神が遊んだ不完全な世界

田所舎人

主人公(仮)と魔術詠唱

(人殺し?)


 彼女は確かにそう言った。確かな敵意をその目に浮かべ、俺を凝視する。彼女の視線には冗談でも狂言でもない、不の感情による暗い光が宿っている。


「いやいや、人殺しは盗賊で俺は何もしてない・・・と思うよ?」


 正直、自分の記憶が欠けているというのは大変不安なんものだ。


「その盗賊を殺したなら、アンタはやっぱり人殺しよ!!」


 ふむ・・・。


「その、、、なんだ。俺ってどんな感じだった?」


 やっぱり知りたいことは聞かないと


「どんな感じ・・・って、、、ただの気の触れた人だったわ!あんたが急に叫びながら暴れ出して、何もかも滅茶苦茶よ!!」


 あれを見なさい、と倒壊した家を指す。


「あんたが暴れて壊したのよ!私の家を!私の家だけじゃない!この村はあんたに壊されたのよ!一晩で・・・」


 彼女は泣き崩れる。恨み言を吐き、現実を見、絶望し、自暴自棄の様子だ。


 正直、俺はなんとも思わなかった。というと嘘か。


 無意識、無自覚の間に俺がやったことだから実感がない。


 なんていうか身に覚えのないことで非難されている気分だ。


 小学生の頃にイジメられた頃を思い出す。


 んー、まぁそのなんだ。


 自覚のないけど、やらなきゃいけないことは分かった。


 ただなー、どうしたものか・・・。


 とりあえず、彼女をどこかで落ち着かせないとな~。


 彼女は放っておくべきか村に連れ帰るべきか・・・


 俺の中で村に対する償いは何かは決めた。


 とりあえず、その方針に彼女は関係ない。


「今から村を元通りにするつもりだから、気がむいたら来てねー」


 友人に話しかけるように気軽に声をかける。






 やることは簡単。家を建てる。


 正直、自分が壊した自覚がない。正直、盗賊が火を放っていたので、俺だけのせいじゃない気もする。


 なんかさっきから言い訳ばっかしてるな・・・俺。


 かっこ悪い!


 うっしゃ、気合入れて作るぞー。


 といっても今は夜。本格的な作業が明日からやるとして仮拠点がいる。


 今朝の練習がココで活きる。


 土と粘土で簡易住宅を作る。


 粘土が使えるんだから屋根も作れると確信。


 それに梁やら柱はぶっ壊れた家を再利用。


 ざっと30M×30Mの簡単な土塊と見間違える簡易住宅を作った。


(先程の村人(女)はまだあそこにいるのかな?)


 なんてことを考えながら、倒れている人間を収容する。


 意外にも生きてる人間はたくさんいた。


 ほとんどが気絶やら寝てたりしている。


 残念ながら盗賊に殺された村人は土葬で済ませた。


 本当なら手向けの花でもあればよかった・・・。


 そんな作業をしているうちに、村に戻ってくる村人もいた。


 盗賊の襲撃を受け、村から逃げ出した者たちだ。


 悲壮焦燥を面に浮かべ、俺に対しては多少感謝された。


 まぁそのなんだ、この人達は俺が何したのか知らないんだろう。俺も知らないが。


 ということで、正直、センス云々はともかく地面に直接店にあった毛布を敷き、寝るという40人規模で雑魚寝をすることになりましたとさ。


 俺は少しだけ離れた場所に地下室を造った。


 まぁ念のためね。俺が盗賊だとか人殺しだとかいう人が出たら、睡眠中に殺されかねない。


















 目が覚めて、起き上がったも暗いまま。


 昨日と同じで寝起きで真っ暗だと前後不覚に陥るな。


 俺は地下室から抜け出して周りを見渡す。


 村人たちは総出で瓦礫の撤去や倒壊した家で使えるものを持ち寄ってなんとかコミュニティーを形成していた。


(んー、このまま放っておいてもいい気もするな~)


