神が遊んだ不完全な世界
主人公(仮)と別離
  大通りに出た俺は、怪しまれない場所。つまり、行列の中に紛れ込む。
  行列の中でも人の良さそうな人に声をかける。
「この行列はなにしているんですか?」
「ん?ああ、ついさっき広場で神言が開示されたんだよ」
(…神言?)
「開示された内容は?」
「なんでも、神と相対するものが堕ちたそうだ。神はその存在に気付き、巫女様にそのことを伝えたそうだ」
(ん?ユニさんの言ったことと違ってるな?)
「そうだったんですか。それでこの行列はなにをしているんですか?」
「ああ、この行列は堕ちた存在を探し出すために集まった信徒なんだ」
(なるほどねぇ~…)
  面白い展開になりそうじゃんか。
「なるほど。早く見つかるといいですね」
軽く会釈をしつつ、列から離れる。
話しかけた男も俺のことはもう忘れたかのように列に戻る。
(この行列は俺を探すために集まっていて、俺の姿顔形はよくは分からないってことか…。おそらく堕ちた存在と呼ばれているぐらいだろうから人外の容姿をしているとでも検討を付けたか、俺の名前ぐらいは知っているのかもしれない。だとすると、ギルドの人たちは俺の姿と名前をリンクするだろうから、ギルドに訪れるのは得策じゃないか)
俺はそう推測して、ギルドとも距離を置く。
市街地は行列の人相手に商売を初めており、昨日よりも夜店が多い気がする。
行列は手に松明を持ち、至るところを歩き回る。
しかし、俺は行列のすぐ傍におり、時折、「ご苦労様です」と労いの言葉の一つもかけてみたりする。
この世界では宗教はどこまで重要視されているのかは測りかねるが、全員が全員信徒というわけではないのだろう。もともと宗教観念は政治や商売に利用されたものだ。所詮は人間が作り出した偶像。
まぁ信じて悪いとまでは言わないし、信じる対象が何であるかは人それぞれだ。否定はしない。
しかし、キナ臭い。
ユニさんは俺が神の使者と良い、公開された神言では俺は堕ちた存在だと言われた。
このことから推測される結論はただ一つ。
(神威の塔の連中にとって俺が邪魔だということか)
ユニさんが教えてくれた内容は巫女様から近しい者の言だろう。
ユニさんはそれだけ信頼があるということか?
まぁどっちにしろ、次の俺の目的は変わった。
「殴り込みに行こうかな」
所詮は俺はこの世界の人間じゃない。神も信じないし無神論者というわけでもない。ただ、俺が選んだ選択に神が土足で介入するなら一発でもぶん殴って押し通るまでだ。どっかで見てる神やら作者やら名乗る奴が目の前にいたら一発殴って説教してやろう。
となれば、神威の塔の在処を聞き出さなきゃマズいが、もし仮に「『神威の塔』って何処ですか?」なんて聞いてしまえば、一発で怪しまれる。一度注目を受ければ、素性がバレることは必至。なればこそ、一度ユニさんと合流することが望ましく思われる。
「あ…あの子たちはどうなんだろ?」
あの子というのは武器屋のアリスちゃんと調合屋のジルちゃんだ。
あの二人は俺の名前を知っている。
もし仮に彼女らに俺に対して敵意を持つとしたら、カナリキツイ。精神的に。
一応念のためお店の方に顔を出してみよう。
敵意を向けられたらそれまでの縁だったということで。
まずは調合屋だな。そのあと武器屋に顔を出して、ノギスを発とう。
決まればあとは行動するのみ。考える時間はおしまいだ!
