神が遊んだ不完全な世界
主人公(仮)と若草道場
「おっしゃー!!やっと着いたぜ!!」
やはり瓦の屋根を懐かしく思う。いや、むしろ日本の美学だろう。コンクリートジャングルの現代に比べるとコチラの日本住宅は『和』という感じがするな。うん。
昭和と大正のどちらつかずな時代背景。こちらにきてからは珍しい和装の人達。
なんといっても、帯刀している方々が様になっていた。
袴を纏った男子の姿は穏やかな表情を作りつつも、抜刀をしたとき侍として覚醒する。
俺はココまで来る過程で幾人の商人と出会ってはそのように聞いた。
関所ではアンサーとして登録していたため、例のボックスで俺の人物背景は粗方証明された。
正直俺はこの段階でノギスからの追手が来ていなかったことが何よりの救いだった。仮にココで俺が指名手配されていれば、なにをすることもできず拘束されていたことだろう。
もっとこの国を探索したい気持ちもあるが、本来の目的を忘れてはいけない。
道場主『若草萌木』に宛てられた手紙は未だ俺の懐で眠っていた。
国民に道を尋ねつつ、なんとか目的地へと辿り着く。
看板には大きく「若草道場」と達筆に書かれている。
(門は高さ4メートル幅は6メートルといったところか)
重厚そうな門であるというのにどこか開放的な印象を持たせる。
やはりココは日本でいう『和』の象徴のように感じる。
しかしながら舞台は日本でササニシキは『和』であるのに異文化都市とは是如何に?
門の前で色々思案し、長考するも道場に来て言うセリフはもちろん決まっている。
「頼もう!!」
茶髪にコートで鍋付きのショルダーバッグを下げた帯剣した変人がそこにはいた。
俺だ。
俺の大声で道場から足音がドタバタと聞こえてくる。
「殴り込みだー!」「道場破りだー!」「どこの馬鹿だよ!ウチに挑もうなんて奴は!」
などなど、反応は様々。
しかしながら声色から察するに本当に嫌がっているという感じではなく、単なるイベントに興奮しているようだ。
正直、この時ばかりは調子に乗ってすみませんでした!!
結果としては道場主不在のため、形式的にこの道場の3人を相手取ればいいらしい。
本格的に俺が道場破りというレッテルを貼られ、そして俺に弁明の機会を与える間もなく試合が始まった。
更なる結果から言えば、俺は撃たれた。いや、打たれたか?
頭をドカン!と面打ち。一本。それも無様に。
それを描写するならば、
俺は木刀を正眼に構え、相手の様子を伺っていた。
相手は女性。それもとびっきりの。
ここササニシキでは珍しくロングストレートの金髪に翡翠色の鋭い瞳。
しなやかで無駄の無い四肢。
そんな彼女の腕が鋭く俺に伸びてくる。
咄嗟にそれを弾こうとし、正眼から斜に構え彼女の振るう木刀の刀身へと当てるつもりだった。
しかし、手応えはない。
彼女はいつの間にか下段に構えており、逆袈裟に薙ぎ払う。空を切っていた俺の木刀は手中から飛び出していた。
俺は素手のまま彼女に対峙していた。
まさかこんな強いとは・・・。
当たり前といえば当たり前で、木刀を持たない俺は彼女の攻撃を防げるわけもなく面打ち一本。てな感じ。
武士ではないが、戦場にこれから身を置くものとして、木刀とはいえ武器を手放してしまう。。。
なんとなくだが悔しい。  俺は居たたまれない気持ちになる。
  道場の門下生らしい少年が話しかけてきた。
「氷川さんと打ち合ってどうでしたか?」
  少年は笑いながらも濡れたタオルを渡してくれる。
「ビックリだよ。彼女、なんであんなにつよいんだい?」
  体感してみたが、動きが素早かったこともあるが、あの逆袈裟は鋭く重い一撃だった。
  手の痺れがそれを物語っている。
  しっかり柄を握っていたんだ。
  なるほど、この道場で鍛えれば体術、もとい剣術が手に入りそうだ。
「氷川さんは幼少の頃から道場に通っているらしいですからね。強くて当然です。」
  この少年にとって氷川さんは憧れの対象なんだろうか?
