神が遊んだ不完全な世界

田所舎人

主人公(仮)と弟子入り

 俺は凛ちゃんの鍛錬を見て時間を潰し、道場主「若草萌木」が帰ってくる。


「おー、少年少女共、元気にやってるかい」


 長身に長髪の黒髪、この人もまたスゲー美人だ。


 背は俺より少し高いか?175はあるだろう。


 ちなみに俺の背丈は168だ。少し小柄なのがコンプレックス。


 そんなことはどうでもいい。


 彼女も凛ちゃんと同じように無駄のないしなやかな四肢。特にスラッとした長い足が特徴
的。正直、あの太ももは暴力的な魅力がある。


 年齢としては20代後半といったところか?道場の主としては思った以上に若い。


 目の下の黒子は笑顔を際立たせて、母性的な包容力を抱かせる。


「道場主の若草さんですか?」


「お?なんだ新入りかい?」


 俺は彼女の問いには懐に忍ばせていた手紙でもって返した。


「『アルから預かった』といえば、分かるだそうです」


「おお、なんだ坊主?アイツの知り合いか?」


若草さんは手紙を受け取り、中身を見る。


門下生の多くが帰った道場には静寂の中、凛ちゃんの素振りの風切り音だけが響く。


「よし分かった。お前をウチの門下生にしてやろう」


  よかった。ココで帰されたら、ここまで来た意味がなくなる。


「名前は野村圭介か。故郷を探してノギスに辿り着いて、今は神威の連中から追われてると」


 粗方はアルさんが書いてくれていたらしい。


「なるほど、なるほど。ところで圭介。お前はどれぐらい強くなりたい?」


 お?早速の問答か。


1神威の塔に殴り込めるだけの力


2守りたい者を守れるだけの力


3世界最強


(1は当然、2は…まだそんな人はいない。3は…)


「俺は強くなれるだけ強くなりたい。今は最低でも神威の塔に殴り込めるだけの力」


無難な選択だ。


「そうか、神威から追われてるとなると長居はできないか」


若草さんは何かを思案した後、


「2ヶ月だ」


ピシャリと言い切った。


「2ヶ月で若草流剣術を会得しろ」


若草さんはそう言って、俺に木刀を寄越した。


「食前の軽い運動だ」


俺はてっきり素振りでもするのかと思ったが、若草さんも木刀を手に取る。


「構えろ」


俺は慌てて構える。


師範はゆったりとした足取りで構えもせずに歩む。


(コンセントレーション)


師範は木刀をただぶらさげたまま、俺と対峙する。


 先ほどの試合では凛ちゃんの動向を伺って後手に回っていいように遊ばれたのが負けた原因だと考えた。今度はこちらからしかける。


 まずは、右袈裟に薙ぎ、返す刀で胴に一発入れてやろうと一歩を踏み込んだ―――!


 スパーン!!


 俺が先に仕掛け一歩目を踏み込んだその瞬間に俺は面打ちを食らっていた。


 確かに俺が先に仕掛けたはずだ・・・。


「まだまだ、だめだめだね。ぜんぜんなっちゃいないよ」


 師範は少しガッカリした様子。木刀を元の場所に直す。


「食前の運動には物足りないな。おい、皐月。相手してやれ」


 呼ばれたのは橙馬君とあまり変わらない年頃の少女だった。


「は、はひ」


 少女は道場の後片付けをしていた最中で、その最中に呼ばれたようだ。慌てた様子の皐月ちゃん。癒されます。


 おどおどとした姿も木刀を一度握ると人が変わったように背筋が伸び、足運びも常人とは一線を画している。


 本日3回目の試合とも呼べない試合は齢14,5の少女に負けた。


(どうなってんだよ、この道場・・・)


 と考えてはみるが、当たり前といえば当たり前の現実があった。


(俺って魔術はそこそこ使えるようにはなったけど、体術って全然使ってなくね?)


 勝てなくて当たり前だ。勝ったほうがどうかしてる。


 俺の肉体的成長なんて全くないのだから!!






「俺って弱いですかね?」


 そんな質問を皐月ちゃんに投げかける。


「えーっと、、、そうですね。強くはないと思いますよ?」


 ・・・かわいい顔して素直なのに傷つく俺。


 最初からこんな質問をしなければよかったんだ。




「大体分かった。お前、基礎から始めろ」


「基礎・・・ですか?」


 基礎っていうとあれか?ランニングとか腕立て伏せとか?