調合屋入口付近。店は閉じられており、灯りもない。二階の方には灯りがあるため、おそらくそちらにジルはいるのだろう。
顔を出すとはいっても、店を尋ねるぐらいの気分だっただけに直接会うのは躊躇われる。
(まぁいっか…)
コンコンと叩く。
”二階”の窓を
あ、目があった。
あ、驚いてる。
ん?足を引きずってこっちに向かってる。
窓を開けて、俺をひと睨みする。
「えーっと、こんばんわ」
爽やかスマイルを見せてとりあえず押し切る。
「ちょっと上がらせてもらっていいかな?」
言うと同時に上がり込む。
一応注釈しておくと、二階に上がれたのは身体能力向上とかではなく地下水と隣の家の花壇の土を拝借した。
上がり込むと使った土はもとの場所に戻す。
「あの…えっと…野村さん」
「なんでしょう?」
爽やかスマイルは崩さない。
笑顔は自分が敵でないというアピールなのだから。
「野村圭介さんですよね?」
「ええ」
名前を再度確認するあたり、信徒たちがココを訪ねてきたのだろう。
「一体あなたは何をしたんですか?」
あ、そうか。ジルちゃんは足が悪いから外に出てないから開示を聞いてないのか。
「んーあー、えーっと。なんか俺、神の敵らしいです」
親指を天に突き立て腕を前に出す。頭の中ではイェーイと言っている。
「え、神の…敵…ですか?」
少し俺に対する敵愾心が瞳の奥から見て取れる。そりゃそうだ、いきなり二階の窓から信徒から追われている男が訪ねてきたんだ。怪しさで言うならこれ以上ないぐらいだ。
「まぁそうは言われてるけど、身に覚えが無くてね。あちらさんはそんなこと聞く気もないようなんで本山まで足を運ぶことにしたんだ」
俺の言にたいして耳を傾けるジルちゃん。
「あの、それでなんでココに?」
「ああ、そうそう、しばらく離れそうだから予約の品の前金だけでも渡しておこうと思ってね」
銀硬貨3枚を渡す。
「あのコレ…」
「残りは次あったときに渡すから」
とりあえず、彼女は俺に対しては敵とか味方依然に不審者のようだから、早々に退散いたしましょう。
窓から身を踊りだし、地下水を呼び着地する。濡れた衣服は瞬間乾燥。
上を見上げるとコチラを見下ろすジルちゃん。
夜風に揺れる髪が映える。
俺は手を振り大通りを歩く。
えーっと、次は、、、と。
武器屋へと足を運び、まだ灯りが点いていることを確認する。
夜に武器屋を訪ねる客がいるのかね?
戸を開き中へと入る。
店の中に人はおらず、アリスちゃんもいないようだ。
「あのー、すいません」
声をかけると奥からパタパタと足音が聞こえてくる。
顔を出したのはもちろん彼女。
「こんばんわ」
軽く会釈をする俺に対し彼女は目を丸くしている。
なにかいいたげな顔だが、とりあえず。言いたいことを話す。
「今日、ナイフを使ってみたんですけど、妹さん。いい腕してますよ。今後とも贔屓にさせてもらいます」
軽く微笑む。
しかし、、、
「あの、もしかして、人を刺したりしませんでしたか?」
おずおずと話す彼女。
はて?なぜそんな結論になったのか…?
「いえ?森でピリスの毛皮を剥ぐときに使ったんですが」
んー、おそらく彼女は俺が人を指したから追われていると思ってるのかな?
「そうなんですか。なんでか、貴方を追いかけてる人が多くて何かしでかしたんじゃないかと思いましたよ」
そういって真摯な目で見つめてくる。
もし俺が犯罪者だったら目を合わせることもできないだろう。
「あー、あれね。なんか神威のみなさんにとって俺は都合が悪いらしくて指名手配されてるみたいなんですよね~」
「ええ!?」
「今日、ノギスを発って神威の塔を目指そうと思います。ところで神威の塔はどこにあるかご存知ですか?」
「えーっと、神威の塔は信仰都市『タユタユ』に建てられています」
ふむふむ。信仰都市『タユタユ』か。
「ありがとうございます。あ、そうだ。この紙を妹さんに渡してもらえますか?」
懐に忍ばせてあった一枚の紙を渡す。深夜に思いつきで描いた代物を妹さんにやってもらいたくなった。
「え?あ、あの、、、はい」
無理矢理手に持たせて店を離れる。
ポカーンとした彼女の顔は小動物のようだった。
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