  恋というよりも誇らしげな、カッコいいお姉さんに対する憧憬とも見える。
  この少年の名前は橙馬。この国では大変よく見かける黒髪で、子犬のように人懐っこい。まだ声変わりをしていないためか、ショタ声。背は俺の胸ぐらい。男にしては小柄で顔もまだ幼さが残る。
  道場の門下生は大半がこの少年と変わらない少年少女だった。
  例外としては氷川さんと更に年上そうな20前後の男。
  ちなみに氷川さんは俺の主観だが18。鋭い視線と凛と姿を引けば15、6という姿。
  少年に氷川さんのことを聞いてみる。もちろん下心と好奇心と時間潰し。割合的には7:2:1。
「氷川さんの本名は氷川リノン。親しい友人からは下の名前から凛と呼ばれていますよ」
  なるほど、凛ちゃんか。
札にも氷川リノン(凛)と書かれている。
そういや、俺が持ってきた手紙には俺がココで鍛錬ができるように推薦状を書いてくれたんだよな。だったら橙馬もお仲間さんになるわけか。
「そういや、道場主の若草萌木さんっていつごろ帰ってくるんだろ?」
俺は少年に尋ねた。
「師範なら夕方には帰ってきますよ」
俺は携帯を開き時刻を確かめる。画面には『14:37』と表示されていた。
「道場破りさん?それはなんですか?外国の魔具か何かですか?」
俺の手元を覗こうとする橙馬君。きっと尻尾が生えていたらブンブンと振っていたことだろう。
「まぁコレは機械かな。機械って分かるかな?」
この少年にとって機械がなんたるかは、よく分からないようだ。
そんなこんなを説明しているうちに日は傾き門下生達も帰宅していく。
橙馬君は帰るらしい。
そうなると俺は手持ち無沙汰になる。道場では幾人の門下生が残り、ある者は談話を続け、ある者は鍛錬を続行する。
凛ちゃんは後者のようだ。木刀を振る。ひと振りひと振りが鋭い。木刀の軌道は真空になり、刀身は擬似的な風を起こす。
(あそこまでの境地に至るとしたら、カナリの鍛錬がいるよな・・・)
彼女があそこまで鍛錬する理由はなんであろう。何かの目的がある上での鍛錬か、それとも純粋に剣術が好きだからか。
俺には彼女の剣筋によって彼女自身を測ることはできない。
彼女の一挙手一投足は魅入るものがある。そんな彼女を眺めながら、時は過ぎていくのだ。
やはり瓦の屋根を懐かしく思う。いや、むしろ日本の美学だろう。コンクリートジャングルの現代に比べるとコチラの日本住宅は『和』という感じがするな。うん。
昭和と大正のどちらつかずな時代背景。こちらにきてからは珍しい和装の人達。
なんといっても、帯刀している方々が様になっていた。
袴を纏った男子の姿は穏やかな表情を作りつつも、抜刀をしたとき侍として覚醒する。
俺はココまで来る過程で幾人の商人と出会ってはそのように聞いた。
関所ではアンサーとして登録していたため、例のボックスで俺の人物背景は粗方証明された。
正直俺はこの段階でノギスからの追手が来ていなかったことが何よりの救いだった。仮にココで俺が指名手配されていれば、なにをすることもできず拘束されていたことだろう。
もっとこの国を探索したい気持ちもあるが、本来の目的を忘れてはいけない。
道場主『若草萌木』に宛てられた手紙は未だ俺の懐で眠っていた。
国民に道を尋ねつつ、なんとか目的地へと辿り着く。
看板には大きく「若草道場」と達筆に書かれている。
(門は高さ4メートル幅は6メートルといったところか)
重厚そうな門であるというのにどこか開放的な印象を持たせる。
やはりココは日本でいう『和』の象徴のように感じる。
しかしながら舞台は日本でササニシキは『和』であるのに異文化都市とは是如何に?
門の前で色々思案し、長考するも道場に来て言うセリフはもちろん決まっている。
「頼もう!!」
茶髪にコートで鍋付きのショルダーバッグを下げた帯剣した変人がそこにはいた。
俺だ。
俺の大声で道場から足音がドタバタと聞こえてくる。
「殴り込みだー!」「道場破りだー!」「どこの馬鹿だよ!ウチに挑もうなんて奴は!」
などなど、反応は様々。
しかしながら声色から察するに本当に嫌がっているという感じではなく、単なるイベントに興奮しているようだ。
正直、この時ばかりは調子に乗ってすみませんでした!!