「ああそうだ。えーっと、そうだな・・・」


 キョロキョロと見渡す師範。


「氷川、ちょっとコッチこい」


 素振りをしていた凛ちゃんが手を止めて、こちらに歩み寄る。


「なんでしょうか?」


 そう凛ちゃんは言った。


「昔の知人に頼まれてな、コイツの面倒を見ることになった。2ヶ月の間だが、うちの門下生になる。しばらくはウチに滞在してもらうから、色々と頼むぞ」


 師範はそれだけ言い残すと道場から出て行った。


 凛ちゃんはキョトンとしたクリクリの目を俺に向けた。


「ということらしいので、これからよろしく」


 俺は手をさし伸ばし、握手を求める。


 もちろん下心と女性に触れたいスケベ心と親愛の気持ちを込めて、割合的には27%:62%:1%


「はぁ・・・」


 どうにも納得できない様子で握手に答えてくれる凛ちゃん。


 どうやら鍛錬だけの2ヶ月では済まされそうにないようだ。


 大変楽しみである。






 俺は凛ちゃんに先導され、道場の隣の屋敷に移る。


「この屋敷って師範の家なんですか?」


「そうですよ」


 スタスタと歩く凛ちゃん。その足運びもまた凛々しい。


 彼女が歩くたびに揺れる金の長髪はとても綺麗だ。


 服装は道着から洋服に変わっている。


 もし仮に彼女が和服を着ていたとしたら、とてつもない違和感を感じていただろう。


 彼女が着ている服は白のワンピース。


 うん。とてもいいです。


 師範の家はとても豪奢作りで、門構えからしても金持ちだなと思わせる。


(道場って儲かるのかな?)


 なんて益体なことを考えながらお邪魔する。


 そういえば、ノギスでは靴を脱ぐ習慣がないだけに靴を玄関で脱ぐことに若干の違和感を覚える。


 板張りの廊下を渡り一室に通される。


「ここでお待ちください」


  そう言い渡され、彼女は退室する。


  すると俺は再び手持ちぶさたになる。


  暇した時間は部屋を眺めたり、修行の内容を想像する。


  部屋は畳み張りの部屋。隣室との境界は襖で区切られている。中央には卓袱台と座布団が敷かれ、俺はそこに胡座をかいている。卓袱台には湯飲みがおかれていた。しかしながら、現代とは違ってポットがない。ただし茶葉はある。


  殺風景ながらも落ち着く。物がないかわりに開けた空間がある。俺の家とは大違いだ。


  しばらくすると玄関のほうから戸を開く音がする。
  ガラガラガラ。


  スタン。


  ペタペタ。


  廊下を渡り、部屋の前を横切る。


  ショートヘアーにおっとりした目。


  皐月ちゃんだ。


「あ、野村さん。いらっしゃいませ」


  軽く会釈する皐月ちゃん。


(いらっしゃい…ってことは、皐月ちゃんもココに住んでいるのだろうか?)


  皐月ちゃんはそのまま家の奥へと歩を進める。


  それと入れ違いに凛ちゃんが現れる。


「部屋を用意したので、来てください」


  少々ぶっきらぼう言う凛ちゃん。


  俺は腰を上げ、凛ちゃんに続く。


  案内されたのは体感12畳程の部屋。箪笥や卓袱台、座布団。奥に見えるのは押し入れ。中には敷布団が収納されていた。


  箪笥があるあたり、ここは下宿として使われているのかもしれない。


「野村さんはココを自由にお使いください」


  彼女はそう言い、退室する。


  戸の向こう側から


「食事の用意ができるまで、ゆっくりしていてください」


という声が聞こえた。






  しばらくすると、


ドンドン!


  という音がした。


  彼女が立ち去ってから約2分。呼びに来るには早すぎる。


  しばらく待ちの姿勢をとる。


  凛ちゃんが来たなら声をかけるだろう。仮に追っ手が来たとしたら、戸を叩かずに押し入られているだろう。


  スーッ。


  戸が開き、長身のガタイのいい男が現れる。


「おお、新入り。来たか!」


  見た目は俺より2、3上だろうか。 


  一目見た印象だと、部活の先輩かOB。


  勝手に部屋へと上がり込む。


(そういや、この人。俺が試合をしたときの3人のうちの一人だ)


「確か名前は『野村圭介』だったか。俺の名前は『浄花じょうか』だ。フルネームは『切札浄花』だ。仲間内じゃあ『ジョーカー』と呼ばれてる」




スッと差し伸ばされた手。握手を求めているようだ


「「よろしく」です」


  俺は伸ばされた手に答えた。


「こんばんわ」


浄花さんの後ろから声が聞こえる。


  後ろには純朴な少年がいた。


  背丈は俺と変わらないか少し低い。微笑を浮かべて目が細い。この人も浄花さんと同じ3人のうちの一人だ。


「僕は『雪村鷹広』皆からは『雪鷹』って呼ばれています」


彼も浄花さんと同じように手を差し伸ばして俺はそれに答える。


「二人はここに住んでるんですか?」


「ああ、そうだ」


「僕達二人は師匠の弟子としてここで暮らしているんです」


  彼らは内弟子と言うやつだろう。師と弟子が寝食を共にすることで師を追いかけるとか。


「じゃあ、氷川さんや皐月さんも若草師範に師事しているんですよね?」


  当然同じ家に済んでるんだ。当たり前のことを聞いてみる。


「そうですよ。お二人共、幼い頃より師匠を師事したんですよ」


  答えたのは、雪村君。


  そのときの浄花さんの目が泳いでたのが気になった。


「そんなことよりも、今日からお前も同じ屋根の下で暮らすんだ。今日みたいな無様な試合にならないよう、兄弟子として俺が鍛えてやるぜ!」


  そう宣言して俺の背中をバシバシと叩く。


  痛い。


「僕も微力ながら、お手伝いさせていただきます」


  ニッコリスマイル雪村君。


(そうか、二人共俺の兄弟子になるのか)


  雪村君と浄花さんとは今後とも仲良くやっていこう。




  俺達三人は旧知の仲の様に凛ちゃんが呼びに来るまで話に華を咲かせた

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