 俺はとりあえず、村人達の奇異の視線を受ける。


 直接的な接触はない。


 俺は彼らの視線を受けながらもドームに入る。


 村長さんはまだ寝ている。


 正直、村長には色々と話したいこともあったんだけどな。


 ちらりとドームの端の母子を見る。


 母親は意識を取り戻している。


 傍らには少女がいた。


 良かった。


 純粋にそう思った。


 助けられた。


 俺は何もしていないが、いなくても、生きてたことは嬉しい。


 うっしゃ!気合入れて村を立て直すか!


 とりあえず資材が足りない。


 木があればいいのか?


 遠くに木々が見える。


 なれば、俺にできることはコレしかない!








(えーっと、コレでいいのかな?)


 携帯を色々と弄って、一つのテキストを作る。


「蠢け、踊れ!はしゃいで笑え!酔って暴れりゃ楽しいさ!酒がないなら水を撒こう!下手な酒より随分マシだ!酔えなきゃ酔うまで用意しよう!全部俺の特製だ!俺が造った俺の酒はお前ら土塊にはもったいねぇぜ!」


 こんな口上でも魔術ってのは起きるもので、謳いながら魔素を込めた水を撒くと、大体理想通りの範囲の土は震える。結果木々は根から倒れ大体200本前後の木材を手に入れる。


 あとは手作りの川で木材を流す。


 うん、正直この呪文は人前だと詠唱できない。羞恥心で死にたくなる。


 川は村のすぐ傍を通り、村で材木は乾燥させて使う。


 後は村人の仕事かな、俺にできることは何もないし。




 おれはもう一度、ドームに向かう。


 村長は目覚めており、村人と何かを話していた。


「おっす、村長!げんきしとおや?」


「おお、旅人さん。ありがとうございました。話は彼らから聞きました」


「いえいえ、なんか色々あった感じなんで。まぁコレも神の意図だと思って流れに身を任せただけですよ」


 そんな口上はともかく、俺自身が実際やったことは感謝されることらしい。


 木を切り倒し運ぶだけでも重労働。乾燥させるのにも時間が掛かり迅速な復旧は難しい。一時的な仮拠点としてのドームも良かったらしい。


 照れるじゃねぇか。


 さーてと、どうしたもんかな~。


 流れでやれるだけのことはやったから、俺は村を発つことにした。


「おや、もうこの村を発ってしまわれるのですか?」


「ん?あー、そうですね。俺はササニシキまでの冒険の途中でたまたまココに寄っただけですから」


 すると村長さんは俺にジャムでも入れるような小瓶を取り出した。


「コレは私どもの村の特産品の『森の雫』という魔術の補助道具です。植物を操る魔術を補助し、増幅する物なのです。使い方は中の液体を水に溶かし、操りたい植物に注ぐことで操ることができます」


 おお!なんか貴重品来たぞ!どうやら魔具とは違って補助アイテムっぽいな。


「では、ありがたくいただきます」


 俺はそれを受け取り、内ポケットに仕舞う。


 ん?植物を操れる・・・!!


 一度仕舞った小瓶を手に取り、キュポン!


 森の薫りを漂わせる深緑の液体。






 俺はそれを自ら作った川に一滴垂らし、魔素を流す。


「囲えよ囲え、村を守る川の彼岸。花咲き、実りて揺蕩う水面。漂う花は手向けの花」


 川は村を囲い、天然の堀となり、その川には綺麗な蓮の花が咲き、村人たちは川面を眺め、笑顔が浮かぶ。唯一の心残りの手向けの花の代わりだ。




 よっしゃ!コレで俺の仕事は最後だな!




 俺は荷物を持ち村を出る。


 まぁそのなんだ。ちゃっかりと店の品物は幾分頂きました。






















 後述だが、川に『森の雫』を流した結果、今年の実りは豊作だとか。

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