結果としては道場主不在のため、形式的にこの道場の3人を相手取ればいいらしい。
本格的に俺が道場破りというレッテルを貼られ、そして俺に弁明の機会を与える間もなく試合が始まった。
更なる結果から言えば、俺は撃たれた。いや、打たれたか?
頭をドカン!と面打ち。一本。それも無様に。
それを描写するならば、
俺は木刀を正眼に構え、相手の様子を伺っていた。
相手は女性。それもとびっきりの。
ここササニシキでは珍しくロングストレートの金髪に翡翠色の鋭い瞳。
しなやかで無駄の無い四肢。
そんな彼女の腕が鋭く俺に伸びてくる。
咄嗟にそれを弾こうとし、正眼から斜に構え彼女の振るう木刀の刀身へと当てるつもりだった。
しかし、手応えはない。
彼女はいつの間にか下段に構えており、逆袈裟に薙ぎ払う。空を切っていた俺の木刀は手中から飛び出していた。
俺は素手のまま彼女に対峙していた。
まさかこんな強いとは・・・。
当たり前といえば当たり前で、木刀を持たない俺は彼女の攻撃を防げるわけもなく面打ち一本。てな感じ。
武士ではないが、戦場にこれから身を置くものとして、木刀とはいえ武器を手放してしまう。。。
なんとなくだが悔しい。  俺は居たたまれない気持ちになる。
  道場の門下生らしい少年が話しかけてきた。
「氷川さんと打ち合ってどうでしたか?」
  少年は笑いながらも濡れたタオルを渡してくれる。
「ビックリだよ。彼女、なんであんなにつよいんだい?」
  体感してみたが、動きが素早かったこともあるが、あの逆袈裟は鋭く重い一撃だった。
  手の痺れがそれを物語っている。
  しっかり柄を握っていたんだ。
  なるほど、この道場で鍛えれば体術、もとい剣術が手に入りそうだ。
「氷川さんは幼少の頃から道場に通っているらしいですからね。強くて当然です。」
  この少年にとって氷川さんは憧れの対象なんだろうか?
  恋というよりも誇らしげな、カッコいいお姉さんに対する憧憬とも見える。
  この少年の名前は橙馬。この国では大変よく見かける黒髪で、子犬のように人懐っこい。まだ声変わりをしていないためか、ショタ声。背は俺の胸ぐらい。男にしては小柄で顔もまだ幼さが残る。
  道場の門下生は大半がこの少年と変わらない少年少女だった。
  例外としては氷川さんと更に年上そうな20前後の男。
  ちなみに氷川さんは俺の主観だが18。鋭い視線と凛と姿を引けば15、6という姿。
  少年に氷川さんのことを聞いてみる。もちろん下心と好奇心と時間潰し。割合的には7:2:1。
「氷川さんの本名は氷川リノン。親しい友人からは下の名前から凛と呼ばれていますよ」
  なるほど、凛ちゃんか。
札にも氷川リノン(凛)と書かれている。
そういや、俺が持ってきた手紙には俺がココで鍛錬ができるように推薦状を書いてくれたんだよな。だったら橙馬もお仲間さんになるわけか。
「そういや、道場主の若草萌木さんっていつごろ帰ってくるんだろ?」
俺は少年に尋ねた。
「師範なら夕方には帰ってきますよ」
俺は携帯を開き時刻を確かめる。画面には『14:37』と表示されていた。
「道場破りさん?それはなんですか?外国の魔具か何かですか?」
俺の手元を覗こうとする橙馬君。きっと尻尾が生えていたらブンブンと振っていたことだろう。
「まぁコレは機械かな。機械って分かるかな?」
この少年にとって機械がなんたるかは、よく分からないようだ。
そんなこんなを説明しているうちに日は傾き門下生達も帰宅していく。
橙馬君は帰るらしい。
そうなると俺は手持ち無沙汰になる。道場では幾人の門下生が残り、ある者は談話を続け、ある者は鍛錬を続行する。
凛ちゃんは後者のようだ。木刀を振る。ひと振りひと振りが鋭い。木刀の軌道は真空になり、刀身は擬似的な風を起こす。
(あそこまでの境地に至るとしたら、カナリの鍛錬がいるよな・・・)
彼女があそこまで鍛錬する理由はなんであろう。何かの目的がある上での鍛錬か、それとも純粋に剣術が好きだからか。
俺には彼女の剣筋によって彼女自身を測ることはできない。
彼女の一挙手一投足は魅入るものがある。そんな彼女を眺めながら、時は過ぎていくのだ。
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