


 値踏みするようにこちらを見てくる。


「知らないね。もし関わりがあるとしたら?」


「どうもしないさ。ただ話が聞きたかっただけだ」


「…」


  俺はコイツを計りかねている。飄々とした姿勢をしており、敵意はない。しかしながら、裏がないとは断言できない。駆け引きなんて解らないが、今すぐどうこうするつもりはなさそうだ。


「お前は俺がココに来ると知っていたのか」


  質問ではなく詰問。


「そうだよ。君はきっと誰かに捕らわれてここに連れられて来ると僕は思っていたんだけどね。まさか、自分から来るとは思っていなかったけど」


「そうか」


  瞬巡。


「気が向いたら話してやるよ。明日、俺の部屋に来たらな」


  単なる気紛れ。それと神について研究しているなら俺の知らないことを知っていると思ったから。


「そうだ。そっちが俺の名前を知っていてこっちが知らないのはフェアじゃないな。なんて名前なん?」


「ケアレ・スミスだよ」


  あー、うん。


「んじゃ、呼びにくいからケアって呼ぶわ。じゃあな、ケア」


  後ろ手に手を振ってその場を離れる。


  ちょっと時間を取ったが、俺の策に支障はない。


  俺は宿屋に戻り、様子を見るだけだ。



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